ありがとう

※完結後(でも二宮さん出ません)
出水兄妹BD
ちょっとイチャつかせすぎたかな…注意です…

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自身の誕生日。それはつまり双子の相手も同じわけで。
目を覚まして1番最初に思い浮かべたのは双子の兄妹だった。

学校へ行く支度を終えてから双子は同時に別々の部屋を出る。そして今日1番に顔を合わせた。


「…はよ」
「…うん、おはよ」


いつもより穏やかな気持ちで挨拶をし、お互いに小さく微笑んだ。
今年も迎えられた。かけがえのない大切な双子が生まれた、大切な日を。


「今年はどっちが誕プレ多く貰えるか勝負だな」
「どうせ公平の方が多いに決まってるでしょ」


毎年同じような会話をしながらリビングへと降りていく。


「いや今年は分かんねぇぜ?お前が射手になってから雰囲気変わったって言うやつ多いし」
「……変わったの、かな」
「だいぶ変わっただろ。誰のお陰とは言わねぇけど」
「……うん」


その言葉に小さくはにかむ。
変われたのは、あの人のお陰だ。
その人物を思い浮かべて乙女の表情をしている紅葉に、出水は一瞬顔をしかめたが、すぐに優しく微笑んで紅葉の頭をぽんっと叩く。


「なに?」
「いーや、何でもねぇよ」


きょとんと見上げてきた紅葉ににかっと笑いかけ、リビングの扉に手をかけた。


「あ、そうだ。紅葉」
「?」
「誕生日おめでと。…おれと一緒に生まれてきてくれてありがとな」
「…!」


少し恥ずかしそうに告げた出水に紅葉は目を見開いた。


「な、なにいきなり…」
「うるせぇな、そのままの意味だよ」


自分に劣等感を抱き、双子の代わりなのだと卑下し、追い詰められてこの世を去ることを選ぼうとした紅葉。今はそんな気持ちは消えているのだとしても、伝えずにはいられなかった。

紅葉がいてくれて、一緒に生まれてくれて、家族でいてくれて、ありがとう、と。


「それだけ!ほら行くぞ!」
「こ、公平!」


恥ずかしさにガシガシと頭をかき、再び扉を開けようとして、今度は紅葉に呼び止められた。引き止めるようにドアノブを握っていない方の手を取られる。
出水はちらりと紅葉に視線を向けた。俯く紅葉の頭が見える。


「……たし、も、」
「あ?」


ぼそりと呟いた言葉が聞き取れず、出水は聞き返す。すると、紅葉はばっと顔を上げた。その頬は赤く染まっている。


「わ、たし、も…公平と一緒に生まれてこれて…公平の双子で、良かったと、思ってるから…!」
「!」
「色々あったし、色々思ったことはあるけど、それも全部今のわたしになるためには必要なことだった。それを含めて、わたしだから」
「紅葉…」
「でも、今はもう大丈夫だよ。わたしはわたしで、公平は公平。比べたりして辛くなることは、もうないから」
「…おう」
「腹は立つけどね!」
「おい」


戯れるように額を小突いた。お互いに楽しそうに。もう、過去の話だと笑い合うことが出来るのだから。
紅葉は穏やかに微笑み、出水を見上げた。


「公平」
「ん?」
「…お誕生日、おめでとう。わたしと一緒に生まれて…わたしの双子の兄として生まれてきてくれて、ありがとう……お兄ちゃん」


掴んでいた手をきゅっと握ると、驚いて目を見開いていた出水も穏やかに微笑む。


「…あんたたちは朝からなーにしてんのよ」
「「いだっ」」


後から降りてきた姉にスパンっと頭を叩かれた。2人で同じように頭を抑える。


「なにすんだよ!」
「なにすんのよ!」
「はいはい、さっさと学校行きなさいよ。馬鹿共」


くあーっと欠伸をしながら先にリビングへ入る姉に双子がむすっとした視線を向けていると、姉はくるりと顔だけ振り返った。


「誕生日おめでと、公平、紅葉」
「…おう」
「…うん」


未だに手を握り合ったままはにかむ双子に、姉は小さく溜息をついて視線を外した。

これから何度も誕生日を迎えても、この双子の距離感は変わらないのだろうと。


end

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出水兄妹ハピバ!
まとめてごめんね!


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