(なことと琉夜)
「あ、琉夜姉さんおかえり!」
「いつお前の姉になったんだ俺は」
と言うか何を当たり前の様に俺の部屋に来て菓子食ってんだこいつ。引き籠もりならソレらしくしろよ、と、まあ多分また翔保がいこの方と揉めた結果なんだろうが。
年の割にチビなガキ、天藾なこと。俺を姉さんと呼ぶ、変な子供。俺の背が高いのを踏まえても、こいつは小さいので尚更幼く見える。随分にマセガキな馬鹿だが、それはひっくり返せばマセるくらいにはガキだってことだ。
「なんか琉夜姐さんは、姉さん! って感じがするじゃんか」
「……勝手にしろ」
「ふふ、僕お姉ちゃん欲しかったんだよね」
「あほらし」
欲しがるようなもんでもねーだろ、と、髪を結い直しながら呟けば、えーでもー、とごねる子供が居た。
ああそういやあ弟ってのはこんなもんだったかもしれないな。なんて、一瞬過ったから少し笑えた。
それからぱたぱたと此方に駆け寄ってきて、隣にちょんと座った。
無駄に懐かれている。と、思いながら解いた髪を梳かすことに専念した。
「やっぱ琉夜姉さん、髪の毛長いね」
「お前も伸びたろ」
「あは、かもね。切りたいんだけどさ」
「切ってやろうか、次の週末にでも」
「ホント? やった、ずっと黒梨くんに頼むのは嫌だったんだあ」
黒梨くん適当なんだよねー、とクスクス笑うのを目の端に留めてから、やっぱり少し、笑った。
こりゃ今週末はなんとしても空けなきゃならねーな、なんてそれくらいには俺もこいつが気に入ってるわけだ。