織田と幼馴染みと巻き込まれるぺご主

いつも一緒に帰っていたのに、最近はずっと1人でどこかに行ってしまう。どこへ行っているかなど簡単に分かるが、それでも置いていかれるのは嫌だった。ここしばらく我慢してきたが、今日という今日は言ってやろうと、陸は秋葉原のゲームセンターへやってきた。

そして予想通り、ガンナバウトをプレイしている織田の姿を見つけ、腰に手を当てて溜息をつく。


「ちょっと信也!ここに来るならどうして私を誘ってくれないのよ!」
「うるさいな。今プレイ中なんだから静かにしてろよ」
「相変わらずゲーム中は口悪いんだから…!」
「ほらお兄さん何やってんの?そこでちゃんと仕留めなきゃ意味ないだろ!?」


そこで陸はようやく気付く。織田が誰かとプレイしていることに。それも子供ではなく大人だ。高校生ぐらいだろうかと、癖っ毛の男性をじっと見つめた。


「信也が…指導してる…?」


ただ対戦しているわけではなく、何やら指導しているように見えた。あの織田が。しかもゲーム中は普段より数割増しで上から目線になり、口も悪くなる織田の言葉を素直に聞いている。
物好きもいるものだと、陸は2人がプレイし終わるのを静かに待つことにした。

対戦後、勝ったのはやはり織田だ。当然の結果に何故だか陸が誇らし気になる。


「信也、楽勝だね!」
「当然じゃん。…って、え、陸?何でここにいるの?」


ゲームに集中して気付いていなかったようだ。その反応に陸は不機嫌になる。


「最近私と対戦してくれないと思ったら、知らない人と対戦してるし…何か指導みたいなことしてるし…」
「まあ、一応指導だからね」
「え、高校生に指導してるの?」
「ゲームに年齢は関係ないじゃん」
「そうだけど…」


陸と織田のやり取りを男性は静かに見つめている。見るからに大人しそうな人物だ。とりあえずここでは他の客の邪魔になると、ベンチに移動した。
2人が椅子に腰にかけると、すっと飲み物が差し出される。指導を受けていた男性だ。陸は不信感を隠そうともせずに男性を見つめる。けれど織田は嬉しそうに飲み物を受け取った。


「いつもありがとう、雨宮さん」
「ちょ、ちょっと信也!知らない人から貰ったものなんて危ないよ!」
「は?何言ってんの。知らない人じゃなくて雨宮さんだよ」
「雨宮…さん…?」


やはり陸にとっては知らない人だった。


「そう。雨宮蓮さん。僕の一番弟子」
「い、一番弟子…!?」


それは聞き捨てならなかった。陸はキッと織田の一番弟子と言われた男性……蓮を睨みつける。その視線に蓮はきょとんと首を傾げた。


「信也の一番弟子は私なのに…!」
「雨宮さん、下手くそだけどセンスあるよ。そのうち陸も簡単に抜くんじゃない?」
「ぬ、抜かれないし!信也の一番弟子は私だもん!簡単に抜かれたりなんかしないもん!」
「何で泣きそうになってるのさ…」


呆れたような織田の言葉にぐっと唇を噛み締め、潤んだ瞳で再び蓮を睨んだ。全く怖くないその睨みに蓮は苦笑する。
陸は椅子から立ち上がり、ビシっと蓮に向かって指を差した。


「信也の一番弟子の座は譲らないんだから!」
「え、えっと…」
「雨宮さん、勝負よ!」
「君と…?」
「陸、お兄さんを困らせないでよ」
「何で信也はこの人の肩持つの!?」
「何でって……そりゃお兄さん良い人だし、センスあるし、色々相談に乗ってくれるし」
「うー!そんなにお兄さんを褒めないでよ!」
「陸が聞いたんじゃん」
「ちょっと黙ってて!私はお兄さんに用があるの!」


陸は再び蓮に向き直った。


「信也の一番弟子の座を賭けて、私と決闘だ!」


小学生の女の子から挑まれた決闘。助けを求めるように織田に視線を向けるが、助けてくれる気はさらさらないようだ。


「今のお兄さんと陸なら良い勝負になるんじゃない?腕試しもかねてやってみなよ」
「あ、ああ…」
「そうと決まれば善は急げ!先に行ってるよ!」


そう言って陸はすぐにガンナバウトへ向かってしまった。蓮は困ったように頬をかく。しかし勝負を受けなければ陸の気は済まないのだろう。仕方なく対戦しようと行こうとした所で、織田が立ち上がった。


「ねぇお兄さん。お兄さんに秘策教えてあげるよ」
「秘策?」
「うん。陸に勝つための秘策」


ちょいちょいと手招きする織田に耳を寄せた。そしてこっそりと陸に勝利するための秘策を聞いた。聞いてしまった。


「今のお兄さんの実力なら、それで陸に勝てるよ」
「そんなこと俺に教えて良いのか?あの子がかなり不利になるだろ」
「僕、陸の負けた顔大好きなんだよね」
「…そうか」


純粋に、けれどどこか悪い笑顔を浮かべた織田。小学生でもうそんな扉を開いてしまったのなら、蓮に言えることは何もない。


そして蓮と陸の対戦は、織田の秘策のお陰で蓮の勝利に終わった。勝敗が出て俯く陸に恐る恐る視線を向ける。


「え…!?」


陸はボロボロと泣いていた。
大人気なくゲームで勝って小学生を泣かせてしまった。流石に蓮は焦る。


「陸の負けだね。てことはやっぱり僕の一番弟子は雨宮さんか」


追い討ちをかけるような容赦のない織田の言葉に、陸は泣きながらキツく蓮を睨み付けた。


「こ、今回は、調子が悪くて、ま、負けた、だけなんだからぁ…!万全の状態、なら…お兄さんなんかに、負けないん、だから…!」
「う、うん、なんかごめん」


思わず謝ってしまった。しかしそれが引き金となり、陸の瞳からはどんどんと大粒の涙が流れていく。


「ぅ、う…っ、つぎ、は…ぜったい、に…まけないんだからぁ…!ぜったい、わたしが、勝つんだからぁ…!うあああああん!!」


泣きながらゲームセンターを出て行った陸に、蓮は困ったように笑うことしか出来なかった。


「どうするか…」
「またリベンジしに来るから放っておいて大丈夫だよ」
「リベンジ?」
「良い練習相手になると思うよ。陸が強いのは事実だから。なんたって、僕の一番のライバルだからね」


誇らし気に、少し頬を染めて。少し織田の気持ちが分かった気がした。織田と陸の関係も。


「虐めすぎるなよ」
「泣かせたのお兄さんじゃん」
「ぐ…」


その後、織田の言った通りリベンジに来た陸を再び返り討ちにしてしまった。
泣かれ、慰め、対戦して、泣かれ、慰め、対戦して……それを何回か繰り返すうちになんやかんやで懐かれてしまい、対戦する2人を不機嫌そうに見つめる織田の姿が目撃されるのだった。


end

ん?これ蓮夢だっけ?なオチになってしまった。けど違うよ!夢主ちゃんも織田くんも同じ気持ちで蓮くんが好きなだけだからって言い張る。
蓮くん取り合いになるはずだったから更におかしいな?って内容だ。
織田くんほんと可愛いよ織田くん

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