双子の日常(4)

学校へ行く前の朝。
今年初の雪の降る寒い日に、双子はこたつに埋もれていた。


「あんたたち何やってるの。さっさと準備して学校行きなさい」
「…寒いやだむり」
「公平、ちゃんと紅葉連れて行ってよ」
「んー」


みかんを食べながら朝のニュースを見る出水の曖昧な返事を聞き、とりあえず安心した母親は家事に戻った。


「…なんで雪なんか降ってるの…最悪…寒い…学校行きたくない…」
「結構降ってきたな。連絡網回ってこないから休みにはならねぇよ」
「…ボーダーの任務ってことで休む」
「冬ずっと学校来ない気かよ」


テーブルに顎を乗せている紅葉の発言に呆れながら、出水は腕を伸ばしてその口元に剥いたみかんを持っていった。
紅葉は何も言わずにぱくりとそれを食べる。


「雪だし、そろそろ出ないと遅刻するぜ」
「……トリガー起動したい」
「本部に怒られるぞ」


自分で一粒食べてからもう一度紅葉の口に。再びぱくりとそれを食べた。会話をしながら何度もそれを繰り返す。
そしてそのみかんがなくなると、出水は大きく伸びをした。


「さーて、みかんも食い終わったし学校行くか」
「…行かない」
「今日はすげー頑固だな」
「男子と違って女子はスカート寒いんだから!公平が制服貸してくれるなら行く」
「お前はおれに何履かせて行く気だよ」
「わたしのスカート入るなら履いてっていいけど」
「ふざけんな」


げしっとこたつの中で紅葉の足を蹴った。強くはなく痛くはないが、蹴られた事実にむっとした紅葉はその足を蹴り返す。今度は出水がぴくりと眉をひそめた。


「何すんだよ」
「公平が先にやったんでしょ!」
「紅葉が変なこと言うからだろ!」
「だからって蹴ることないじゃない!」
「強く蹴ってねぇだろ!」
「強さの問題じゃないし!」


げしげしとこたつの中で攻防が始まる。
もちろん口論も忘れずに。段々と激しさを増した攻防にテーブルがガタガタと揺れ始める。ころんっとテーブルの上のみかんが転がった。


「あんたたち何暴れてるの!早く学校行きなさい!」


母親の怒声に喧嘩を止め、渋々とこたつから出ると、しっかり防寒をして大きな溜息と共に玄関へ向かった。


「「いってきまーす」」
「はい、いってらっしゃい。雪にはしゃいで転ばないようにね」
「はしゃぐように見えるの…?」
「あんたたち2人揃ってたらいつもはしゃいでるでしょ。いいから気をつけていってらっしゃい」


とんっと背中を押されて双子は家を出た。
途端に冷たい空気が肌を刺し、寒さが身に染みる。紅葉はマフラーに顔を埋め、暖を求めて出水の腕にをぎゅっと抱き着いた。


「むりむりむり学校まで保たない…!」
「去年も同じこと言ってたから大丈夫だろ。ほら行くぞ」


自分の巻いているマフラーを紅葉のマフラーの上からに更に巻きつけた。外してしまうと寒いので、もちろん自分もつけたまま。同じマフラーを2人で巻く。

紅葉は両手を出水の腕に回しているため、出水が傘をさして同じ傘に入る。ゆっくり歩き出すと、紅葉もゆっくり足を動かした。


「…冬も雪も嫌い」
「雪 綺麗だぜ」
「冷たくなきゃ好き」
「それは綿か」


滑らないようにゆっくり進む。
周りの景色は真っ白でいつもと違う場所を歩いているようだった。辺りを見る出水とは違い、紅葉は下しか見ていない。早く学校につけと祈るばかりだ。


「おれは冬も雪も結構好きだけどな」
「物好き」
「いや物好きではないだろ。紅葉も昔は雪ではしゃいでたし」
「子供の頃は寒いの平気だったからね」
「また雪合戦しようぜ」
「………トリオン体でなら良いけど」
「寒い中でやるのが良いのにそれじゃつまんねぇだろ」
「つまんなくない。そもそも寒い中で雪の塊ぶつけられたらブチ切れる」
「ははっ、それが槍バカなら余計にかもな」


どこかで米屋がくしゃみをした。


「じゃあ、かまくら作ってあったまろうぜ」
「そんなに積もらないんじゃない?」
「ならそれこそボーダーの力借りてな。柚宇さんに大雪設定してもらってさ」
「寒くないならやりたい…!」
「雪合戦にかまくらに雪だるまに遊びたい放題だぜ」
「うん!」
「じゃあ本部行ったら太刀川隊の隊室集合な」
「了解」
「とりあえずは学校乗りき……へっくしゅん!」


大きなくしゃみをしてぶるりと身体を震わせた。やはり寒い。暖かいのは紅葉がくっついている片腕だけだ。


「大丈夫?」
「…やっぱ寒ぃな」


ずびっと鼻をすすった出水に、紅葉は自分の巻いているマフラーの半分を出水に巻きつけた。2人のマフラーが絡み合ってお互いにぐるぐる巻きになる。


「…半分巻いてくれたから、半分巻いてあげる」
「…おう、ありがとな」


にっと笑った出水に紅葉も僅かに微笑んだ。そしてまた腕に手を回してくっつく。そのままこてんっと出水の肩に頭を乗せた。


「…わたしも、やっぱり冬も雪も嫌いじゃないかも」


さくさくと雪の上を歩く音しか聞こえない静かな世界で、紅葉は小さく呟いた。


end

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最近ほんとオチのつけ方が分からなくなってる。
でも今回はifじゃなく兄妹らしく(?)めっちゃいちゃいちゃ出来たと思う!結構満足…!書きたいこと書けたから…!
雪降ったから雪のネタ書けて良かった!
そして本日「いい双子の日」!
書けて良かったかな!

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