衝立向こう側の秘密
立てば芍薬、座れば牡丹。歩く姿は百合の花。あの少年にはその表現がとても似合っていた。
目頭と爪に朱色を差し戦仕度を終えた私はからりと戸を開け第一部隊へと向かった。
ふわりと匂う桃の香りに誘われて、ガラガラと引いていた荷車を路地に置いた。
この時期は桜。もしくは梅と桃の花。
「……狐の嫁入り」晴れているのに雨が降ってくること。空を見上げながら隣を歩く彼がぼそりと呟いた。途端、雨が降ってきた。
彼は普段和装で過ごしている。縁側に腰かけお茶を飲む姿はとても同い年とは思えない。
この籠の中には、隣国へと嫁ぐお姫様が座っている。
あぁ、やはり。彼は刀を持つと少しだけ大きく見える。
闇夜に光る彼の太刀筋に僕は惹かれたのだ。
大陸暦1718年、留め慣れたボタンシャツに下は袴を穿き私は帝都へと赴いた。
この、人に厳しい軍人が、実はいっぱしの小説家の恋人ですごく可愛らしい人だということを私以外誰も知らないだろう。
一番上のもお題としてお使いいただけます
(立てば芍薬居(とと)すりゃ牡丹歩く姿は百合の花。とも言います。どちらも女性の美しさを現した表現です。あえて男の人に使ってもいいと思います)
朱…魔除け、厄落とし
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