お・泊・ま・り(2日目)

二宮の家に泊まり、反撃をして、そのまま気分良く登校した。にやけそうな頬を抑えながら出水のいない学校生活を過ごす。

そして昼休み、お兄ちゃんがいなくて寂しいだろうと寄ってきた米屋に溜息をついた。

更に出水がいないからと紅葉の元に続々と人がやってくる。


「おー紅葉ー、出水がいなくて寂しがってると思って来てやったぞー!」
「いや寂しくないし」
「アタシに思う存分甘えていいからな!」


嬉しそうに抱きついてきた仁礼に小さく溜息をつく。けれど嫌ではない。お姉さん気質の仁礼は何かと紅葉を構いたがることはもう慣れた。
紅葉にぎゅーぎゅー抱きつく仁礼に、後ろからやってきた熊谷は苦笑する。


「最近紅葉が自分に構ってくれないからって不満溜まってたのよ。少し相手してあげて」
「…まあ、うん」
「紅葉ー!」


ぐりぐりと頬を擦り寄せていた仁礼は、ふと何かに気付き首を傾げた。そして確かめるように再び紅葉の頭に顔を寄せる。


「光?」
「……紅葉、いい匂いするな?シャンプー変えたか?」
「へ!?」


驚いて仁礼を見つめる。すーっと頬が染まった紅葉に仁礼と熊谷は顔を見合わせる。ただ、シャンプーを変えたかと聞いただけなのに。
そんな紅葉の反応に近くにいた米屋はにやりと笑った。


「やだー、紅葉ちゃんってばお兄ちゃんがいない間に二宮さんの家にお泊まりー?ハ・レ・ン・チー!」
「な、何で知って…!?」
「「「え」」」


ばっと真っ赤な顔で米屋を振り返った紅葉に、周りは固まった。冗談でからかったつもりだったのに、その反応はつまり本当にそうだと言うことで。
集まる視線に顔は熱くなるばかりで、カマをかけられたと気付いてももう遅い。


どたどたと仁礼と熊谷は紅葉に近付き詰め寄った。その圧力に思わず身体を引く。


「と、ととと、泊まったのか!?二宮の家に!?」
「…っ」
「その顔は肯定してるわよ紅葉!え、泊まりって…!れ、玲に知らせないと…!」
「ちょ、な、何で…!」
「やっべー!まじかよ!紅葉が二宮さんの家にお泊まり!これ弾バカが聞いたらなんて言うかなー?」
「や、やめてよ!言わなくて良いから!」
「もしもし玲!?大変よ!紅葉が昨日二宮さんの家に泊まったって…」
「だから何で電話してるの!」
「オレも送信っと」
「あんたは誰に送ってるのよばか!」
「泊まりって泊まりだろ!え、待て待て待て?つまり泊まりってことはそういうことなのか!」
「光は少し落ち着いて!な、何にもないから!」


騒ぎだした仁礼、熊谷、米屋に紅葉のツッコミは追いつかない。あわあわとパンクしそうになっていると、ガタンっと前で三輪が立ち上がった。


「お前らうるさいぞ!静かにしろ!」


ギロリとした三輪の視線に全員こくりと頷いた。


◇◆◇


放課後にまた仁礼たちに捕まる前に、紅葉はそそくさと家に帰った。今日も二宮の家に泊まりに行くのだ、今度はちゃんと支度をして行きたい。


「…二宮さんの服も、良かったんだけどな…」


あの二宮に包まれているような感覚はとても好きだった。本人には言えないが。


「えっと…持ってくものは…」


うきうきとしながら鞄に物を詰めていく。


「…あんまり持ってくのも、なんか、泊まる気満々みたいであれだよね…」


とりあえず2日分を詰めて紅葉は家を出た。ちゃんと親に、泊まりに行くと伝えて。


そしてボーダー本部へ辿り着き、すぐに二宮隊の隊室へ向かう。今朝会ったばかりだが、早く会いたくて仕方がない。

勢いよく二宮隊の隊室へ入った。最早自分の隊室のように。


「お疲れさまです!」
「あっれー?紅葉ちゃんだー」


入った途端、犬飼からにやにやとした視線を送られる。その視線に眉を寄せた。


「…なんですか。来ちゃ悪いんですか」
「いやいやそんなこと言ってないよー?」


犬飼はあくまでにやにやと紅葉を見つめるが、紅葉は犬飼から視線を逸らして奥へ進む。椅子の上に荷物を置いた。


「犬飼先輩、二宮さんは?」
「んー、まだ来てないけど、もうすぐ来るんじゃないかな?」
「そうですか」
「それより紅葉ちゃん」
「はい」


再び犬飼に視線を向けると、にっこりと微笑まれた。


「昨日は二宮さんの家にお泊まりだったんだって?」
「!?」


ぶわっと頬を染めた。何で知っているんだという意味を込めて犬飼を睨む。その視線にも犬飼は笑顔を崩さない。


「みーんな知ってるよ」
「み、んな、って、な、なんで…!」
「何でだろうねー?」
「犬飼先輩!」
「お泊まり楽しかった?」
「うるっさいばか!」


先輩にも関わらず紅葉は吠えた。その直後に隊室の扉が開き、二宮が入ってくる。会いたいと思っていたはずなのに、今の会話のせいか途端に恥ずかしくなってしまって、紅葉の頬は赤く染まる。


「来てたのか、紅葉」
「……悪いですか」
「んなこと言ってねぇだろ。泊まる準備はしてきたのか?」
「…っ……は、い」
「なら良い」
「………と、特訓!お願いします!」


にやにやとした犬飼の視線に耐えられず、紅葉は二宮にそう告げて訓練室へずんずんと進んで行った。その後姿に首を傾げながらも、二宮も訓練室へ向かっていく。
2人を見送った犬飼はくつくつと喉を鳴らして笑った。


「これはまだ何もないみたいだなー。出水がいない間にとか、超楽しい」


携帯を取り出し、今日も泊まりに行くようだ、と送信をした。


◇◆◇

ボーダーでの特訓が終わり、またいつも通りに車に乗り込んだ。今日も二宮の家に泊まるのかと思うとそれだけでドキドキしていく。


(いい加減慣れてよ…)


いつまでもドキドキしっぱなしだ。
はぁっと小さく息をつく。


「どうした?」
「え?」
「溜息ついただろ。嫌か?」
「っ、だ、だから、嫌ではないです…その聞き方、ずるい…」
「ずるいのはどっちだ」


朝の反撃を思い出して呟く。そういえば仕返しをしていない。もうペナルティーを言い訳にするのはやめだ。
信号で止まった直後、二宮は紅葉の頬に手を当て、すっと、唇を奪った。
突然のことにぽかんとする紅葉に目を細め、再び運転に戻る。


「………っ!?」


やっと状況を理解した紅葉はばっと口元を押さえた。そのまま何も言えずに二宮を見つめる。まるで初めてキスをされたようなその反応に、思わず笑みが溢れた。


◇◆◇

キスしたあとはぎゃーぎゃーと文句を言われたが、なんとかまた家に連れ込むことに成功した。初日目よりも紅葉はすんなりと家に入る。
けれどやはりその表情は緊張していて。ぽんっと頭を撫でた。


「すぐに風呂溜めるからとりあえず入ってこい。少しは緊張解せ」
「……すみません」
「謝る必要はねぇよ」


そんな初心な反応だから可愛いと思えてしまう。いつまでも味わえるわけではないのだ、今のこの反応を楽しみたい。


「あ、二宮さん」
「なんだ?」
「…今日、シャンプーの香り、いい香りだって言われました…」
「…そうか」
「…ありがとうございます」


はにかむように告げられた言葉。最近は紅葉も学校でのことを普通に話すようになった。けれど、どこか恥ずかしそうに話す姿にごほんっと咳き込む。


「…さっさと入れ」
「まだ溜めてると最中じゃないですか」
「うるせぇ」


ぐしゃぐしゃと頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。やはり、家にいるときと外にいるときだと反応が違う。家で2人きりになっている方が、幾分か素直になっている。
嬉しくも心臓に悪い事実に溜息が出そうだった。


「洗ってる間に溜まるだろ」
「…また先に良いんですか?」
「一応客だからな。さっさと入ってこい」
「…はい」


こくりと頷いて素直に浴室へ向かう紅葉。そしてしばらくして聞こえたシャワーの音に、またどくりと心臓が鼓動した。


「……一々反応してんな。慣れろ」


紅葉が風呂へ入っている間に、やることがある。それを終わらせなければ。

◇◆◇

2回目のあのシャンプーを使い、また気分が良くなった。湯船に浸かって温まり、更に幸せな気持ちになる。
今回はちゃんとパジャマも持ってきた。そこまで緊張しないはずだ、と柔らかなタオルで身体を拭いてから持ってきた服に着替える。二宮の服を着たときとはまた違った安心感に包まれた。


「…ん…?」


お風呂の香りで気付かなかったが、リビングの方から良い香りがする。くんくんと嗅ぐと、自分が好きな香りだった。とても身近に感じるお腹が空く香り。匂いに釣られるように紅葉はリビングへと足を進めた。


「……わぁ…!」


そして目を輝かせる。
テーブルの上に広がる料理に。それもやはり、自分が好きな食べ物だった。


「エビフライ…!」
「確か好きだったろ」


準備をし終えた二宮がソファに腰を下ろした。紅葉は急いで二宮の隣に座る。


「え、こ、これ…!二宮さんが作ったんですか!?」
「他に誰がいる」
「料理…出来たんですね…」
「どういう意味だ」


どういう意味も何も、そんなイメージはなかった。しかもかなり見栄えもよく、美味しそうで。紅葉はキラキラとエビフライを見つめた。


「…熱いうちに食え」
「はい!いただきます!」


嬉しそうに手を合わせた紅葉。まさか食べ物にここまで反応するとは思わなかった。
味に自信はあるが、やはり少し不安で。
二宮はチラリと紅葉を盗み見る。

パクッと口いっぱいにエビフライにかぶりついた紅葉に、額に手を当てた。心臓がうるさく鼓動している。


(何考えてんだ俺は…)


昨日の我慢もあってか、思考がすぐにいかがわしい方へいってしまう。けれど紅葉のことは大切にしたいのだ。そう言い聞かせ、静かに深呼吸をした。
そしてもう一度チラリと紅葉を盗み見る。そこで、気付いてしまった。


「…お前、そのTシャツ…」


パステルカラーなTシャツだと思ったが、それだけではなかった。前面にトリオンキューブのようなものが浮かんでいる。よく見ると、背中にはアステロイド、っと文字が入っていた。それを平然と着ている紅葉に顔を引きつらせる。

なんてセンスしてるんだ、と。
けれどそのお陰で変に高ぶった気持ちが収まった。萎えてしまったと言うべきか、とりあえず安心する。
そして美味しそうに二宮が作った料理を食べる紅葉に小さく微笑んだ。


「…美味いか」
「はい!すごく美味しいです!」
「そうか」


純粋な笑顔を見て穏やかな気持ちになった。好きな相手の好きなもの、それを一緒に食べられることに喜びを感じ、二宮も箸をとった。



それから他愛ない話をしながら食べ終わり、紅葉はとても幸せそうな笑みを浮かべている。余程お気に召したようだった。
そこまで喜んでくれるとは思っていなかったが、作った甲斐があるというものだ。

優しく紅葉の頭を撫で、そのまま立ち上がった。食器を片付けていく。


「あ、やります」
「いいから座ってろ」
「何もせずにご飯作ってもらったんですから、片付けくらいはやりますよ!」
「いいっつってんだろ」
「やります!」
「いい」


それでも食い下がり、二宮が持つ食器を奪いとった。


「おい」
「わたしがやります」


スタスタとキッチンへ行ってしまった紅葉に小さく溜息をついた。

しかしやらせるのもやはり悪い。自分もキッチンへと向かう。


「二宮さんはいいです、座ってて下さい」
「お前が座ってろ」
「嫌です」
「ワガママ言ってんな」
「泊めてもらってるんですからお礼くらいさせて下さい」
「俺が連れ込んでるだけだろ」
「っ、で、でも…わたしは、嬉しい、し…」


すっと頬を染めた紅葉に、こっちまで頬が熱くなった。それを誤魔化すように紅葉からスポンジを奪い取ろうとするが、紅葉もそれを許さない。


「寄越せ」
「わたしが洗います」
「俺がやる」
「大丈夫です!」
「座ってろ」
「嫌です!」


譲らない紅葉に小さく息をつき、実力行使に出た。見上げてくる紅葉の顎を掴み、強引に口付ける。

驚いた紅葉の手からスポンジが落ちた。それを確認し、唇を離す。そしてスポンジを手に取った。


「大人しく座ってろ」
「……い、嫌です…!」


再び紅葉がスポンジを手にとる。頬は赤く染まっているものの、引く気はないようだった。それならばこちらにも考えがあるというように、二宮は再び紅葉に口付けた。

先ほどよりも長く、角度を変えて何度も口付けると、酸素を求めて紅葉の口が少し開いた。それを逃さずに自身の舌をねじ込む。
びくりと跳ねた紅葉から甘い声が漏れた。
逃げても追いかけて舌を絡め取られる。自分のものではないものに口内を荒らされて頭はパニックだ。初めての深いキスに、膝が震え始める。呼吸も上手く出来ずに苦しくなり、瞳に涙が浮かんだ。そろそろ限界かと、二宮はゆっくりと離れる。

お互いの口から銀色の糸が伸び、細くなったそれはぷつっと切れた。

足に力が入らなくなってしまった紅葉は、そのままくてんっと座りこんでしまう。はぁはぁと乱れた息はまだ整わない。


「…っ、な、に…?」
「………」


涙目で見上げられ、固まった。
ただのキスでダメなら、深いキスをして紅葉が照れてここから離れていけば良いと思っていたが、予想以上にくてんくてんになってしまって。目の前の紅葉に、ごくりと唾を飲み込んだ。そして気付く、今のは紅葉の唾液だったかもしれない、と。そう考えてしまっただけで身体が熱くなった。まずい、このままだと、本格的にやばい。そう思った。


「………」
「……い、いま、の…」
「……片付け、頼む」
「…え…?」
「俺は風呂に入ってくる」


紅葉の返事を聞く前に、二宮は足早に浴室へ向かった。残された紅葉はぽかんとしたあと、力の入らなくなった膝を叩き、なんとか立ち上がった。そして唇を触る。


「……あんなキス、は、初めて、だった…」


その感覚に身体が熱くなる。心臓がドキドキと鼓動しっぱなしだ。大きく深呼吸をした。けれど鼓動が収まることはなく、紅葉の頬は赤く染まる。

先ほどのキスが嫌ではなかった。初めての感覚だったが、少しだけ、もう少しやってほしいと思ってしまった。そんなことを考えてしまった自分に動揺し、慌ててスポンジを手に取った。頼まれたからには早く片付けを終わらせよう、と。

◇◆◇

気持ちを落ち着けるように頭からシャワーを浴びた。少し温度を冷たくしても、熱く火照った身体は冷めずに頭を抱えた。


「……何やってんだ…」


見上げてきた紅葉の表情が頭から離れない。あのまま自分の思うままに行動してしまえば、確実に襲っていた。
昨日から自爆している自分の行動に大きく溜息をつく。


「…まだ、ダメだろ…」


もし無理矢理手を出せば身体目当てで家に連れ込んでいると思われてしまう。その誤解だけは避けたい。ただ紅葉と一緒にいたいだけなのだから。
再び大きく息をついた。どうにか気持ちを落ち着かせてから出なければ。この先にきっとまた、嬉しくも辛い拷問のような時間が続くのだから。


◇◆◇


かなり長風呂をしてリビングへきたが、二宮はピタリと足を止めた。うとうとしながらソファに座る紅葉をじっと見つめる。

紅葉の頭はかくんっと落ち、けれどその反動で目を覚まして頭を振って起きる。そしてまたかくんっと頭が落ち、慌てて起きる。短い感覚で何度も何度もそれを繰り返していた。
必死に眠気に耐えている。二宮が出てくるのを待っているのだろう。
そんな姿に愛しさを感じた。


「紅葉」


優しく名前を呼び近付いていくと、ゆっくり振り返った紅葉は二宮を視界に捉え、ふにゃっと笑った。予想外の笑顔に動揺する。


「にのみやさんだぁ…」


その言葉を最後に、紅葉はパタンっとソファに倒れた。気持ち良さそうな寝息が聞こえる。
側まで言って覗き込むと、二宮さんの姿を認識して安心したのか、穏やかな表情で眠っていた。
二宮は小さく笑ってその頭を撫でた。


「待たせて悪かったな」


そのまま軽く髪に口付けを落とし、昨日と同じように紅葉を抱え上げた。全く同じようにベッドへ運ぶ。


「まあ、服がダセェお陰で変な気は起こさずに済みそうだがな」


昨日の彼シャツに比べるとまるで色気が違う。小さく笑って紅葉をベッドへ下ろした。やはり体温を求めてか二宮に擦り寄ってくる。同じようにベッドへ入り、ぎゅっと紅葉を抱き締めた。安心する。
これは今日はゆっくり眠れそうだ。そう思い、目を閉じた瞬間…


「…にの、みゃ、さ…」
「っ」


甘えるように名前を呼ばれ、胸に擦り寄ってきた。本当は起きているんじゃないかと眉を寄せたが、そんなことが出来るやつだとは思えない。どくどく鼓動する心臓に、また目が冴えてきた。


「…我慢しろ…意地でも我慢しろ。ここで手ぇ出したら最低なやつだ。一生紅葉に触れられないと思え…」


ぶつぶつと暗示をかけるように呟く。
胸にするよる紅葉は気持ち良さそうで。それに穏やかな気持ちになりつつも、湧き上がる気持ちを抑えるために、二宮はまた一晩戦うことになるのだった。


−−−−−−−−

〜おまけ〜



「…ん?」

昼休み、LINEの通知が来た。一体誰だろうと首を傾げつつ、犬飼は携帯を取り出した。相手は米屋だ。米屋からの連絡は大抵二宮と紅葉絡みだと分かっている。一体今日は何があったのだろうと、軽い気持ちで文面を見た。


「………え、マジ?」


『紅葉、昨日二宮さんの家に泊まったらしいすよ!詳しくは聞けてないんで後はよろしくっす』


そんな文面に犬飼は一瞬驚き、それからにやりと笑みを浮かべた。これは楽しい。米屋に了解、っと返信したあと、また別に文章を打ち、二宮隊と同い年の仲が良い隊員に一斉送信をした。


【速報】紅葉ちゃん、二宮さんの家に初のお・泊・ま・り☆


それだけを送り再びにやりと笑う。


「さーて。どこまでいったのかなー?」


動揺する紅葉の表情が手に取るように分かる。これが紅葉の双子の兄にバレたらまた大変なことになりそうだ。帰ってきたら伝えようか伝えまいか。本部に行ったら米屋とも話をしたい。


「やっべ、超楽しい」


犬飼がそんな楽しそうな笑みを浮かべている頃、送られてきた文面を見て辻が机に頭を打ち付けていたのだった。



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