双子の誕生日

誕生日だからと訳の分からない理由をつけられ、本部で様々な隊員からランク戦を申し込まれた出水兄妹。誕生日になるといつもこれだ。
ランク戦だけでなくもちろん誕生日プレゼントも渡された双子は、毎年恒例になりつつあるそんなイベントを終え、大きく伸びをしながら本部を出た。


「全戦全勝で絶好調だな」
「なに言ってるの。太刀川さんと二宮さんには負けてたでしょ」
「ばーか。同い年にはってことだよ」
「それならわたしだって…」
「おれに負けただろ」
「負けてないから!」


人数が人数なためにランク戦は時間制限にしていたお陰で、紅葉は出水とのランク戦をベイルアウト寸前に終えていたのだった。だから負けていないと言い張っている。


「毎年人数増えてる気がする」
「確実に増えてるだろ」
「いろんなタイプと戦えていっぱいプレゼント貰えて嬉しいけどね」
「だな」


仲間たちからの誕生日を祝う言葉を思い出して笑い合った双子は、たくさんのプレゼントを詰めた鞄をゴソゴソと漁る。そして目的の物を見つけ、2人は同時に袋を差し出した。


「さぁて、今年はどうかな」


にやにやとした表情を浮かべながら、出水は受け取った袋を開けていく。紅葉もわくわくといった様子で同じように袋を開けた。そして同時に中身を取り出して一瞬だけ固まる。


「だーーー!またかよ!」
「それはこっちの台詞なんだけど!」


2人の手のひらに乗った同じ形のストラップ。それを見て文句を言わずにはいられない。


「毎年毎年どうしてこうも同じもん買ってくんだよ…」
「それもこっちの台詞だから!」


そう。毎年のことなのだ。双子がお互いのプレゼントに同じ物を選ぶのは。


「去年はエビフライのストラップで」
「一昨年は駅前のコロッケ無料券で」
「その前はみかんの香りがする消しゴムだっけ?」
「そう」


好きなものを知っているから、好きなものが一緒だから。それを理由にしても全く同じ物をプレゼントしていることに、米屋は毎年大爆笑している。


「今年は好物から離れたから絶対かぶらねぇと思ったんだけどな」
「わたしもこんな良いのはかぶらないと思ったのに…」
「思考回路同じかよ」
「最悪」
「おい」
「まあ、センスは良いから許してあげる」
「そりゃ自他共に認める天才だからな」
「…」
「何か言えよ」
「ばか」
「お前もな」


そう言ってお互いに渡し合ったプレゼントを再び見つめる。ラッピングは違ったけれど、手のひらに乗ったのは同じ形の……まるでアステロイドのような形をしたストラップだった。


「もうストラップいらないんだけど」


そうは言いつつも、表情はどこか和らいでしまう。それは出水も同じで、笑いながら紅葉を小突いた。


「自分がいらないもん選ぶなよ」
「だってアステロイドだったから…」
「分かる。これは惹かれるよな…。おれもこれしかねぇと思ったし」


2人でストラップを見つめ、無駄に真剣な顔をしてうんっと頷いた。


「お、そうだ」


まだ言っていなかったと呟き、出水はストラップから紅葉へ視線を向けた。そして目を細めて紅葉を見つめる。


「紅葉」
「ん?」
「誕生日おめでと」
「…うん」


同じ日に同じ親から生まれた、たった1人の双子の兄妹。誰に言われるよりも、何故かむずむずした気持ちになってしまう。紅葉ははにかみながら出水を真っ直ぐに見つめ返した。


「公平」
「ん?」
「誕生日おめでとう」
「おう」


同じ言葉を返された出水は、にかっと無邪気な笑みを浮かべた。出水も紅葉と同じ気持ちで、胸に沸き起こる気持ちは特別だ。最愛の双子の妹からの言葉が嬉しくないはずがない。
お互いに伝えたいことを伝えると、紅葉は出水に向かって拳を突き出した。それをすぐに察して出水も同じように拳を突き出す。


「…今年は負けないから」
「今年も負けねぇよ」


そう笑い合い、突き出した拳をぶつけ合った。最強のライバルであり、最大の理解者であり、最愛の兄妹であることを確かめ合うように。


「よし。んじゃ、ケーキ買って帰るか」
「うん!」


肌寒くなってきた帰り道。ライバルからただの仲の良い兄妹へと戻った双子は、暖を取るように寄り添いながらお互いのためのケーキを買いに行くのだった。


end
ーーーーー
めっちゃ久しぶりに出水兄妹!
久しぶりに出水兄妹書きたくて書いたけどこんなんだっけ…?突発すぎて何を書きたかったのかよく分からない内容になったけど、誕生日をお祝いしたかっただけです。

翌日は2人してアステロイドストラップつけてるの米屋くんに見つかってまた爆笑されてる。

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