(千波)

 慰めはなかったし、癒しもなかった。何も営まれやしなかった。低音が空気を震わせても、抱ける感慨は殆どない。
 勝手に使っている防音室は少し埃っぽくて電気も壊れている。汚れにくすんだ二重窓の向こうから差し込む夕焼けで手繰る、音の輪郭。弾き奏でた音に救いを求めないことが、

 なけなしの矜持か。





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