三郎Side

初めてできた友達は 病弱だった。正確には出会った頃は健康で 急に余命を宣告されたのだと、突然に知らされて 恭の顔を愕然と見つめるしかできなかった。篠川恭は僕と同じ施設にいた戦争孤児だった。覚えてなんかいないけど ずっと昔から一緒に遊んでいたらしい。物心ついたときには僕はいち兄につれられて新しい家にいたから 恭とは中学で再会するまで離れ離れ。再会したと思ったら、これだ。

―――――――


――――


真っ白な一人部屋に恭はいた。
「恭」
呼びながら入ると恭はいつも決まって驚いた顔をする。もう何度も来てるのにな。
「三郎くん、こんにちは。今日も来てくれたんだね」
「毎日きちゃ悪いかよ」
ムッとして言い返しちゃったけど、冷静に考えると毎日押しかけるのは非常識な気もした。
「ううん、そんなことないよ。すごく嬉しい」
ふふと笑うあいつの顔は本当に嬉しそうで 余命を宣告されてるとは思えないくらいいつも通りだ。
「あ、ねえ、そうだ三郎くん 今日も会えるかなと思って ボードゲームを用意したんだよ、一緒にやらない?」
「ふーん。別にやってもいいけど、ってそれ…!!先週出たばかりの完売続出してる――」
「そう!!へへ、いいでしょ 誕生日プレゼントで買ってもらったんだ、」
今日初めてあけるのが楽しみで、なんて話しながら恭は夢中でゲームをテーブルの上に広げている。あいつが手を動かす度にやせ細った手首がチラついて目を背けたくなる。
(…こんなにいつもと変わらないのに お前は僕を置いて行くのかよ)
喉まででかかる言葉をぐっと堪える。昔の記憶は全然ないけど 恭は覚えてないと言った僕にそれでもいいといって笑ってくれた。もう一度友達になってくれた。
゛三郎くんが覚えてなくても 僕は覚えてるし それでいいよね゛――――

「…三郎くん?どうしたの?ゲームやりたくなかった?」
「違う。少しぼーっとしてたんだ、」
「へえ 神童でもぼーっとすることあるんだね?」
「生意気だな このゲームでボロボロに打ち負かしてやるからな!」
「ふふっ いいよ!僕だってがんばるんだから!」

顔を突き合わせて 一喜一憂 叫んだり笑ったりしながら穏やかな時間が過ぎていく。
お前は知らないだろうけど、ううん、知る必要も無い事だけど 僕だって寂しいと思ってるんだ。なんで恭が死ななくちゃいけないんだ!って叫びたいくらい。どうして神様は僕の大切なものを奪うんだ。嘆かわしい…。
僕には何もできない。せめて1日でも多く恭といて、恭が生きていた日々を記録して、今度は 僕が覚えてるから大丈夫だってお前に言ってあげられるようにしないと。それがきっと、恭の生きた証になるだろ…? でも お前にお別れなんて言ってやるつもりはないんだ。いつかその時が来たとしたもサヨナラなんて言わない。言ってやるもんか。いつまでだって一緒にいたいのに 言えるもんか。





「やったー!僕の勝ちーっ!!三郎くんにかっちゃったー!」
「なっ!!!今のはまぐれだっ!もう一回!!」
「ふふっ 何回でも受けて立つよーっ!次も僕が勝つ!」

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