(天藾)
──狙うはやっぱ美人教師でしょ、望みは高く!
──アホかお前間違いなくこの後輩ロリからに決まってんだろーが! 難易度低めから徐々にやろーぜ。
とか、そんな訳で、僕といこととは全然趣味が合わない。僕はほんわり系な女の子よりはお姉様系が好みだし、ひんにゅーよりはきょにゅーが好きだし、ツンデレよりはクードラが好き……あ、全部二次元の話なんだけどね、これ。悲しいかな、いことはそういう人間でした。
ったく、これで良いのかなあ、このひと。っていや、このひと僕なんだけどそういうあれじゃ無くて、良いのかなあ。
(いこと、)
「……なんだよ」
(なんで、僕だったの)
「は?」
なんで、僕だったんだろう。君の一番近くに存在するもの、が。僕にはいことを理解するのも難しいし、何でも分かってあげるなんて夢のまた夢。凄い大事なひとだって認識はあるけど、それでも全て肯定なんか出来ないししたくない。
いことが死のうとするのは凄く悲しいし辛いしいつだって止めてしまう。全然理解出来ないししたくない。それは明らかに僕じゃない誰かに対する思いであって、だから、僕は君には成れないのに。
「知るか、そんなん」
(ちょ、少しくらい真面目に考えてよー)
「んなことよりお前俺の梨花ちゃんがだな」
(あ、僕は詩音派かな)
「ねーよ!」
(えええええ何ゆうの、詩音可愛いじゃん滅茶苦茶可愛いじゃん!)
ほらね、合わない。噛み合わない、波長が合わない趣味が合わない、付き合えない。其処に互いが個々に存在するなら、絶対に友達にはならないんだろうなあとか、そんな感じ。
でも隣に居るしかなくて、出来れば向かいに座ってその表情をずっと見てられれば良かったんだけどそれは出来なくて。手を繋ぐのも気恥ずかしいし、抱き締めるなんてもっての他だし、だからまた食い違った会話をするんだ。
「あー、駄目だ疲れた眠い」
(代わる?)
「別にいい、俺は寝る」
(それって代わるって事でしょ、僕起きるし)
なんかぼんやりと立ち位置が入れ替わって、僕は酷く疲れた目とどーしようもない頭痛と、あと自分の意思だけで動く体を譲り受ける。
ていうかよくもまあこの状態でゲームやってたよねこの人。あの、画面霞んでますけど。
かたん、と伊達眼鏡を外して一つ呼吸。コレが僕、で、いこと。ソレはもう一回呼吸をしても、変わらないこと。
「いこと、」
(……お前ぐらい俺と反対の人間に、きっとずっと会いたかったんだ)
「いこ、と?」
(うっせーもう寝る!)