ぺご主を語る

アジトに集合し、下で蓮が惣治郎の手伝いが終わるまでと待っている間に陸は頭を抱えていた。その様子に竜司は首を傾げる。


「陸、どした?変なもんでも食ったか?」
「リュージじゃあるまいしそんなことあるわけないだろ」
「んだと!?」
「ぐぬぬ…」
「陸?本当にどうしたの?体調悪いなら今日のメメントスは休んでても…」
「絶対行く!!」


バッと顔を上げた陸の必死さに全員は瞬く。


「随分とやる気だな」
「だって最前にいないと蓮の活躍見れないし」
「え?」


そして陸のその発言に更にぽかんとした表情を浮かべる。


「え、ま、待って?蓮が何?」
「蓮の活躍が見たい」
「は!?何で!?」
「何でって何でよ。蓮がかっこいいからに決まってるじゃない」
「いやいやいや!何でお前いきなり蓮推しになってんの!?」
「そんなのこっちが聞きたいわ!!」


ダンっとテーブルを叩いた陸はそのまま突っ伏してしまう。そしてまた唸り声を上げた。


「だってさぁ…出会った頃はパッとしないただの転校生だったのにさぁ…」


ぽつりぽつりと喋りだしたかと思うと、どんどん感情が昂ったように声が大きくなっていく。


「見た目地味なのに何故か滲み出る色気とか、頼りなさそうに見えるのに無駄に溢れる漢らしさとか、何やらかしても笑って許してくれる懐の深さに見惚れるほどの器用さに…!どうしてやることなすこと全部あんなにかっこいいの!?」


再びダンっと力強くテーブルを叩いた。今まで溜め込んでいたものを吐き出したように息を乱している。陸の暴露に未だ驚きを隠せない怪盗団メンバーが言葉を失っている間に陸は更に続けた。まだ熱はおさまらないようだ。


「だから蓮の戦闘を間近で見たいって思うのもしょうがないじゃん!?ていうか戦闘中に敵を挑発してるの見たことある!?ちょいちょいって手招いてるんだよ!?あの挑発的な態度にときめかない訳がない!しかもそのときの悪い顔と言ったら…!あの表情ちゃんと見てる!?」
「いや見てねーよ!戦闘中に何見てんだお前は!」
「蓮に決まってるでしょ!!」
「アホか!戦闘に集中しろよ!!つかそれで前に回復遅かったのか!?俺死にかけてたのに!?」


やっとツッコミを入れることが出来たのは竜司だ。以前の戦闘で陸に回復を頼んだにも関わらず、なかなか聞き入れられずにギリギリになって回復されたことを思い出す。


「だってちょうどジョーカーがアタックでクリティカル出してたから見逃すわけにはいかなかったし」
「俺は弱点攻撃決められてダウンしてたっつの!」
「ごめん竜司は見てない」
「おっまえふざけんなよ!?」
「は?大真面目だけど」
「余計タチ悪ぃわ!!」


2人の言い合いに他のメンバーもやっと陸の言葉を理解し始めた。


「ってことは、陸は蓮が好きってこと?」
「…不本意だけどそうみたい」
「不本意って…」
「だって気付いてたらこんなにハマってたんだもん…だから私が聞きたいよ、どうしてこんなに……す、好きなのかって…」


視線を落とし、すっと頬を染めた陸は今まで見たことがないほどに恋する乙女だった。杏は楽しそうににこりと笑って陸を見つめる。


「ふーん。陸が蓮をねー?」
「シャドウ脅迫してるの見たときとかさ…やばいよね…威嚇射撃して脅してお金出させておいて更に、もっと出せるだろ?って…あれはほんとやばかった…何か…新たな扉を開きそうだった…」
「開いちゃダメ!普通に恋して!そっちに惹かれるのはいろんな意味でやばいから!」


陸の肩を掴んでぐらぐらと揺らす。友人のそんな性癖は流石に聞きたくはないし開拓されてほしくもない。


「はぁ…もう蓮のことで頭いっぱいでそのうち竜司のこと見殺しにしそう」
「俺限定かよ!」
「こりゃ重症だな」
「本当にね。今まで全然気づかなかったわ」
「そりゃね。もちろん隠してるし」
「そんな抱え込んでんのに告白しないのか?蓮も意外と同じ気持ちかもしれないぞー?」
「いやいや双葉、気休めはいいよ」


力なく笑った陸だが、周りは気休めだとは思っていない。少なくとも蓮は陸にかなり好意的のはずだ。いつも陸を庇ったり、回復したりは仲間に任せずに蓮が率先してしているのだから。
そこで2人は実は両想いなのではという疑問が浮かぶ。それを確認する方法は、蓮に聞くしかない。


「もうさ、別に付き合うとかじゃなくて、蓮の隣で戦ってその活躍を見ていられるだけで幸せなんだよね。普段の蓮も、ジョーカーとしての蓮も好きだから、傍にいられるだけでいいの」
「お前大丈夫か…?いつからそんな健気キャラになったんだよ?全然似合わねーぞ?むしろ怖ぇ」
「……モルガナ、竜司にガルダインかましたら杏の秘蔵写真あげる」
「なに!?アン殿の…!?」
「「やめろっての!!」」


声を揃えて陸を止める竜司と杏に、取引に食い付きかけるモルガナ。いつも通りの光景に真はやれやれと溜息をついた。


「ごめん、遅くなった」


騒がしい屋根裏部屋に戻ってきた蓮は暴れる4人を見て首を傾げる。モルガナを抱えて走る陸と、それを追いかける竜司と杏。まるで状況が理解出来ない。そんな蓮のきょとんとした表情に、陸のモルガナを抱える腕に力が入り、モルガナの苦しそうな呻きが聞こえた。


「か、可愛さまでも持ち合わせて…!卑怯だ…!」
「何のこと?」
「何でもない!蓮、今日の前線メンバーに私入れてね!」
「え?俺は陸が隣で戦うのは嬉しいけど…2日続けてで大丈夫?」
「…っ、だ、大丈夫!そんなこと言ったら蓮は毎回でしょ!私だって蓮の隣で戦えるの嬉しいんだから気にしないで!」
「うん。ありがとう」


にこりと微笑んだ蓮に、はにかむ陸。付き合っているような雰囲気が漂っている。


「今日爆発してぶっちゃけた分、隠しきれなくなってるかもなー」
「それともこれが日常で、陸の気持ちを聞いたから今までの光景が特別に見えてしまうのかもしれないわね」
「なるほど。変わったのはあいつらではなく、俺たちの見方と言うわけか」
「どっちにしろ迷惑な話だぜ」


陸の腕から抜け出したモルガナは大きく息を吐いた。そして仕切り直すように声をかける。


「おい。今日のターゲットについて話し合うぞ」
「ああ」


怪盗モードへとなった空気に、色恋の話は持ち出せなくなる。ターゲットを改心させるまで蓮に陸のことを聞くのは無理そうだと、杏は作戦に耳を傾けた。
近いうちに必ず蓮に陸のことをどう思っているのか聞いてやろうと決意して。


end
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ただジョーカーのかっこよさを語りたかっただけです私が!!いや彼のかっこよさが語り切れるわけはないんだけど…!
この夢主は竜司の幼馴染的な感じかな。だから軽口叩き合えてる…といいな。
ほんとハイスペックジョーカーはやばい…

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