夏休みだよ!第1弾!【肝試しif】

*注意

夏休みだよ!第1弾!【肝試し】のifです。隠岐くんです!
本誌登場キャラのifです。コミック派の方は注意です。というか本誌派の人も注意です…

もうこんなのイメージと違う!!ってなるはず!!←
でも書かずにはいられなかった…詳細出てきたら消すかもですので、暖かい目で読んでやって下さい。そして強制終了してます。


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「絶対やだ」


夜に学校の校庭へ緊急招集だと呼び出され、双子の兄と何事かと来てみれば楽しそうな米屋と犬飼に出迎えられた。その2人から発せられた言葉に紅葉は即座に拒否する。
寄せられた眉に不機嫌そうな顔。そんな紅葉の表情を見て米屋と犬飼は吹き出した。


「ははっ、言うと思ったよ」
「だったら聞かないで下さい」
「いや一応聞いとかねーとさ」
「…わたしは参加しないから」
「まさか紅葉ちゃん怖…」
「怖くない!!」


犬飼が言い切る前に否定した紅葉。その必死さに、こちらは笑いを堪えるのに必死だ。


「おま、そんな全力でかよ?それ怖いですって言ってるようなもんだぜ?」
「怖くないってば!」
「あ、後ろに…」
「なにもいない!!」


そう言いながらも隣にいた双子の兄の前へ立ち、寄りかかるように背中をくっつける。出水は苦笑しながらその肩を抱いた。


「こいつそういうのダメなんであんまからかわないで下さいよ」
「はぁ!?ダメってなに!」
「お化けとか幽霊とか嫌いだろ?」
「そ、んなのいないし!」
「そういう強がってるやつからいなくなってくよな」
「!?だ、だからわたしは、肝試しなんか参加しないってば!」


今回紅葉たちが緊急招集と称して呼び出されたのは、肝試しのためだった。学校の校庭に集められた多くの生徒たち。普通校だけでなく進学校組がいるのは犬飼のせいだろう。
理由を知っている者から知らない者まで様々なようだ。


「ここまで来て参加しないはないんじゃない?」
「緊急招集とか言われたから来ただけなんだけなんですけど!」
「だって怖がるやついねーと面白くねーじゃん?」
「意味分かんない!ていうかわたしは怖くない!」


先ほどからきゃんきゃん吠えっぱなしの紅葉に米屋と犬飼はにやにやを抑えきれない。それがまた紅葉の機嫌を悪くしていく。


「だーからあんま紅葉をからかわないで下さいよ。槍バカお前もな」
「おーおー。お兄ちゃん今回はお優しいことで」
「過保護だねー」
「公平…」


縋るような瞳で見上げた紅葉に、出水は優しく微笑んだ。そしてぽんっと頭を撫でる。


「お兄ちゃんが一緒に行ってやるから安心しろ」
「1人で勝手に行けばか!」


乗せられた手を勢いよく跳ね除け、距離をとった。
じんっと痺れた手に出水は眉を寄せる。


「おま、人が折角優しくしてやったのに何だよその言い草は!」
「強制参加させようとしてるその言葉のどこが優しいわけ!?」
「おれが一緒なら怖くないだろ!」
「公平なんかいたって怖いに決まってるでしょ!」
「あ」
「今怖いって言ったね」


気付いた米屋と犬飼だが、本人たちは気付かずに言い合いを続ける。そんな騒がしさに、楽しそうに近付いてくるものが1人。


「あっれ?紅葉ちゃんやないの?まさかここで会えるなんて思うてなかったわー」


そう言いながら嬉しそうに歩み寄ってきた隠岐は、ぎゅーっと抱き着いた。

出水に。


「……おい」
「紅葉ちゃん、何や前より固くなったなぁ」
「おれは紅葉じゃな……って…!ちょっと待て!前よりってどういう意味だ!?」
「紅葉ちゃんかと思うたらお兄ちゃんやん!あまりにもそっくりで間違えてもーた」
「そこまで似てねぇだろ!つーかおいおれの質問に答えろ隠岐…!」
「じゃあ改めて紅葉ちゃんにぎゅー…って、あれ?」
「公平と間違えるとか…隠岐最低…」


抱き着こうとしてきた隠岐をさらりとかわし、じとっと冷たい視線を向けた。


「え、今の嘘に決まっとるやん!おれがほんまに紅葉ちゃんとお兄ちゃん間違えるわけないやろ?」
「冗談でもむかつく…」
「それはすまんなぁ。妬かんといて?」
「妬くわけないでしょ!ばか!」
「紅葉ちゃんそんな、好き!やなんて大胆やなぁ。ありがとさん」
「言ってないんだけど!」
「ちゃんと分かっとるよ。紅葉ちゃんのばか!は、好き!と同じやろ?」
「違う!…はぁ…ほんっと調子狂う…」


にこりと笑う隠岐の相手に紅葉は額に手を当てた。あまりいないタイプに疲れて溜息が漏れる。


「おい隠岐、あんま紅葉にちょっかい出すなよ」
「お兄ちゃんは相変わらず過保護やなぁ」
「つーかさっきからお兄ちゃんお兄ちゃん言ってんな!」
「せやかてお兄ちゃんやろ?」
「お前の兄じゃねぇよ!」
「いつかおれのお義兄さんになるんやからその練習やて」
「「はぁ!?」」


重なった双子の声に隠岐はぱちぱちと拍手した。


「双子っちゅーのはオモロイ生きものやなぁ」
「隠岐…!お前もマジで紅葉のこと狙ってんのか…!?」
「ん?おれはいつもマジやで?」
「ば、ばかじゃないの…!」
「イコさんちゃうけど、照れる紅葉ちゃんはほんまカワイイなぁ」
「う、うるさいばか!」
「ボキャブラリー少ないのほんまカワイイわ」
「うーるーさーいー…!」
「ほな、黙るからおれと肝試し行かへん?」


突如変えられた話題に双子はポカンと隠岐を見つめる。3人のやり取りを眺めていた米屋と犬飼ははっとした。


「そうだそうだ思い出した。あまりにも隠岐がこいつら面白いように転がしてるから忘れてたぜ…」
「うん、俺も。なかなか新鮮な光景だったね」
「ほんとっすね。なあ隠岐、今何とか紅葉を肝試しに参加させようとしてんだけど、こいつがまた頑固でよ。参加するって言わねぇんだよ」
「へー?紅葉ちゃん、怖いんか?」
「怖くない!」
「ほな一緒行こ?」
「…行かない」
「おれがちゃんとエスコートするで?」
「いらない」
「おい隠岐、紅葉に絡むな。いい加減にしねぇとハチの巣にすんぞ」


不機嫌なオーラを漂わせる出水に、それを分かっていながらも隠岐はにこりと笑いかける。


「出来るもんならやってみい、お兄ちゃん。どアタマぶち抜いて返り討ちにしたる」
「んだとこのやろ…!」


ばちばちと火花を散らす出水と隠岐に、紅葉は大きな溜息をつく。米屋も犬飼も楽しそうに笑うだけで何もする気はないようだった。
自分が止めるしかないと思い、火花散らす2人の間に入ろうとしたが、そこへ苦笑した北添がやってくる。


「ほらほら、みんなもう時間だよ。相方決めた人はスタート位置についてね」
「スタート位置って、わたしは…」
「紅葉ちゃんも早く並んでね!後がつっかえちゃうから!」
「え、ちょ…!」
「え、ま、紅葉…!?」


北添にぐいぐいと背中を押されて列に並ばされた。出水とは離れ離れになるが、何故か隠岐が一緒で。2人して列に並ぶことになり、紅葉は顔を引きつらせた。しかし隠岐は何も動じることはなく、紅葉ににこりと微笑む。


「………」
「これはもう運命やね」
「………うそ」
「もう観念しておれと肝試しせえへん?」
「絶対やだ」
「そんな怖がらんでも大丈夫やて。おれがちゃんと紅葉ちゃん守ったる」


ぽんぽんと頭を撫でられた。隠岐のその優しい言葉と行動に一瞬落ち着いたが、それどころではない。勝手に参加することになってしまったのだから。それに、隠岐の余裕な態度に少し腹が立った。しかし手は振り払わずに溜息をつくだけで。
隠岐に文句を言おうと口を開こうとすれば、列の後ろの方で双子の兄の必死な声が聞こえる気がした。
今のはもう聞こえないことにしようと、開いた口からは更に大きな溜息が漏れた。


「……なんで肝試しなんか…」
「夏言うたら肝試しやろ」
「意味分かんない」
「怖がりな女の子はそこ売りにしたらええよ」
「いや意味分かんない」
「そうやなくても俺は紅葉ちゃんのこと好きやけどね」
「なっ、ちょ、い、いきなりなに言ってるの…!」
「ん?おれ何かおかしなこと言うた?」
「むしろまともな発言したの聞いたことないんだけど」
「ひっど!おれいつも本気やで?」
「へー。あ、でもそっか。ランク戦のときはそれなりに真剣にやってるよね」
「それなりやなくて結構マジで真剣やで?」
「ふーん」
「興味なさすぎない?惚れ直すとこやろ?」
「………まあ、確かに…あの真剣なときは少しかっこいいけど…」
「ほんまに?」


ぼそりと呟いた言葉を拾った隠岐に、紅葉は言ってしまったと顔を顰めた。B級3位という上位にいる隠岐を凄いとは思っている。機動型狙撃手と呼ばれる隠岐の戦い方は確かに惚れ惚れするものなのだから。
それを本人に言ってしまえば面倒になることなど分かりきっていたのに、思わず口から出てしまった。嬉しそうな隠岐からすっと視線を逸らす。


「………」
「紅葉ちゃんにそう思うてもらえてるんなら、おれもっと頑張るで」
「…自分の隊のために頑張ればいいでしょ」
「そりゃもちろん。せやけど目標は多い方が頑張れるやろ?」
「目標?」


こてんっと首を傾げた紅葉に、隠岐はすっと手を伸ばし頬に手を添えた。ぽかんとする紅葉を愛しげに目を細めて見つめる。


「略奪愛って燃えへん?」
「………はぁ!?」
「おれらはB級3位で終わらへんよ。もっと上に行って、手に入れられるもんは全部手に入れる」
「お、隠岐…!」
「もちろん、紅葉ちゃんもな」
「!?」


ちゅっと額にキスを落とされ、ぶわっと顔を真っ赤に染めた。その反応に隠岐は満足そうに笑う。


「お、順番やな。ほな行こか、紅葉ちゃん」
「…っ」
「2人きりでお話ししよか?」
「…ばか、じゃないの…!」
「好きな子を簡単に諦められへんからな」
「……明日ハチの巣にしてやる」
「ちょ、おれと会話して!そもそもおれ狙撃手なんやけど」
「うるさいばか!」


楽しそうに笑う隠岐と、不機嫌そうに眉を寄せながらも頬を染める紅葉。
肝試しの順番が来て、2人は暗い校舎の中へと消えて行った。

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ifだから強制終了!!

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