(慎と愛)
「慎は、私をどれくらい好きですか?」
僕の目の前の彼女は、テーブルからマグカップを手に取りながら、気怠そうに言った。綺麗な顔なのに精一杯歪めていてちょっと笑える。そんな顔をするなら何故訊くのか。
甜茶はあまり好まなかったらしく、さらに顔をしかめてぞんざいにマグカップを置いた。その弾みで倒れそうになるそれを少し内側に寄せながら、
「そうですねぇ、琉夜よりは無論好きですよ」
そう言うと、愛は少し面白そうに笑ってから、素直に言ったらどうかと意地悪を言う。綺麗だからそんな姿もまた見蕩れた。
「慎、琉夜のこと大好きじゃないですか。良いんですか貴方、私をそんなに好きでいて」
ううん、確かに琉夜は結構好きだ。からかい甲斐もあるし面白い、そこそこの美人で心中したいと言ってやってもいいかもしれない。
しかし失礼な女だ、僕は君がとても大好きなのにそんな言い方。仕方なく僕は精一杯に皮肉な台詞を探す。
「そうですねー、やっぱり」
と、一区切り。ちょっぴり興味を持ったらしい君が、またこちらを見たので、続きを。
「やっぱり、君が僕を嫌いなのと同じくらいには嫌いだよ」
(へぇ、じゃあ慎は私のことが嫌いではないということになりますね)
(それは、愛、お得意の嘘、ですか?)