幼馴染と鬼ごっこ
「待ちやがれこんのクソアマーーーー！！」
生徒が登校する時間帯。雄英高の廊下に、肩を跳ねさせるほどの怒鳴り声が響いた。その直後、一陣の風のように吹き抜ける影と、両手からの爆発で空を駆ける少年が生徒たちの目の前を通り過ぎた。
「はっはっはー！待てと言われて待つわけないのに相変わらず勝己はバカだね！ねー、出久！」
「え！？ちょ、僕に振らないでよ！？」
「おいこらデクーーー！！」
「何で僕なの！？」
風の抵抗を受けながらも緑谷は必死に抗議する。星に手を引かれ、あまりの速さに最早両足は地に着かずに浮いている状態で巻き込まれているだけなのに、と。
けれどキレた爆豪も追いかけっこを楽しんでいる星も、全く聞く耳を持たずに廊下を駆け抜ける。
「勝己と2人で鬼ごっこもあれだから出久も誘おうと思ってさ！」
「こんな命懸けの鬼ごっこなんか嫌だよ！」
「大丈夫大丈夫！捕まったら爆破されるだけだから！」
「全然大丈夫じゃないよね！？」
「それに私が捕まるわけないし！」
走るというよりも跳ぶように駆ける星は速度を上げた。
「こら君たち！廊下を走るのは校則違反だぞ！」
朝から騒がしく登校する3人の前に、飯田が立ち塞がった。近くには他のA組の生徒たちもいるが、ほぼ全員がまたか、というように呆れた表情をしている。毎度のことだが正義感の強い飯田が黙っていられるはずがない。
「今すぐ止まるんだ！」
「私は走ってないから私のことじゃないね！」
「いやいやいや走っているだろう！君たちのことだ！速見くん！緑谷くん！爆豪くん！」
名指しで呼ばれた3人だが、止まる気はない。
「私は跳んでるだけだし！」
「僕は引っ張られてるだけだよ！」
「俺は飛んでんだろうが！」
「む…確かに」
納得するのかよ！っと、辺りの生徒たちは心の中でツッコミを入れた。飯田が丸め込まれた隙に、星、緑谷、爆豪は凄まじい勢いで飯田の横を通り過ぎる。あまりの速さに突風が吹き荒れ、女子生徒たちは慌ててスカートを押さえた。
「「おおおお！！速見グッジョブ！！」」
「最低ですわ」
歓喜する上鳴と峰田に女性陣の冷たい視線が突き刺さった。
「ちょこまかうぜぇ！待てっつってんだろ！」
「だから待たないって言ってるじゃん！」
「ぜってぇぶっ殺す…！」
「ねえ星ほんと何やったの！？」
何故爆豪があんなにも怒っているのか、思い付き過ぎて特定が出来ない。爆豪で遊ぶ星も星だが、キレやすい爆豪にも問題がある。大抵緑谷は関係ないのに、何故か毎回巻き込まれてしまうのは腐れ縁というより呪いなのではと疑うほどだ。
「A組は近い！私たちの勝ちだよ出久！」
「え、何？そういう勝負だったの？鬼ごっこじゃなかったの？」
「誰がてめェなんかに負けるかコラァ！！」
「あ、勝己。そういえば昨日の夕飯美味しかったよ！ご馳走様！」
「2度と来るんじゃねえ！」
「じゃあ今度はウチ来てよ！出久もね！」
「今する話じゃないよね！？」
追いかけられながらふと思い出したように口を開いた星に頭を抱えたい気持ちだった。相変わらず自由すぎる。この状況を理解していないのか、理解した上で楽しんでいるのか。恐らく後者だが、だからこそタチが悪い。
スピードを落とさないそんな3人の前に、ふらっと黒い影が現れた。先頭で真っ先に気付いた星が頬を引きつらせる。
「やば、相澤せんせ…」
直後、相澤の鋭い視線が3人を捉えた。
「え、わ、ちょ、…！」
個性を消された突然の急停止に、星は派手にすっ転んだ。もちろん手を引かれていた緑谷は前方へ吹っ飛ぶ。追いかけていた爆豪も個性が消され、前方で転んだ星に激突し、その勢いに2人して緑谷の方へと飛んでいく。大きな音を立ててやっと止まった3人は、まとめてぐったりと重なった。
「クソデブ重いんだよ…！さっさと降りろや…！」
「私のことデブとか言うの勝己ぐらいだよ！この誰もが望む理想体型にケチつけるなんて！」
「はァ！？それのどこが理想体型だァ！？寝言は寝て死ね！」
「ふ、2人とも…いいから…退い、て…っ…！」
星と爆豪の下敷きになり、緑谷は死にそうな唸り声をあげた。けれど2人の耳には届いていない。がんっと額を突き合わせ、至近距離でバチバチと火花を散らす。また個性発動で今度はバトルが勃発するかと思いきや、2人の個性は発動しない。
「…朝からうるせぇぞガキども…さっさと教室入りやがれ」
「だって勝己が！」
「ちげーよ星が！」
お互いに自分は悪くないと反抗するも、もちろん聞き入れてもらえるはずもなく。幼馴染3人は相澤にまとめて縛り上げられ、A組の教室へと放り込まれた。
それを見てクラスの仲間たちは、今日も平和だと頷き合うのであった。
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全然設定とか活かせてないけどこれをシリーズで書きたい。連載案はないけど書きたいネタは多いからシリーズで…！
まだお相手決まってないけどやっぱ幼馴染ってことで出久か爆豪くんかな…でも幼馴染と恋愛がないなら他の子…もしくはifで色々…
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