コーヒーにはミルクと毒を

※6章以降のネタバレと若干のBL(通常運転)と若干の近親相姦です。すみません。
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「私が仕掛けた罠に引っかかって死んだらそれは私が殺したことになるのかな?」
「なにいきなり物騒なこと言ってるんですか」


音子ちゃんからの呆れた視線が突き刺さる。おかしいな、音子ちゃんなら乗ってくれると思ってたのに。


「故意的にやるとなるとやっぱりダメだよね…。どうしたら上手くあいつを殺せるんだろう」
「だから発言が物騒ですって。阿鳥先輩に聞かれたら怒られますよ」
「遥斗くんの前では言わないから大丈夫」


遥斗くんは真面目だからこういうこと言うとすぐ怒るんだよね。怒ってる遥斗くんも好きだけど怒られるのは好きじゃないから良い子にしてるけど。


「それで、誰の話をしていたんですか?」
「それはもちろん…」


そこまで言うと食堂の扉がガチャっと開いた。そして入ってきた人物を見た瞬間に思わず顔を顰める。そんな私に奴は苦笑しながらも微笑みかけてきた。


「やあ、優さん」
「大外聖生…」
「優さん、一応お客様ですから」


地の底から響くような恨めしい声が出てしまったにも関わらず、大外聖生は笑顔でこちらに近付いてきた。私は音子ちゃんを盾に大外聖生を睨みつける。


「優さん?大外さんに何かされたんですか?」
「そうなの!だから音子ちゃん奴を私に近付けないで」
「えっと…?」


状況がよく分かっていない音子ちゃんに説明したいけど、それを口にするのも嫌でひたすらに睨みつけていると、大外聖生はやれやれと溜息をついた。めちゃくちゃ腹立つ。


「そんなに警戒しなくてもいいんじゃないかい?」
「……」
「たかがキスの1つでそこまで怒るなんて、もしかして初めてだったのかな?」
「貴方にいきなりされたって事実が嫌すぎて怒っているんですけど」
「なるほど、いきなりじゃなければ良かった訳か」
「マジでこいつ殺したい…!」


余裕あるこの表情を苦痛に歪ませたい…!もう地獄に堕ちるの覚悟で殺るしかない?いやでもこんな奴のために地獄に堕ちて遥斗くんと会えなくなるなんて絶対に嫌だ。
睨む私と余裕に微笑む大外聖生。こう着状態のような中、音子ちゃんは少し驚いたように瞬いた。


「え、キス…?優さん大外さんとちゅーしたんですか?」
「やめて音子ちゃんそれを口にしないで」
「てことはやっぱり本当なんですね…うわぁ…」
「やーめーて!」
「起こってしまったことはなくならないよ、優さん」
「貴方がやったことですからね!?」


思い出しただけで背中がぞわりとした。いやいや大丈夫だ落ち着いて。もう消毒したから大外聖生の感触なんてものは残ってない忘れて。けど。


「本っ当に最悪!すぐに遥斗くんとキスして消毒したからいいけど、やっぱりなかったことにしたいから大外聖生の存在を消したい」
「「え」」
「え?」


2つの視線が私に向く。大外聖生と音子ちゃんはぽかんとした同じ表情で私を見つめていた。


「2人してどうしたの?」
「どうしたのじゃないですよ…今の発言に問題ありすぎたから驚いているんじゃないですか」
「音子ちゃん驚いてる?」
「はい、めちゃくちゃ驚いてます」


全くそうは見えないんだけどなぁ…


「誰が聞いたって驚きますよ」
「…何に?」
「いや何にって……だって優さん、阿鳥先輩とちゅーしたんですよね?」
「うん、したけど」
「お2人とも兄妹ですよね?」
「そうだよ」
「普通しないでしょう」
「普通にするけど…」


子供の頃からしていたからそれが普通になってしまって、兄妹だからおかしいなんて概念はなくなっていた。遥斗くんも普通に受け入れてくれるから余計に…。まあそれで浮気だと誤解されて遥斗くんが振られたこともあったけど、私的には嬉しい結果だったかな。


「深い方のちゅーもするんですか?」
「たまにするよ」
「おぉ…!美男美女の禁断の恋…!」
「…これ言うと結構引かれるんだけど、音子ちゃんは引かないの?」
「特に気にしませんね。人の恋愛観はそれぞれですし」
「音子ちゃんのそういうとこ大好き!」
「うへへ、ありがとうございます」


私が音子ちゃんとの会話で感動からぎゅーっと抱き締めてる間も、大外聖生は口元に手を当てて黙ったままだった。何かを考えているようで嫌な予感しかしない。ふいに視線が交わって思わずまた音子ちゃんを盾にして身構える。


「……優さん、キスしようか」
「私を通して遥斗くんと間接キスしようとしないで下さい」
「出来れば深い方で」
「死ね」

会話が成立しない!変態とどうやれば会話出来るの!?したくないけど遥斗くんが狙われてるから放っておくわけにはいかない…!


「遥斗くんは私が守る…!」
「遥斗さんだけじゃなくて優さんも必要だよ。君がいなければ意味がない。君と遥斗さんだからこそ意味があるんだ」
「無理!!」
「大外さん…どれだけ阿鳥家のDNA欲してるんですか。正直キモいです」
「君にどう思われようと関係ないさ」
「いや私もキモいと思ってますから。私にも遥斗くんにも今後一切近付かないで下さい」
「大丈夫だよ優さん。僕に全部任せてくれればちゃんと優しくするから。」
「勝手にキスより進んだ会話してない!?やだ!キモい!怖い!やばい!」


頬を染めた大外聖生がゆっくりとこちらに近付いてくる。怖すぎる…!これなら凶悪殺人犯に迫られてる方がまだマシだ。いやこの人も殺人犯だけど!最悪だ!


「遥斗さんと優さんを一緒に……こんな良い方法があるとは思わなかったよ」
「全っ然良い方法じゃない!こっち来るな!変態!痴漢!」


あまりの恐怖に瞳に涙が浮かぶ。それがまた大外聖生の加虐心に火をつけてしまったようでもう表情がやばい。……もし殺しちゃったら地獄は正当防衛とか通用しないのかな…。この恐怖は耐えられない…泣きそう…助けて…


「優さん…」
「…っ!遥斗くーーーーん!!」


こちらに伸ばされた手をはたき落とし、私は悲鳴に近い声をあげながら遥斗くんの元へと逃げ出した。音子ちゃんは本当に恋愛観が特別なようで平然としてるから助けは求められない…!もう私には遥斗くんしかいないんだ…!泣きながら飛びつけばきっと遥斗くんは優しく抱き締めてくれる。それは何よりも安心出来ることだ。そこで元気を取り戻したらまた大外聖生と戦ってやる…!遥斗くんは私のものだし、私は遥斗くんのものなんだから…!

その戦いは、現世に戻ってからも続くのだった。……なんてね。


end
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自分の好みを詰めすぎた。納得のいくものにはならなかったけど…。
阿鳥先輩の妹でいろんな意味で兄が大好き。
大外さんはこういうのが通常運転…だと思ってる。
音子ちゃんは同性愛にも近親相姦にも偏見なさそう。ないよね。好き。
何が書きたかったのかな…?

title:てぃんがあら


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