明智(黒)と正体知ってる同い年

※白じゃなくて黒の方


「おい」
「え…わぶっ」


呼ばれて振り向くと、顔に何かが激突した。痛みに耐えながら落ちそうになったそれを慌ててキャッチする。


「鈍臭ぇ奴だな。ちゃんと取れよ」
「と、取ったよ!」
「ちっ」
「何で舌打ち!?」


何やら不機嫌そうな明智は一切こちらを見ようとはしない。みんなに見せる爽やかな表情が嘘のように、今はいつもの"彼"になっている。気を許してくれているのは嬉しいが、扱いは嬉しくない。むすーっとした表情で明智を見つめる。


「…何だよ」
「何でそんなに不機嫌そうなのかなーって思って」
「お前が鈍いからな」
「鈍臭いとか鈍いとか!酷い!」
「持ってるもんに気付かねぇやつが鈍臭いって言われても仕方ねぇだろ」
「え…?」


そこでやっと自分がキャッチしたものに意識を向けた。そういえば顔に直撃した物を手に持っている。しかも可愛らしいラッピングの物だ。


「え!わ、何これ!」
「遅ぇんだよゴミカス」
「気付かなかっただけなのに凄い言われようだね!?…ていうか、本当にこれ何…?」


手にした物を隅々まで確認するように調べていると、再び舌打ちが聞こえた。そちらに視線を戻すと、険しくしかめられた明智が何か言いたげにこちらを見ている。


「明智くん…?」
「お前は今日が何の日か知らねぇのかよ」
「今日?」


思い当たる日は1つだけ。けれど彼とそれが結びつくとは到底考えられなかった。


「まさか…ホワイトデー…?」
「バカじゃねぇのか」
「あ、はは、そうだよね!そんなわけな…」
「それ以外に何があるっつーんだよ」
「い……え!?」


確かに陸はバレンタインデーに明智にチョコをあげた。日頃の気持ちを込めて。ファンからたくさん届いているのは知っていたけれど、自分もちゃんと渡したかったから。しかしお返しをされるなど夢にも思わなかったせいか、開いた口が塞がらない。そんな反応に明智の顔が歪む。


「んだよ。俺がお返ししたら悪いのかよ」
「え!?い、いや、そういうわけじゃ、なくて…!」
「だったら何だよ」
「あ、明智くんから、お返し…貰えるとは思ってなくて…」
「……」
「う、嬉しいよ!もちろん嬉しい!凄く嬉しい!明智くんが私にお返しくれるなんて…!」
「…調子乗ってんじゃねぇ。他の女へのお返しで余ったのをお前に渡しただけだ」
「うん!それでも嬉しいよ!」
「っ」


屈託なく笑う陸は本当に嬉しそうで。明智はぐっと眉を寄せた。


「大切にするね!」
「食いモンだぞ」
「じゃあ大切に食べるね!」
「……クソムカつくな」
「えぇ!?」


今の会話のどこで苛立たせてしまったのか分からない。お返しを返せと言われたらどうしようと不安がぐるぐる頭を巡る。けれど呆れたように吐き出された明智の溜息にすぐに我に返った。


「嘘に決まってんだろ」
「嘘…?」
「他のお返しはテレビ局で用意させたもんだ」
「う、うん…?」
「お前はそれの価値も分かんねぇのかクズゴミ」


不機嫌そうな明智に言われたい放題だが、意味を理解出来ていない陸には反論が出来ない。ぽんぽんと疑問符を飛ばし続ける陸に、明智はすっと視線を逸らした。


「…他の女に返したのは、大量生産のどこにでもあるクソ不味いもんだが、」
「…?」
「お前のは……違う、やつ、で…」
「違うやつ…?」
「…お、俺が、選んだ、やつ………って、言わせんじゃねぇよクソ!!」


こてんっと首を傾げると、明智は最後まで言葉を紡ぐことなく、顔を赤くし陸に背を向けて出て行ってしまった。残された陸はきょとんとしたまま明智の出て行った扉を見つめる。


「あんなに顔を赤くするほど……怒らせた…?え?私何しちゃったのかな…!?」


思い当たる節がなくあわあわと慌て始める。自分1人で考えていても埒があかない。陸はスマホを取り出し、唯一相談出来る相手のチャットを開いた。


◇◆◇


その後、相談しに行った先で陸の貰ったものは、明智行きつけの高級菓子店のマカロンだということが判明した。それを手にあまりの嬉しさに震えだす。


「あ、あああ明智くんが…わ、私のために…?」
「そうだろうな」
「お、お礼…!え、違う、へ、返事…!?え、ど、どうしよう!」
「さあ?」
「と、とりあえず!好きって伝えてくるね!」


来たときと同じようにバタバタと出て行った陸。ただ違うのは、その頬が赤く染まっていたことだけ。それを見送り、くすくすと笑った。


「とりあえずで告白なんだな」
「あんな捻くれ者と鈍感で上手く行くのかよ?」
「行くんじゃないか?」
「おいおい…そんな無責任なこと言って、それでアイツが撃沈してもワガハイは知らねぇぞ」
「大丈夫だろ」


そこには確信めいたものがあって。


「お互いに同じ気持ちなのは間違いないし、きっと上手く行く」


俺が保証する。そう答えた魔性の男の微笑みに、黒猫は深い溜息をついた。きっと、上手く行ってしまうのだろうと。


end

ーーーーー
ホワイトデー第6弾!ぺごでは第2弾!
明智…夢…?うん!明智夢!
口悪い方も好きなんですけどこっちだといまいちキャラが掴めてないぞ…!暴言が分からない…でも好き。
こっちの吾郎だとくっつくまで大変そうだよねって話(違う)


[ 6/24 ]


back