誕生日を祝ってみる〜実践編〜


待ちに待った匡貴さんの誕生日当日…ここまで私は匡貴さんとの接触をなるべく避けてきた…!1日3回くらいしか会わないように我慢した…!それも今日までだよ!


「っというわけでいざ実践!」
「色々とツッコミたいことが多いんですが」
「良いよ良いよ!何でもどーぞ!」
「間に合わなくて誕生日当日になったからいきなり実践にしましたよね?」
「新ちゃんは本番に強い子だと思って!」
「いや答えになってません…そもそも尾行に1度も成功していないのに何で実践…」
「匡貴さん来た!!新ちゃん位置について!」
「……」


遠くに匡貴さんの気配を感じて新ちゃんに合図する。無言なのはきっと集中してるからだね!やる気十分!


「雅人くんの尾行成功させた新ちゃんなら大丈夫だよ!」
「ですからあれは成功とは呼べないかと…」
「あれを成功と呼ばずに何と呼ぶの!」
「失敗です」


間髪入れずに答えた新ちゃんはやっぱり成長してる…!ツッコミが冴え渡ってるね!この成長はやっぱり匡貴さんに見てもらわないと!最高のプレゼントだよね!


「新ちゃん!新ちゃんなら大丈夫だから自分を信じて!」
「…はあ」
「匡貴さん見えたよ!それじゃ尾行開始!」


気の抜けた返事をした新ちゃんの背中を叩いて気合いを入れ、私たちは匡貴さんの尾行を開始した。前はバレちゃったけど今回はきっと大丈夫!新ちゃん頑張ってたんだからね!


「匡貴さんに尾行がバレずに隊室まで辿り着けたら成功だよ!そこで新ちゃんは最高のプレゼントになるから私が匡貴さんにプレゼントするの!本当に良い案だよね!」
「物扱いされている身としては何とも…」
「物扱い!?新ちゃんを!?誰そんなことしてるの!」
「今まさに目の前にいますね」
「匡貴さんは冷たい態度多いけど本当は優しいしきっと照れ隠しだよ!」
「いやすり抜けてます」
「何が?」
「……何でもありません。尾行続行しましょう」


新ちゃんからそんなことを言うなんて…!すごい成長で泣いちゃいそう…!そうだよねそうだよね!この日のために頑張ってきたんだもん!成果を見せないとね!
……と、そんなこんなで二宮さんが隊室に入って行くのを見届けて私は両手を上げた。


「新ちゃーん!大成功だよー!」
「…そうですね。本当に気付かれないとは思いませんでした」
「特訓の成果だね!」
「……そう、みたいですね」


困ったようにはにかんだ新ちゃんはいつも大人びている表情とは違って、年相応で可愛かった。そんな顔されたら私も嬉しくなっちゃう!


「よーし!それじゃネタバラシして匡貴さんにプレゼントしよう!」


嬉しい気持ちのまま新ちゃんの手を引いて二宮隊の隊室に突撃!少し驚いた匡貴さんに新ちゃんをプレゼントです!って言ったら「辻は元々うちの隊員だろ」ってツッコミ頂きました!今日も素敵!!
けどそこで気付いちゃった…!


「隊室の飾り付けしてない…!」
「しなくていい」
「新ちゃんをプレゼントすることだけ考えて肝心の匡貴さんお誕生日パーティーの準備するの忘れてた!!」
「だからしなくていいっつってんだろうが」
「みんな招待して盛大なパーティーしないと!!」
「やめろ」


今から準備してたんじゃお祝い始める時間遅くなっちゃうしどうしよう…!私としたことが…!私が悩んで唸り声を上げていると新ちゃんが「あの…」と控えめに声を上げた。


「今から準備も間に合いませんし、外食で良いんじゃないでしょうか」
「外食?」
「焼肉、最近行ってませんよね」
「!さすが新ちゃん!それにしよう!焼肉!」


焼肉なら二宮さんの好物だし準備に時間かかることもないし!匡貴さんと2人きりで甘いお祝いは夜にするから昼はみんなでワイワイした方が良いに決まってるしね!


「じゃあ焼肉に行きましょう!今日は匡貴さん払わなくて大丈夫ですからね!」
「余計な気使うな。それくらい自分で出す」
「人のお金で食べる焼肉は格別に美味しいんですよ!ね、新ちゃん!」
「え?あ、は、はい」
「だからここは出させて下さい!お誕生日なんですから!」
「だからってお前ら学生2人に払わせるわけにはいかねぇだろ」
「2人じゃなくて4人なので大丈夫ですよ!」
「「4人?」」


匡貴さんと新ちゃんの声が重なる。もう2人して可愛いんだから!頬が緩んだまま私は隊室の外を覗く。


「もちろん!そこにいる公平くんと澄晴くんにも出してもらうよ!」
「げっ」
「うわバレてたとか」
「甘い甘い!最初から私たちの後ろにいたことなんて分かってるんだからね!」
「マジかよ…」
「その無駄なハイスペック本当にムカつくなー」
「だって公平くんも澄晴くんも私のこと大好きーってオーラが溢れ出て…」
「「それはない」」


2人して照れ屋なんだから!でも公平くんと澄晴くんより匡貴さんと新ちゃんの方が可愛いけどね!


「つかおれも払うんすか?二宮隊の集まりなのに?」
「1番収入あるA級が文句言わないの!」
「まあ、そりゃそうすけど…」
「公平くんだって匡貴さんにお世話になってるでしょ!」
「いやむしろお世話してたのおれの方なんで」
「じゃあそんな公平くんをお世話してる私のためにも出してね!」
「……すげー言いたいことあって言葉にならねぇしなんか納得いかねぇ…」
「あ!4人じゃないね5人だね!ひゃみちゃんも呼んでこないと!その間、澄晴くんはお店に電話よろしくね!」
「はいはい」
「新ちゃんは成長の成果を匡貴さんに見せといて!」
「え…どうやって…」
「公平くんはお金」
「金要員かよ!つか雑!」
「それじゃ匡貴さんまた後で!お祝い楽しみにしてて下さい!私の最高の愛を調味料に極上のお肉を…」
「いいから早く行け」
「はーーい!いってきまーす!」


大きく手を振って隊室を出たところで、新ちゃんも隊室から出てきた。私が首を傾げて新ちゃんを見ると、新ちゃんがふと表情を和らげた。イケメンスマイルだ!


「俺も行きます」
「え?いいよいいよ、新ちゃんは匡貴さんに…」
「行きますよ。どうせなら最後までお供します」


新ちゃんを匡貴さんにプレゼントして終わり…と思ってたけど、誕生日が終わるまで付き合ってくれるみたい。イケメンの微笑み…新ちゃん…本当にいい子…!知ってたけど!


「うん!それじゃあ最後のミッション!ひゃみちゃんを見つけ出して連れてこよう!」
「はい」


可愛い可愛い後輩と一緒に私たちはひゃみちゃんがいるであろう場所へと向かった。

実践編、新ちゃんの成長最終結果!
新ちゃんの成長は著しかったね!尾行だけじゃなく総合力が上がってた!さすが私の見込んだ新ちゃん!

匡貴さんとの時間はこれ以上減らせないけどまた一緒に特訓しようね!


(それじゃあ匡貴さんのお誕生日を祝して…かんぱーーーーい!!お誕生日おめでとうございますこれからもずーーーっと永遠を誓って愛してまーーーーす!!アイラブユーユーラブミーーーーー!!!)
(うるせぇ。店ん中で騒ぐな)
(なに?あいつ酒でも飲んでるの?普段より割増しでうるさい)
(ふふっ、主役の二宮さんより嬉しそうだね)
(人のお金で食べる焼肉は格別だと言ってましたからね)
(ちょ、それおれに出させる気満々じゃん!)
(出水ごちー)
(お肉美味しーーー!!)
(つかあんた食い過ぎだろ!ちゃんと払えよ!?)
(ったく、騒がしい誕生日だな)

(完)

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