無自覚に発展していた恋心

雄英に入学してからほとんど会話もしていないのに、春と物間は何かと目が合うことが多かった。
そして今日もまた、ふと視線を向けたときに春と目が合う。すると春はにこりと微笑むのだ。物間が春を見るとすぐに目が合い、毎回このように微笑まれる。


「君さ、よく僕と目が合うよね」


授業が終わり、2人きりになった教室で帰る支度をしながら物間は春に問い掛けた。


「そう?」
「しかも最近じゃなくて、雄英に入った当初からずっと」
「……ふふ、そうかもね」
「何だよ」
「ううん、気付いてたんだなーって」
「そりゃあれだけ目が合えば気になるだろう」
「気になってたから、目が合ったんじゃないかな?」
「は?」


春は口元に手を当ててくすくすと綺麗に笑った。思わずそれに見惚れてしまう。思えば2人きりでこんな風に話したことなど初めてかもしれない。


「だって、私は物間くんが気になるから見てたんだよ」
「見てたって…」
「物間くんだって私を見てたよね?だから目が合ったんだよ!」


嬉しそうに笑う春に、顔に熱が集まっていくのを感じた。よくよく考えればそうだ。自分が見ているから春と目が合う。無意識のうちに春を見ていたのは自分の方だと、自覚した途端にどんどん熱くなっていった。しかし素直に見ていたなど言えるわけもなく。


「ははっ、僕が君を見てただって?自意識過剰も大概にしなよ。僕が君を見る理由がないだろう?」
「うーん。でも私はいつも物間くんを探して見てたよ」
「は、はは…そ、それじゃまるで、君が僕を好きみたいじゃないか」
「みたい、じゃなくて実際にそうなんだけどなぁ」
「……は…?」
「最初は目が合う度に舞い上がってたけど、最近は胸が暖かくなって、やっぱり好きだなぁって嬉しくなるの。他の子と話してるとモヤモヤするけど…」
「…な、何を言ってるんだ…」
「告白、かな」


真っ直ぐに見つめて気持ちを伝えてくる春をまともに見ることが出来ず、物間はばっと視線を逸らした。けれど春は下から覗きこむように物間を見上げる。


「ねぇ、物間くん」
「…!」
「私の告白が、もしもOKなら…これからは私だけを見てほしいな」
「…だったら君も、僕以外見るなよ」
「それって…」
「うるさい」
「…!」


赤くなった顔をこれ以上見られないよう、ぐっと抱き寄せた。抱き寄せる間際に見えた春の耳が真っ赤だったのは気のせいじゃないだろう。余裕そうに見えて必死だったのかと可愛く思えた。
そんな春の反応に、先ほどまで振り回されていた自分が、少しだけ優位に立てた気がして笑みを浮かべる。
きっと気持ちを言葉にすればもっと自分のペースに持ち込めるだろう。そう思うと自然と口角が上がった。悩まされた分、翻弄された分、これからはこちらが振り回してやろうと、その真っ赤な耳に口付けを落とした。


end
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短い!しかも急展開だな!
自分のペースにならないと弱い物間くんだと良いな。自分のペースになればめっちゃ攻めてきそう。って思って書きたかったんだ…!

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