(アークと黒梨)

 やけに、涼しい。「夏ぽく、ないよね」と、隣の子供は俺の感情に呼応するように言った。
「暑いの嫌いだからいーけどさー」「まぁ、な」
 それにしても、夏ぽく、ない。今度は俺の顔を見て、呟いた。
「黒梨、夏生まれっぽくない」
「ぽい、ってなんだ」
 偏見だろそれは、「銀、だし。あんま健康的でないし、明るくも、そんな、ないし」失礼な。
「でも、今日は、似合うね」
「……誉めてねーだろ」
 しとしと降る雨はともすれば欝陶しく、生ぬるく冷やす。
「嫌いじゃないよ、今日、みたいなの」
「……お前屈折しすぎ」
 誰しもお前みたく、相手が分かるわけでないのだし、そんな風にねじ曲がられても。まあ、わかる、けど。
「ありがと、な」
「なんの話」
「こっちの話だ」
 外方向いたそいつの頭をくしゃくしゃに撫でたら、爪先を思い切り踏まれた。

(誕生日おめでとう、って言いたかったんだよ)







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -