15巻発売記念!

「か、買いました…!!」
「「はいはい」」


本部へやってきてワールドトリガー15巻を掲げる春に、出水と国近は見向きもせずに返した。


「太刀川さん…!太刀川さん表紙です…!赤に白でかっこよくてこの双剣を越えて行けって太刀川さんでいつもとは違うゆらっとした雰囲気がもう…!!」
「とりあえず落ち着いて日本語話せ」
「語彙力が太刀川さんだよー」
「そうなんです太刀川さんなんです…!」


太刀川が表紙と聞いてからキャラが壊れている後輩に出水は呆れたように溜息をつく。春が太刀川を好きなことは嫌というほど分かっているが、こんなになってしまうほどかと。


「とりあえず3冊買いました!」
「お前この前は2冊って言ってただろ」
「最低2冊って言ったんです!」
「同じもの3冊買っても意味なくないー?」
「大丈夫です!ちゃんと偶数になるようにまた買いに行きますから!」
「いや何が大丈夫なのか意味わかんねーよ!」
「ちゃんと太刀川さん用の棚作ります!」
「春…ちょっとお前ほんとキャラ元に戻って…」


キラキラとした表情でどんどん道を踏み外していくような発言をする春に、出水は助けを求めるように国近に視線を向けるが、国近は目の前のゲームに夢中だった。もう相手にする気はないらしい。


「おれ1人でこの春の相手するんすか…」


嬉しそうに太刀川の表紙を眺める春に再び溜息をついたところで、やっと表紙になった人物が現れた。


「よお、随分機嫌良いなー春」
「太刀川さん!」


表紙を見つめるよりも嬉しそうに太刀川を出迎えた。好きを隠そうともしない態度に太刀川は気付いているのないないのか。いつも通り春に近付いてぽんっと頭を撫でる。


「何そんな嬉しそうな顔してんだよ」
「だって今日は太刀川さん表紙の発売日ですよ!記念すべき日ですから!」
「?………ああ、そういや何かあったな」
「何かって何ですか!太刀川さんが表紙なんですよ!前に根付さんに呼ばれて撮影してましたよね?そのときのですよね!か、かっこいいです…!」
「おお、ありがとな。…あー…でも撮影途中で中止になったんだよな」
「え?」
「なんか良いのが撮れないって根付さんが嘆いて、中止になって1人で防衛任務行かされた」
「……まあ、戦ってる太刀川さんじゃなきゃさすがに表紙に出来ないすよね」


いつものだらしない姿を思い浮かべ、根付の気持ちが痛いほど分かると1人頷いた。だから恐らく急遽防衛任務に行かせ、そこですかさず写真を撮ったのだと思うと、根付のボーダーに対する愛は流石だと思えた。


「根付さんも頑張るな…」
「戦ってるときの太刀川さんもかっこいいですけど、た、太刀川さんはいつもかっこいいですよ…!」
「お?そうか?やっぱ春は見る目があるな!」
「明らかにフィルターかかってますよ」
「特にこの表紙の太刀川さんは素敵です…!なんていうか、強いオーラが出てます…!」
「ははっ、だろ?」
「あんた撮られたの知らなかった癖に何でドヤ顔してんだよ!」
「いや撮られたは知ってたぞ。別に敵じゃないから気にしてなかっただけだ」
「太刀川さん…!流石です…!素敵です…!」
「お前ほんと素直で可愛いやつだなー」
「もうなんなんだよこのバカップル……柚宇さーん」
「今忙し〜」
「ゲームやってるだけでしょ!」


ふわふわとした甘い雰囲気に包まれた太刀川と春。それに顔を引きつらせて国近に助けを求めるも、国近はゲームから視線を逸らさない。出水は頭を抱えた。


「戦ってるとこがかっこいいなんて言われたら、今日の防衛任務頑張んねぇとな」
「私も太刀川さんが戦いやすくなるように援護頑張ります!」
「おう!期待してるぜ!じゃあ早速防衛任務行くか」
「はい!」


2人は同時にトリガー起動し、隊服を翻してさっさと隊室を出て行った。


「ちょ、まだ防衛任務の時間には早い……って、行っちゃったよ…」
「周り見えてなかったねー」
「今防衛任務やってるのって…二宮隊じゃ…」
「そだねー」


何やら面倒なことになりそうなこれからの防衛任務に、出水は今日1番の溜息をついた。


「全く…しょーがねー2人だな…」
「だから出水くんがフォローしてあげないとー」
「柚宇さんもフォローして下さいよ」
「えー、まだゲーム途中だし太刀川さん面倒くさーい」
「おれだって面倒なんすから!じゃあ早いけど行ってきます!」
「しょーがないなー。ほーい、いってらっしゃーい」


ゲームを止めてひらひらと手を振る国近を背に隊室を飛び出した。先に行ってしまった隊長と後輩を追いかけて。


「ほんと…しょーがねー隊長と後輩だな」


どこか、楽しそうに笑みを浮かべて。


End

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