目が覚めたらそこは見たこともない大都会だった。
僕が住んでたのどかな田舎とは 似ても似つかない…それどころか、街の名前だって 僕が知ってるものとは少し違っていた。
(どうして全部カタカナ表記なんだろう…?)
頭を傾げつつ、ここがどこかも 何なのかも分からない状況に途方に暮れる。キョロキョロしても当たり前に知らない風景と知らない人まみれだ。こんなに心細いのは初めてだ…。
項垂れて近くにあった噴水に腰を掛ける。すると暫くして、見も知らない人が近寄ってきて僕に話をかけた。

「君、今空いてるの?」

そう言って話をかけてくれたのは、少しだけ頭のひかっているおじさんだ。ヨレヨレしたスーツを着込んでいて、なんだか汗ばんでいる。いつもだったら不審がるだろう。けれど心細かった僕は 人と話せたことが嬉しくて、飛び上がって勢いよく返事をした。
「はい、それで、色々困ってて」
縋るような気持ちでおじさんを見上げていると、おじさんは僕の顔をマジマジと見た後 僕の肩を持ってにっこりとわらった。
「君は随分可愛いし、おじさんが助けてあげるよ さぁ行こう」
(可愛い?って?)
よく分からないけど、助けてくれるという言葉にこれまた飛び上がって 僕はおじさんに肩を抱かれるまま立ち上がり、その場を離れようとしたその時だった。
僕の肩を抱いていたおじさんの手が急に振り落とされて、気が付くと僕から少しだけ距離が離れた位置に飛ばされていた。
「!!!」
(一体何が、)
そう思って後ろを振り返ると、身長の高いイケメンなお兄さんがこちらを見下ろしていた。
少しだけ怯えながらお兄さんを見つめていると、綺麗なオッドアイと視線が交わって その瞬間に微笑まれてドキリとする。
「どこほっつき歩いてたんだ?心配したんだぞ」
「え、僕…ですか?」
思わず小さく呟くとお兄さんは頷いて、僕を背に庇うように1歩前へ出て おじさんに言い放った。
「おっさん 俺のダチに何か用なのか?」
するとヒィッ!!というおじさんの悲鳴が上がって、思わずお兄さんの後ろから前を覗き込むと、おじさんはへっぴり腰で慌てながら走り去っていく所だった。

「あっ…」
助けてくれるはずたった手掛かりが行ってしまった…。
再び困ったことになったな、と思い悩んでいると、目の前のお兄さんがくるりと方向転換をして 少し屈んで僕の顔を覗き見た。
「大丈夫か?なんか変なことされてねえだろうな?」

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