ぺご主と後輩

ぐいぐいと腕を引かれ、蓮はどうしたものかと思考を巡らせた。


「雨宮先輩雨宮先輩!私も怪盗団に入れて下さい!」


先ほどからずっとこれだ。今日は逃さないとばかりに腕を掴んでくる力は強い。


「だから俺は怪盗団じゃないって」
「嘘ですよ!三島先輩が言ってるの聞いたんですから!」
「三島が勝手に俺を怪盗団だと思ってるだけだろ?」
「雨宮先輩と三島先輩が改心がどうのって話してたのも聞きました!」
「どこで聞いてたんだ…」
「私の盗み聴きスキル舐めないで下さい」
「そんなスキル上げるな」
「怪盗団の情報収集には大切なスキルじゃないですか!」
「そうだな。俺には関係ないけど」


むむむっと唸る陸だが諦める気はないようだ。一体どうすれば諦めてくれるのか。


「どうすれば私を怪盗団に入れてくれるんですか!」
「俺は怪盗団じゃないから分からないよ」
「雨宮先輩は怪盗団です!しかも雨宮先輩は恐らく怪盗団のリーダーだと推測してます」
「どこの探偵だ」
「あんな怪盗団を貶す探偵王子とか言う人と一緒にしないで下さい!」


膨らんでいた頬が更に膨らんだ。そのハムスターのような顔に笑いながら陸の頬をつつく。


「い、いいいいきなり笑うなんて卑怯ですよ!」
「え?」
「雨宮先輩の笑顔にはどれだけの破壊力があると思ってるんですか…!」
「俺より陸の笑顔の方が可愛くて破壊力あると思うけどな」
「〜〜〜っ!」


何をしても離れなかった陸が腕から離れた。その顔は赤い。面白いものを見つけたように蓮はにやりと笑った。


「そ、その笑い方は嫌な予感しかしません…」
「何のこと?」
「そういう悪い顔じゃなくて可愛い顔の方が良いです!」
「可愛いとは思われたくないんだけど…」
「雨宮先輩は!可愛いんです!そんな可愛い先輩が怪盗団リーダーとか萌えるじゃないですか!ギャップ萌えですよ!」
「ふーん。陸は可愛い俺とかっこいい俺とのギャップが良いんだ?」
「はい!」


きらきらと見つめてくる陸に、再びにやりと笑った。そして陸が反応する前にダンっ!っと壁に足をついて壁際に追い詰める。


「ず、ずっと思ってましたけど、雨宮先輩って足癖悪いですよね…」
「そう?」
「可愛い顔して足癖悪いの最高に萌えます…!」
「…さっきから可愛い可愛いって、可愛いのは陸の方だろ?」
「わわわ私より雨宮先輩の方が遥かに可愛いです!」
「この状況でよくそんなこと言えるな」


足を下ろし、今度は顔の横に手をついた。そのまま距離を縮める。


「陸は可愛いよ」
「や、な、なな何を言って……って、や、あの、雨宮先輩、ち、近い、です…!」
「うん」
「いやうんじゃなくて…!」


はわはわと慌てる陸はやはり可愛らしい。そっとその頬に触れた。


「!?」
「ほら、やっぱり可愛い」


柔らかく微笑むと、陸の顔は真っ赤に染まった。


「や、やっぱり…!」
「ん?」
「やっぱり雨宮先輩は怪盗団ですーーーー!!」


どんっと蓮の胸を押して逃げ出した。あの状況に耐えられるはずがない。心臓が保たない。


(私の心を盗んで行くんだから…!やっぱり怪盗団に決まってる…!)


ダッシュで逃げ去る陸を追うことはせず、その姿を見送った。そして眼鏡を外して笑みを浮かべる。


「オタカラ出現ってとこか。なら最後までちゃんと盗まないとな」


怪盗団だとバラす訳にはいかないが、前歴持ちの自分を転校早々から何故か慕ってくれる陸には心を惹かれている。だから、気持ちだけは伝えたい。否、出来ることなら自分のものにしたい。

改心ともパレスとも何も関係がない、現実世界での盗み。自分一人での盗みになるが、これは絶対に失敗するわけにはいかない。


「怪盗団のリーダーらしく、陸の心を頂こう」


逃しはしない。怪盗の美学にかけて。


end


貴方の心を頂こうって台詞がほんとジョーカーの夢女子には発狂ものの台詞だと思うんだよね。ていくゆあはーーーーと!!
チェンクロコラボ以外でも言ってたっけ?とにかくジョーカーに心盗まれたい。いやもうていくまいはーとされてるけどね!!

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