ぺご主と攻めに弱い子

「本当に顔が良い」
「ありがとう」
「そういうとこも好き」


蓮の頬を両手で包み、至近距離で見つめながら会話する陸に怪盗団メンバーは呆れていた。


「本当に陸は蓮のこと好きだよね。ていうかイケメン好き?」
「イケメン好きは否定しないけど、イケメンなだけじゃ嫌。私は全ての要素で蓮が1番好きなの」
「イケメンだけじゃ嫌って…それって性格のことか?じゃあ明智はどうなんだ?」
「明智くんも顔は良いけど性格がちょっと…」
「え?僕結構周りから好感持たれるんだけどな」
「うん、ごめん。そういうとこが嫌」


蓮から離れ、冷たい視線でばっさりと切る。そんな陸の態度に明智は苦笑し、他は少しだけ納得している。対して興味もないのか、明智に向けられていた視線はすぐに蓮へと戻った。


「うん、かっこいい」


見ているだけで目の保養になり癒される。嫌なこと全てが吹き飛ぶような気持ちになり、うんっと満足気に頷いた。そんな 陸に蓮は笑う。


「俺も陸のそういう素直なとこ好きだよ」
「…っ、…そ、そういうのいいから」
「?」


にこりと伝えれば、ふいに視線を逸らされる。些かその頬が赤いことに気付き、蓮は首を傾げた。予想外の反応だ。それに気付いたのは蓮だけではないようで、竜司が驚いたように目を瞬かせる。


「え、なに?お前まさか照れてんの?あんだけ蓮に告ってるくせに?」
「…うるさいバカ本」
「バカ本っておまっ」
「なるほど、図星か」
「なになに?攻めるのはいいけど攻められると弱いってやつ?」
「陸にそんな一面があるなんて知らなかったわ」
「ギャップ萌えだな!わたしはそういうの大好物だぞ!」
「陸ちゃん可愛いね」
「み、みんなしてうるさい!別にそういうのじゃないから!」


明らかに動揺している陸はやはり珍しい。いつもクールな姿からは想像出来ない動揺具合に周りは面白がる。もちろん蓮も例外ではなく、すっと目を細めた。


「可愛い 」
「は!?」


呟く蓮に大袈裟に反応する。顔真っ赤にし、蓮を見つめるその瞳は揺れていた。それがやはり可愛いと蓮はにこりと微笑む。


「可愛いよ、陸」
「ちょっと、や、やめて…」
「思ったこと言ってるのに?」
「言わなくていいから…!」
「陸だっていつも俺に言うだろ?」
「そりゃだって…言いたくなっちゃうから…」
「俺も言いたいから言ってるだけ」
「…っ」


先ほどとは逆に頬を両手で包まれ、蓮に至近距離で見つめられる。普段自分がやっていることのはずなのに、やられ側になると尋常ではないほどに心臓がドキドキと鼓動した。蓮の瞳も表情も、どこかいつもと違って愛しいものを見つめているようで目が離せなくなる。


「可愛い」
「だ、から…!」
「俺は陸の顔も性格も、それを含めた全てが好きだ」
「…っ」
「だからこれからも、よそ見しないで俺だけ見てて」


そのまま額をくっつけられ、陸はぎゅっと目を閉じた。顔から火が出そうに熱くなり、吐息が当たるほどの距離に目を開けられない。2人きりだけではないにも関わらずそんなことをする蓮たちに、周りの一部は呆れたように溜息をついた。


「やれやれ、見せつけてくれるよな」
「いいぞもっとやれー!明智は失恋だな!」
「ふふっ、それは残念。けど略奪愛って知ってるかい?」
「仮にも探偵が略奪って…」
「僕も一応怪盗団の一員だからね。何もおかしいことはないだろう?」
「おまえ都合のいいやつだな…」
「使えるものは使わないと」


茶化す双葉に微笑む明智。この状況を楽しんでいる姿に真は小さく息をついた。竜司たちも呆れている。けれどそんなやり取りを気にした様子もなく、蓮と陸は2人だけの世界だ。


「陸、返事は?」


俺だけを見てて。その答えを求めて囁く。額が離れたのを感じ、陸がぎゅっと瞑っていた目をゆっくりと開くと、真っ直ぐに見つめてくる蓮と視線が交わった。けれど逸らさないよう、まだ羞恥の残るまま蓮の瞳を見つめ返した。ごくりと息を呑み、意を決して口を開く。


「……最初から蓮のことしか見えてないよ」
「うん」
「…これからも…きっとそうだから」
「うん」
「…………蓮が、好き」
「ありがとう」


俺も好き。っと返した蓮のせいで甘い雰囲気が2人を包む。これからは陸が一方的に褒めるのではなく、形勢が逆転しそうだと少しだけ面白そうに2人のやり取りを見守ることにした。
けれど、甘すぎる蓮の攻めに呆れるのは数日後。他所でやれと思うのに時間はかからなかった。


end
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蓮くんが好きすぎて蓮くんを大好きな夢主しか書けない病にかかってます。
夢主を好きな蓮くんで段々惹かれる夢主とか書きたいのにもう最初から好感度MAXしか書いてない…!

[ 16/24 ]


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