Magie | ナノ

Magie

丁寧に月一回の杖の手入れをする。この前魔法が暴発したのも、もしかしたらこの杖の機嫌が悪かったからかもしれないのだ。

ぐつぐつと大釜が煮えている。ナメクジとイモリのしっぽを刻んだものを入れ、火を弱めた。

素早く呪文を唱え相手から杖を奪う。完璧だ。

うっかり、だった。ついうっかり、守護霊を呼び出すはずが悪霊を呼び出してしまったのだ。

これがドラゴン……。掌の上で小さく炎を吐く可愛らしい生き物が僅か6か月で僕と同じ位の大きさになるなんて思いもしなかった。

あと5分も箒で飛べば彼の家が見えてくる。

死さえも覆す呪文を僕は10年も研究しているが、どうにも考え付かないのだ。

森へ入り薬草を籠にしまう。そんなことを続けていたらいつの間にか夕方になっていた。授業は遅刻どころではない。

今日から本格的に魔法を習うことになった。ようやくこれで僕も魔法使いになれるのだ。

光の中を必死にあがくより、闇の中の心地よさを見出してしまったのです。

「……大丈夫かい?」魔法が暴発して目の前の鍋が木端微塵になっている。「……すみません、大丈夫です」正直大丈夫ではない。「僕の鍋、使っていいよ」これが彼との最初の会話だった。

すっかり日が暮れてしまった。こんな時間に外に居ることが見回りの先生に見つかったら罰則ものだ。ひょいと箒に股がり塔の天辺へと飛び立った。

よし、できた。これなら、教授も納得してくれるだろう。星屑のレポートは終り。次は変身術についてだ。新しい羊皮紙を出して羽ペンを握り直した。

優しい鳶色の瞳がこちらを見ている。どうしよう。カエルの油と蝙蝠の涙の順番を間違えたらしい。本来黄色に濁るはずの鍋の中は今は青色になっていた。

このよには禁術と呼ばれる、所謂闇の魔法があり、使用をしてはいけないという暗黙の了解がある。僕がその禁術に魅せられたのはまだ8歳にもならない頃だった。

魔法で黄金は作れる。不老の術も考えた。しかし、死者は生き返らない。……本当に?僕はいまだに研究を続けている。

膨大な書物がこの学校の図書館には眠っている。1000年前の薬学や呪文学の本、ほかにも発禁になった書物もある。生徒は閲覧できないが先生の許可を取り禁書目録を手に取り僕は立ち入り禁止と書かれたロープを潜った。

「僕を恨んで、許さないでね」呆然と座りつくす彼の額に杖を当て、僕との8年間の記憶を消した。

遠くで教授の声が聞こえる。まただ。僕は半ば小走りで次の呪文の教室へと向かう。さっき鍋を爆発させた犯人が僕だって気づいたのだろうか。教授の声にお怒りの色が含まれている。

仕方ないじゃないかだってまさか、人を乗せていない箒が暴走するとは思わなかった。僕を乗せるはずだった箒は地面に僕を叩き落した後、3階の教室の窓を突き破り見事教授の怒りを爆発させることに成功した。窓を叩き割ったのは今月でもう2回目の出来事だった。

廊下で花火が爆発している。続きでまた呪文が聞こえるのも、この学校の風物詩となってしまった。

名前を呼ばれて振り返ったときには、もう魔法が僕のすぐ目の前へと飛んできていた。

大量のチョコレートに追いかけられる。彼の魔法の腕は学年一なのに、どうしてこうもくだらないことに精を出すのだろうか。

彼は呪文学においてはとても優秀な成績を収めていた。
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