? | ナノ
 どんな時も貴方となら

今日は理鶯さんとハントに出かけていた。
のだが――――――

突然の大雨に襲われ、
ハンティングは一時中断となった。

俺達は慌てて近くにあった洞窟へと
避難して、様子を見守ることにする。

「こんなところに洞窟があるなんて
知りませんでした」
「うむ。ここは小官も偶然見つけた
穴場でな。天候が荒れた際は
よく利用している」
「へえ、」
さすが理鶯さん 慣れてる、
そう思った瞬間 鼻がムズムズとして
俺は大きなくしゃみをかましてしまう。

「ぶぇっくしゅ!!」

慌てて服で塞いだものの、
こんな汚いくしゃみを聞かせて
しまったことに恥ずかしくなって
顔を俯かせた。

(絶対聞かれた、恥ずかしい…)

「――恭、」
「は、はい」
流石に引かれたのだろうか
ドギマギしながら彼の返答を待つ。
すると理鶯さんはおもむろに
俺の腕をとって 洞窟の中へと
突き進んでいった。

薄暗い洞窟の中、少し歩いた所で
座るように指示を受けて
わけもわからないまま そこに腰かける。
「少し待っていろ」

と、それだけ言うと理鶯さんは
元きた方へと戻ってしまう。
そして、すぐにこちらへと帰ってきた。
手には小石のようなものが二つ。

「理鶯さん、それは…?」
思わず聞くと、理鶯さんは
「火をつけるのに使う」と。
火…?

目を丸くする俺をよそに、
理鶯さんは洞窟の中で草木を集め
石を摩擦し始めた。あれよあれよという間に
火はついて、それにも驚いたけれど
一番驚いたのは その後の事だった。

「恭、こちらへ」

そう言いながら火の近くへと誘導される。
少しだけ近寄って見ると、ほんのり暖かく、
雨で濡れた身体が温まっていく様な気がした。

ホッと胸を撫でおろしていると
後ろから 大きくて逞しい腕に包まれた。

「り、理鶯さんツ…!?」
慌てて顔を後ろに向けると、
優しく微笑む彼と視線があわさる。

「先ほどのくしゃみ、寒いのだろう?
恭が風邪を引いてはいけないからな。
こうしていれば少しでも温まるだろう」

ああ、そうか とそこで初めて
彼の行動に合致がいく。全部俺の為にしてくれてたんだ…。
一気に心があったまっていく。
「ありがとうございます、理鶯さん」
「当然のことをしたまでだ」



―――――


―――


それから 雨が止むまで二人でゆっくりと
色んなお話をしてすごしたんだ。
昨日採れた貴重な山菜のことや
珍しい獲物についての豆知識、理鶯さんから
もたらされる情報は 俺にとってはどれも
未知で 知らないことばかりで
お話をしている間 楽しくてしょうがない。

「恭 腰は辛くないか」
こうやって さりげなく気を使ってくれるところも。
優しくて たまらなく愛されていると
感じるには十分で。外とはいえ、ここには二人しかいない
そう思えば 俺は自然と、甘えたくなっていて。

「…腰は、大丈夫なんですけど。
我儘言ってもいいですか…?」
「む?どうした?腹でも空いたのか?、」
問いに首をゆるゆると振る。
「その…む、向き合っても
いいですか…?抱き着きたい、っていうか…はい」
言ってる間にじわじわ羞恥が押し寄せて
ごにょごにょする俺に、フッと笑う雰囲気を感じ取る。

「あぁ。構わない」
「!あ、ありがとうございます」
へへ、と思わず笑って くるりと体制を変えて
大きな体に抱き着く。
「先ほどよりも暖かいな」
「そう、ですね。くっついてるから 余計
暖かいです。それに―――」
「?それに?」

゛とても ドキドキして、熱くなります ゛

ぽそっと呟いて 胸板に顔を埋めると
頭をひと撫でされる。
「恭」
「…はい」

おずおず声をあげると、そこには
優しい視線。ゆっくりと顔が近付いてきて、
触れるだけのキスをした。

何度も重ねては離れて、
だんだん激しさを増していく。
気が付いたら手を絡め合って
お互いを求めあっていた。




―――――――――――――


――――





「―――結局、朝になっちゃいましたね」
「あぁ。だがいい一日を過ごせたと思う」
その言葉に顔が赤くなる。
「…お、れも 洞窟に隠れるの
悪く無いなって思っちゃいました…」

だって、理鶯さんとゆっくりできるんだもん。

「ふ、そうか。
ならば次はこの周辺デキャンプでもするか」
「ふふ。いくらでもお供させてください、」

きっと貴方となら どんな時も
何があっても乗り越えていける
そんな気がするんです。

prev / next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -