11月23日!いい兄さんの日?


「紅葉!今日何の日か…」
「もうそれいいから!」


昨日に引き続き今日は何の日かと問われる。
どうせ出水の日かいい兄さんの日なのだ。呆れるしかない。


「今日は勤労感謝の日!それ以外ないから!」
「何言ってんだよ!いい兄さんの日だろ!」
「公平こそなに言ってんの!?」
「ばかじゃねぇよ」
「いや言ってないし。思ったけど」
「おいコラ」


ぺしんっとデコピンされて額を押さえた。少し楽しくて僅かに頬が緩む。


「いいお兄ちゃんの日だからお兄ちゃんが何かお願い聞いてやるよ」
「それ昨日も言ってたし、なんでそうなるの」
「おれはいいお兄ちゃんだからな」
「どこが」
「お前さっきからズバズバくるな」
「まあそれはどうでもいいとして」
「おい」
「今日いいお兄ちゃんの日やるなら昨日やる必要なかったでしょ。普通にいい夫婦の日で良かったんじゃないの?」
「別にいい夫婦の日なんか興味ねぇし」
「なんで」
「夫婦なんか誰とでもなれるだろ」
「………」
「何だよその蔑んだ目は」


モテる男の発言にジトっとした視線を向けると、軽く頭を叩かれた。その手を勢いよく振り払う。


「発言がチャラい」
「は?ちげーよ。夫婦なんかこの世界にいる誰とでもなれる可能性があるだろってこと言ってんだよ。いい兄がいるやつの方が貴重だろ」
「んー…そうなのかな」
「そうなんだよ。そんな誰でも可能性がある日なんかより、双子として存在してる方がよっぽど凄いことだろ」
「…そう、かな」


振り払われた手を今度は優しく紅葉の頭に乗せた。そしてぽんぽんと叩く。


「恋人も、夫婦も、いくら愛があったって所詮他人だろ。代わりなんていくらでもいる。…けど、おれの双子はお前しかいない」
「…公平」
「おれの双子の妹に代わりなんていない。だったらいい夫婦の日なんかに便乗するより、たった1人の妹のためにいい兄ちゃんやった方が断然良いに決まってんだろ」
「……なに、言ってんの」
「いい兄さんの日だからいい兄らしいこと」
「…ばーーーーーーか」
「なげぇよ」


お互いに顔を見合わせながら微笑んだ。
ぽんぽん撫でる手を大人しく受け入れる。


「おれは、ちゃんと紅葉のとこに帰ってくるぜ」
「昨日からそればっかり」
「おれの帰ってくるとこは紅葉のとこだからな」
「…ふーん」
「恋人とか夫婦とかそんな繋がりより、紅葉との繋がりの方が安心だしな。安心して、帰ってこれる」
「…これからもずっと、いいお兄ちゃんでいてくれるなら……待っててあげる」
「おう」


紅葉はぐっと手を伸ばして出水の頭にぽんっと手を乗せた。そして同じ髪色で同じ髪質のふわふわの頭を撫で返す。


「お兄ちゃんの日だから、ね」
「…お兄ちゃん扱いじゃねぇだろ」
「でも満更でもない顔してる」
「…紅葉がいきなり珍しいことしてくるからだろ…」
「公平照れてる?」
「照れてねぇよバカ」
「ばか言うなばか」


ぐしゃぐしゃとお互いの頭を撫で合う。最初は優しく、けれどだんだん雑に、ヤケクソに、ムキになって。かき混ぜ合うような撫で合いにお互いの髪はぼさぼさだ。

そんなじゃれ合いを遠くから眺めていた米屋は呆れたように溜息をついた。語呂合わせの日など、この兄妹には関係ないのだ、と。


「まあ、あいつらが満足そうだから良いけどな」


どこか楽しそうにじゃれ合う姿に、苦笑しながら頭の後ろで手を組んだ。今の雰囲気を邪魔したくはない。とても幸せそうだから。
ランク戦の申し込みはまた今度にしようと、仲の良い双子を背に歩き出した。


end

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とりあえずいい兄さんの日だから続けてみました。こちらも突発なのでほんと中身もオチもないな。ただわちゃわちゃさせたかっただけ!

そして出水公平相手の夢を全否定するような…いやむしろ恋愛系の夢を全否定するような発言させてしまったと読み返して気付いたけど出水兄妹なのでってことで深く考えないで下さい!!……私もダメージ受けた←


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