嵐山さんに義理?チョコ
〜嵐山さんに義理?チョコ〜
「な、な、なんで、用意、しちゃったんだろう…」
今まで渡したことなどないのに、何故今年は用意してしまったのか。自分に問いかけても答えはない。
「嵐山さんは、ボーダー内でも一般市民からもたくさん貰ってるんだから、わたしが用意する必要とかないのに………でも、たくさん貰ってるからわたしがあげてもバレない…よね…?」
本人に気付かれなくても、渡すだけで良いと思えた。渡せるだけで、満たされる気がする。
「…みんなこんな気持ちで渡してるのかな」
思わず苦笑した。何を言っているのかと。
「とりあえず、嵐山隊に置いてくれば良いよね」
「嵐山隊に何か用事か?」
「!?」
後ろから声をかけられ、びくりと肩を跳ねさせた。ギギギっと恐る恐る振り返る。 そして視界に入った人物に口をパクパクとさせた。
「あ、あああ嵐山さん…!」
「ああ!嵐山隊がどうのって聞こえたが、何か用事か?」
「あ、いえ、よ、用事、というわけでは…!」
「ん?」
こてんっと首を傾げた嵐山に心の中で静かに歓喜した。こんなに素敵な人がいるものかと。
「あ、嵐山さん、は…たくさんのチョコ貰って、どんな気持ち…ですか…?」
「ああ、今日のバレンタインの話か!もちろんたくさん貰えるのは嬉しいぞ!」
「ど、どれだけ多くても…ですか…?」
「多ければ多いほど、それだけの人の心に残れているということだからな!」
眩しいほどの笑顔と優しさの溢れる言葉にほわーっと胸が暖かくなった。かっこいい。どこまでもかっこいい。やはり素敵な人だ。
この人なら、渡しても迷惑だとはきっと思わない。そっと息を吐き出し、紅葉はゆっくりとチョコを差し出した。
「あ、の……これ…」
「これは…チョコか?」
「……は、い」
嵐山を見れずに頷くと、差し出した手ごと握られた。ぶわっと身体中に熱が走り、思わず顔を上げて嵐山に視線を向ける。
すると、嵐山はとても嬉しそうな笑顔を浮かべていた。その笑顔にまた胸が暖かくなる。
「ありがとう!紅葉!」
「…あ、い、いえ…」
「紅葉から貰えるとは思わなかったからな!凄く嬉しいぞ!」
「う、嬉しい…ですか…?」
「もちろんだ!紅葉から貰えて嬉しくないわけがないだろう!」
偽りのない真っ直ぐな言葉に何とも言えない気持ちが広がる。口を引き結び、にやけそうになる顔を我慢した。
「大切に食べるからな!」
「……はい!」
満たされた心に、やはりこの人に渡して良かったと思った。昔に本命として渡していたなら、きっとこんな気持ちにはなれなかったから。
嵐山につられるように、紅葉ははにかむように笑みを浮かべた。
→二宮さんに本命…チョコ
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