京介くんに義理チョコ

〜京介くんに義理チョコ〜


「おはよー!京介くーん!」


玉狛に飛び込んできた春はがばっと烏丸に抱き着いた。烏丸は難なく抱きとめる。


「おはよう。朝からどうした?」
「どうしたってもちろん毎年恒例のものだよ!」


お互いに抱き合ったままで、春はにこにこと烏丸を見上げた。そして鞄から可愛らしい袋を取り出す。


「いつもありがとう、京介くん!」
「ああ、こっちこそ。毎年ありがとうな」


優しく微笑んだ烏丸に春も微笑む。


「今年は日曜日で良かったよ。いつも学校で京介くんいっぱい貰ってるから渡すの気が引けたし」
「どんなに貰ってても春からも貰うから気にするな」
「貴重な食料だもんね?」
「そこまで飢えてない」
「でも貴重でしょ?」
「……まあな」
「ほら!」


優しい烏丸はどんなにたくさん貰っていても必ず春のものを受け取ってくれると知っている。普段あまり変わらない表情を和らげ、微笑んでくれる。それが見たくて毎年渡すのだ。
いつもいつも、お世話になっている大切な親友に。


「ねぇねぇ京介くん!食べてみて?今年は京介くんにも負けない自信作だよ!」
「最初の頃は酷かったからな」
「そ、それは小学生のときね!」


確かに初めて烏丸に渡したときは悲惨な出来になったのを覚えている。

けれど、それでも烏丸は完食してくれた。絶対まずいはずのそれを、次も楽しみにしてると、食べてくれた。
そのときのことを思い出してはにかむ。


「今年はちゃんと美味しいよ!」
「ああ、最近上達しているしな」


そう言いながら烏丸は袋を開けた。中のチョコを口へ放り込む。もぐもぐと食べる烏丸をじっと見つめた。

その視線を受け、烏丸は小さく微笑む。


「自信作って言う割に不安そうだな」
「…京介くんは木崎さんたちの料理で舌肥えてるから」
「関係ない。ちゃんと美味いぞ」
「本当?」
「ああ。春のは毎年美味い」


その言葉に春は不安げだった表情を綻ばせた。



「今年はちゃんと太刀川さんに渡せるな」
「うん!」


はにかんだ春に烏丸も表情を和らげる。そして手を伸ばしてその頭を優しく撫でた。


「頑張れよ」
「…うん!ありがとう京介くん!大好き!」


恋人のような甘い雰囲気がリビングに広がり、中に入れずにいる人物たちがいることも知らずに微笑み合った。


→蒼也くんに義理チョコ

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