中学卒業を控えたある日。僕は番になる予定の彼から、とんでもない爆弾発言を食らうことになる。
「……恭、今日家 来る?」
「えっ」
たったそれだけの事だった。だけどとっても大きな声が出たし心拍数はあがって、これでもかと言うほど顔が熱くてたまらない。
しまいには下敷きで顔を仰ぎだした僕に、彼は慌てた様子で口を開く。
「ばっ そんな意味じゃないからなっ?!」
そんな意味。きっと彼 三郎くん(α)は、僕がやましい事を考えてるんだと思ってるんだろう。
…いや、ちょっぴり ううん、だいぶ考えてしまったのは内緒だ。だってお家に誘われたのは 初めてなんだもん。
そういう意味でもかなり心臓はバクバクする。
「で?来るの?来ないの?」
痺れを切らした様な問に 僕はドキドキしながら答えた。
「行きたい…!!」
だって初めてのお誘いなんだもん。
嬉しくないわけ 行きたくないわけなかった。

彼のお家はイケブクロでは知らない人は居ない、かの有名な萬屋山田である。
放課後制服のまま 隣を歩く彼についていく。他愛のない話をしていたけれど、正直緊張しすぎて殆ど右から左だった。
「…着いた。今日はいち兄がいるかも知れないけど、うるさい奴は居ないから安心して」
(うるさい奴…きっともう一人のお兄さんのことだ)
頷いて 彼に続いて階段を登っていく。お家へ着くなり、早速身体がカチカチになってしまった。

「お、三郎 早かったな。おかえり」

「!!!」
柔らかくてかっこいい テレビの中継越しに聞いたことのある声。
街中の憧れの的 山田一郎さんだ。
「いち兄、ただ今戻りました。それで、その 今日はこい……友達を連れてきてるんです」
「!!!友達?」
不思議そうな声を聞いて 僕は慌てて彼の後から一本左にずれると、とても大きな…カリスマ性のある男の人と対面した。目の前でみる山田一郎さんは、かなり格好良くて緊張する。
「は 初めまして…!三郎くんの友達の、篠川恭ですっ」
勢い良く頭を下げると、一瞬の間のあとに 一郎さんが挨拶をしてくれる。
「恭くんか。三郎と仲良くしてくれてサンキューな。三郎、後で菓子とジュース持ってってやっから 先に上に行っとけ」
「いち兄にやらせる訳にはいきません、それくらい僕が」
「いいんだ。今日は休みで こんな時くらいしかやってやれないからな。ほら、上がっとけよ」
「そう、ですか…いち兄がそこまで言うなら。ありがとうございます。恭、行こう」
「!う、うん」
一郎さんに一礼すると、キッチンを通り過ぎて階段を登っていく。
(ここが三郎くんのお家なんだ)
そう思うとドキドキの中にワクワクも生まれる。
まだ知らない彼の一面を知れるみたいで なんだか嬉しかったんだ。



その頃 山田一郎

「………………、」
「たーだいまぁ!って兄ちゃん!!オレンジジュース!溢れる溢れる!!早くあげて!」
「ッ!二郎か おかえり」
「ただいま!それより兄ちゃんがジュース溢しそうなのとか珍しいね どうしたの?」
「いや…三郎が」
「?三郎?あいつなんかやったの?」
「友達を連れてきてるんだ」
「!!あいつ家に呼べるダチとかいたのか…!つーかそれってスゲーいいことじゃん 何で気になるの?」
「…俺の直感だが 多分あの子は、Ωだ」
「えっ」
「フェロモンが柔らかかったし 随分華奢で可愛らしかったからな。ダチにΩがいてもおかしくはねぇが、三郎の棘がねぇんだ」
「っていうと?」
「相手の事を気遣ってるっつうか、上に行く時だって歩調を合わせてたしな」
「ふーん?つまり二人は恋人ってこと…?」
「多分な」
「って兄ちゃんそれ…!!ふたりっきりにしてよかったの?」

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