(なことと電波組)



「プラネタリウムの解説員って、どうしたらなれるんだろう」

 ふと。アークが一瞬真面目そうな顔をして、それからぽつりとつぶやいた。手にはこないだ行ったプラネタリウムのパンフレット。レグルスとスピカが一緒に見ていた図鑑から、アークに視線を移した。アークの視線は、ゆるやかに上がって、僕を捉えた。

「詳しく、知らない、けど、」

 黒梨くんに訊いたら? って丸投げ。なんて。別にそういう意味じゃないんだって、知ってるけど。アークは至極いやそうな顔をして、僕からまた視線を外した。わかってるくせに、って。わかってるよ。わかってるけど。

「なことの、意地悪」

 アークの視線が僕にぶつかって、多分、電波を飛ばしている。

「おにーさんに聞いても意味ねーんだよ! なことばっかだなぁ! アークはさ、」
「レグ黙って」
「なーんーでー!」

 レグルスがアークを庇うみたいにこっちに身を乗り出したけど、スピカちゃんがひっぱたいた。電波の応酬は見えないし彼らの受け取る言葉の形は異なる。けど、みんな、きっとひとつの幸せを探していた。

「星が好きなら、頑張ればなれるらしい、よ」

 いことが調べていたのを僕は知っている。そして調べた結果を結局彼には言わなかったことも。僕は知っている。此処にある星空は、彼が紐解かないとうまく輝けないこと。僕たちを、彼にくくりつけておかないと、星座の向きだってわからないこと。

「幸せかな、黒梨は」
「どうだろう。今も、きっとそういういつかも、きっと全部ね」

 難しい言葉ばかりで息の詰まる宇宙の中で、ことばをくれた彼の幸せは、この宇宙にあるのですか?





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