:翔保と琉夜
「うあああどうしようやっぱこのお店止めとこうかな……、さっきのとこのが安かったかも」
「ったく、お前いつまで悩むんだよ。別にそこまで値段張ってねえし」
「いや、だってこくりん100円ケーキのバタークリームが一番美味いとか言ってたし、ひめちゃんモンブラン黄色の安っぽいのが良いって言いそうだし、なこちゃんといこちゃんも高いミルフィーユとか無理って言うかもしれないじゃない！」
「お前のあいつらに対する認識ひでえなオイ」
「つつくんとあーくんは味分からないから何でも食べるし、あいちゃんも甘けりゃ総クリアだからどうでもいいけど……」
「……お前のあいつらに対する認識マジひでえな」
:黒梨と時姫
「わざわざお土産なんて、彼女もよくやるわよね」
「目が微妙に輝いてんぞ時姫」
「モンブランは予約したわ」
「……はいはい」
「黒梨は？」
「なんかわざわざバタークリームのケーキ買ってくれてたから、それだな」
「……嬉しそうね」
「翔保もよくやるなって、思っただけだっつぅの」
:慎と愛
「きっとこれ、イイトコのケーキなんでしょうねー」
「……見るからにそうでしょう、貴方みたいな食に執着の無い人間には勿体ない代物です」
「やだな、僕だって味くらい分かりますよ。ただ、愛を目の前にすると心臓が忙しくて舌まで意識が回らないんです、だって愛が可愛すぎるから！」
「本当に貴方には勿体ないですね、役立たずの舌の代わりに私が食べてあげましょうか？」
「愛って、本当にケーキ好きですよね。」
「どういう意味ですか」
「素直に一口くれって言っても僕は笑いませんよーって意味です」
:なこととアーク
「こういうちゃんとしてる豪奢なミルフィーユって凄く悩まない？」
「んと、食べ方？」
「サクサクのパイ生地は嬉しいんだけど、安いミルフィーユなら湿ってパイがフォークで切れるじゃん。でもこれどうするよっていう。下手に手を出せばパイ生地がうわあああって……」
「そんな言われても、ぼくはショートケーキだからわかんないよ」
「アーク意地悪！ 一緒に悩めったら！」
「倒して上から一枚ずつ食べたらいいんじゃないの」
「そんなんミルフィーユに対する冒涜だよ！」
「もーやだこいつ」
:なことといこと
「……いこと、上半分と下半分、どっちがいい」
（結局諦めんのかよ、試合終了しちまうぜ）
「ならいことがやんなよ！」
（……じゃあ、下半分）
「変わり身早！」
（つーか、なんかケーキまだ残ってねえか、あの箱）
「え、あ、本当だ。あれ……ミルフィーユ？」
（これ、もしかしてさ）
「あっは、翔保ちゃん流石すぎ。恋に落ちる音がしたね、今」
（それは琉姉が怖すぎだろ）
（みんなで９つのケーキを食べて、幸せだなあって惚けながら笑いたい）