ぺご主と幼馴染み2

時系列とか関係なくみんないます。
詰め込みすぎて落ちがない。

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「ねぇ蓮ー、どっちの服が良いかな?」
「どっちも可愛いよ」
「蓮はすぐそういうこと言うんだから…。女の子は服選びも本気なんだよ!」
(俺も相当本気だったんだけど)


毎週末に泊まりに来ていた陸は、夏休みになると当然のように毎日屋根裏部屋に泊まりに来ていた。そして明日みんなで出掛けるための服を選んでいる。段々と陸の私物が増えていく屋根裏に、まるで同棲しているみたいだと笑みが溢れそうになった。けれど陸の態度も反応も相変わらずで。


「うーん…たぶん杏はこういう服だよね…じゃあ私はこっちの方が…あ、でもこれだと真とかぶるかも…」


鏡の前でああでもないこうでもないと選ぶ姿は見ていて微笑ましい。それが自分のためならと何度思ったことか。


「ねぇモルガナはどっちが良いと思う?」
「ワガハイより蓮に聞いた方が良いんじゃないか?」
「蓮は何でも可愛いって言うからダメ」
「お世辞じゃないと思うぞ」
「……」


モルガナの呆れたような声音にちらりと蓮に視線を向けた。視線が交わるとにこりと微笑まれる。この笑みできっとたくさんの女性を落としてきたのだろうと見惚れてしまった。自分も落とされたその1人なのだから。


「……やっぱり、蓮と釣り合うようにしたいし」
「え?」
「何でもないよ!うーん、これにしようかな!」


言いたいことは言い合い、以心伝心すらする仲なのに、お互いの想いはお互いに伝わらないままで。もどかしいその距離にモルガナは深い溜息をついた。


「水着はこれで…」
(あれを陸が着るのか…)


真剣な眼差しで水着と陸をじっと見つめた。脳内で水着姿の陸は容易に想像できる。蓮はぐっと小さくガッツポーズをした。


「蓮?どうかした?」
「いや。それより早く寝ないと明日起きれないぞ」
「え?あ、本当だ!もうこんな時間!」


ぱっぱっと明日の支度を済ませ、陸はベッドに腰掛ける蓮の隣に腰を下ろした。むき出しの腕が触れ合い、どくりと蓮の心臓が跳ねた。もちろんそれはいつものポーカーフェイスに隠す。


「…明日、みんなで海、楽しみだね!」
「……ああ」
「……寝ようか」
「…そうだな」


蓮が下に引いた布団に移動しようとすると、陸が蓮の服をくいっと引っ張った。蓮はきょとんと陸を見つめる。


「……あの、さ、蓮…」
「何?」
「……いつも、蓮は私にベッド貸してくれるよね」
「当然だろ。陸を床に寝かせるわけにはいかない」
「…でも、私が勝手に押しかけてきて泊まってるだけなのに、悪いなぁって…思って…」


ちらちらと視線を逸らしながら、うっすらと頬を染めて会話をする。1番言いたいことを直球で言わない姿に、モルガナがもどかしい思いで頭を抱えた。


「悪いって…今更そんなこと気にしなくていいよ。俺が好きでやってることだから」
「蓮は優しいからそう言うと思ったけど、そうじゃなくて、その、蓮も…ベッド使わない…?」


つまり、一緒に寝ないか。遠回しにそう伝えるだけでも心臓がばくばくとうるさく鼓動した。恋人でもないのに何だと思われてしまうかもしれないが、好意に気付いてくれるのではと、少しの期待を込めて。


「俺はいいよ。陸が使っていいから」
「………う、ん。分かった…ありがとう、蓮」
「どういたしまして」


にこりと微笑まれ、蓮は下に敷いた布団に潜ってしまう。おやすみっと最後に発せられた言葉に小さく返事をし、陸も蓮のベッドへと身体を沈めた。


((……はあぁぁぁ))


そしてお互いに心の中で大きな溜息をつく。


(何だよ今の誘い…!もう少し自分が女だって自覚持ってくれ…!というか俺はそこまで男として認識されてないのか…)
(私なりの精一杯のアピールだったのに全然気付いてくれないんだけど…!服だって水着だって蓮好みなの選んだし、さりげなくボディタッチしても動揺すら見せてくれないし…!私ってそんなに魅力ないのかな…)


はぁぁぁぁっと、深い溜息が、暗い屋根裏部屋に響き渡った。自分のことにいっぱいいっぱいで相手の溜息など聞こえていない2人。唯一2人の気持ちを知りながらその溜息を聞いたモルガナは、誰よりも深く呆れた溜息を漏らすのだった。


◇◆◇


翌日、窓からザーザーと雨の降る空を見上げ、陸は深い深い溜息をついた。


「嘘でしょ…天気予報は晴れだって言ってたのに…」
「海は無理そうだな」
「うぅ…」


悲しそうに項垂れる陸の頭をぽんぽんと撫でて慰める。あれほど楽しみにしていたのを知っているからこそ、その気持ちは痛いほどに伝わっていた。


「せっかくみんなで海…楽しみにしてたのになぁ…」
「仕方ないよ。またの機会にしよう」
「……うん、そうだよね」


再び深い溜息をついた所で、2人のスマホが鳴った。つまりはチャットだ。顔を見合わせてから2人はチャットを開く。そこには竜司からのメッセージが入っていた。


竜『海は無理そうだな』
杏『だね。どうする?みんな今日は予定ない感じ?』
祐『俺はないな』
双『私もヒマだ』
真『海に行く予定だったからね。それ以外は入れてないわ』
春『雨降るとは思ってなかったもんね』
明『ということは、みんな同じかな』


そのやり取りに陸はうんうんと何度も頷いた。相手には見えないのに返信せずに頷く姿が愛しくなり、蓮は頬を緩める。


蓮『だな。俺も陸も予定はない』
竜『その言い方!やっぱりお前ら2人でいんのかよ!朝まで一緒って!!リア充か!!』
陸『朝まで蓮と一緒の陸はリア充したかったので海以外でもみんなとお出かけ希望ですー』
祐『朝まで…?お前ら、もうそういう関係になったのか?』
明『もうと言うかやっとじゃないかな?』
双『お、お!それは是非ともkwsk!』
真『はいはいみんな落ち着いて。とりあえずルブランでどうするか話合う?』
蓮『こっちは問題ない』
竜『いや!それよりさ!どうせなら夏休みの宿題1つ終わらせちまわね?』


竜司の提案に陸と蓮は顔を見合わせた。一体何を言っているのだ、と。


竜『とりあえず池袋駅に集合な!』


何の説明もないままに、断る理由もなく全員がOKの返事をした。陸も返信し終わると、パッと勢いよく立ち上がる。


「よし!海は行けないけどみんなと遊ぶことには全力を注ぐよ!」
「ああ」


可愛らしくやる気を見せる陸を微笑んで見つめていると、突然目の前で服を脱ぎ始めた。慌てて目をそらす。


「着ていく服の変更はなしだから、昨日選んだやつ……あ、モルガナ、その服取って?」
「…おいおい…男の部屋でいきなり脱ぐやつがあるか?」
「そういえばモルガナは男の子だったね。でも杏にしか興味ないでしょ?」
「いやワガハイの話じゃなくて…」
「え!?モルガナ実は女の子!?」
「ちげーよ!!ワガハイは男だ!!」


モルガナを抱き上げて笑う陸に、蓮の中にはモヤモヤとした感情が募って行く。もういっそ目の前の薄着の陸をこの場で襲ってやろうかと考えるが、楽しそうに笑う陸の笑顔に何とか理性を総動員して踏み止まった。


「蓮も早く着替えて!行こ!」
「……ああ」


溢れる想いを溜息に流し、蓮も準備を始めた。


◇◆◇


「……何でプラネタリウム…」


やってきたのは池袋のプラネタリウム。夏休みの宿題に天体観測をしようと言い出したのを聞き、どこかへ遠出するかと思えばこれだ。全員が呆れたように竜司を見つめる。


「星なんてどこで見たって一緒だろ?これでみんなと遊べて宿題も出来るなら一石二鳥じゃね?」
「あんたね…」
「東京で星の見える場所なんてあるのかと思ったら、まさかプラネタリウムだったとはね。君の発想は相変わらず僕には理解出来ないよ」
「文句あるならお前は帰っても良いんだぞ」
「陸がいるからそれだけでここにいる価値はあるかな」
「へ!?」


突然明智に微笑まれ、すっと頬が赤く染まった。別に異性として好きではないが、整った顔立ちの明智は普通に格好良く見えるのだ。動揺するのは仕方がない。


「……プラネタリウム、さっさと行くぞ」
「え、ちょ、蓮?」


陸の手を掴み、ずんずんと進んでいく蓮。それを見送り、全員は苦笑した。そこで春が全員が疑問に抱いていたことを口に出す。


「明智くんは本気で陸を狙ってるの?それとも2人のキューピッドのため?」
「さあ?どっちだろうね」
「ぐぬぬ…その笑顔はどっちだ…」
「双葉にも分からないんじゃ私たちにも分からないわね。2人は先に行っちゃったし、仕方ないから私たちも行きましょう」
「ふむ…プラネタリウム…なかなかに刺激がありそうだな」
「これで宿題1つ消化だぜ!」
「あーあ、どうせなら海で綺麗な星空見たかったなー」
「なに乙女みたいなこと言ってんだよ」
「乙女だっつの!」


夏休みでいつもより混む中を、どこよりも騒がしくしながら怪盗団メンバーは進んで行った。

プラネタリウムへの行列を並び、待ち時間には女性陣は恋愛の話に花を咲かせる。気にしないフリをしながら耳を傾ける蓮に明智はくすくすと笑った。


「気になるかい?」
「……当たり前だろ」
「幼馴染なら本人に聞けば良いんじゃないか?」
「それが出来たらこんな苦労はしてない」
「つか、夏休み中ってずっと泊まってんだよな?いつまで我慢出来るか楽しみだな!」
「全然楽しくない…毎日が拷問だ…」
「ならいっそ襲っちゃうとか」
「……考えた、けど、やっぱりそれは出来ない」
「紳士なのかヘタレなのか……君が早くしないと本当に僕が貰っちゃうよ」


涼しい室内で、2人の周りだけ熱気が上がった。静かにバチバチと火花を散らす様は夏休みに入ってから一体何度見ただろうか。


「みんな!順番回ってきたよ!行こ!」


陸の呼びかけに2人は睨み合いを止め、穏やかに微笑んで陸に返事をする。何度見ても変わり身の早さに驚くしかない。しかしそんな2人に気付くことなく、陸は中へと進んで行った。全員もそれに続く。


「…そういえば私、プラネタリウムって初めてかも」
「マジで?地元でも行かなかったのかよ?」
「東京みたいに何でもあると思わないでよ…」
「だな。俺もこっちに来て初めてプラネタリウム入ったよ」
「え、蓮はもう来たことあったの?」
「ああ」


確か三嶋と祐介と異色の男3人で見た気がすると乾いた笑いが漏れる。けれど陸は途端にむーっと唇を尖らせた。


「……初めては、蓮とが良かったのに」
「!?」
「初めてのことは、蓮と一緒に経験したかったのに、初めては私だけかぁ…」
「ちょ、陸!言い方!言い方考えて!!」
「え?」


固まる蓮に、日頃の蓮の大変さが思い知らされた。これで毎日我慢しているのだと思うと、やはり我らがリーダーは凄い人物なのだと実感する。


「……陸、始まるよ」
「あ、うん!蓮は私の隣ね!」
「もちろん」


いつもの笑顔で答え、陸と蓮は席についた。この2人の隣に座っていいものかと遠慮しながらも全員が席につく。そしてしばらくすると、辺りは暗くなり、ナレーションと共に星空が浮かび上がった。きらきらとした表情で映し出された星空を見上げる陸を見つめ、蓮は表情を和らげた。海に行けなくなり悲しんでいたが、楽しんでいるようで安心する。


「……やっぱり、陸の笑顔が1番だな」
「…!」


そっと陸の手を握ると、驚いた陸の視線が蓮に向けられる。蓮はにこりと微笑んだ。


「海は、また違う日に行こう」
「え、う、うん…」
「出来れば2人きりで」
「…!」
「本物の星空も、2人で見れたら良いな」
「……うん。約束、だよ?」
「ああ、必ず守るよ」


星空も見ずに2人は見つめ合い、誰にもバレないように指を絡ませて手を握り合った。その頃には、お互いに気持ちを伝え合っていることを願いながら。

end
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アンケのネタを全て詰め込もうと思ったら全てが中途半端になったという…海もお泊まりも天体観測もプラネタリウムも…!久しぶりなのに…!
とりあえず無駄に長くなりすぎたから今度は短くちゃんと書きたい。


[ 10/24 ]


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