「おいゾロ、この前のテスト返ってきてんだろ?」

「ああ…まぁまぁだな」


ん、と出された手に答案用紙を渡しながらゾロが答えた。


「先生達驚いてたぜ、いつも授業聞いてないのにって」

「オレが教えてんだ、この位出来て当然」


答案のチェックをするこの男 サンジは、半年前からゾロの家庭教師をしている。剣道以外には無関心なゾロに不安を抱いた父親が連れて来たのだ。


「そんかし英語と歴史はボロボロ」

「そっちはオレにゃ関係ねぇ」


へらっと笑い用紙を返す。ゾロはそれを受け取ると前回の課題だったプリントを渡した。


「お、ちゃんとやってあんな。‥試験の見直しは?」


そう問えば若干怯んだ。その反応に視線を上げるとゾロは苦笑し頬を掻く。


「あ〜…まだι」
「お前な‥また授業の時間削れんだろがι」
「後でやる」
「い〜や、お前は絶対やらねぇ」


ギロリと睨めば未だ渋い顔をしているが大人しく机に向かった。サンジはベッドに腰掛けプリントの採点を始めた。
暫くペンを走らせていたゾロがチラチラと自分を見ている。それに気付いたサンジが視線を上げないまま口を開いた。


「終わったのか?」

「いや、後一問…」

「ん〜、どれ?」


サンジは立ち上がるとゾロの肩口から机の上を覗き込んだ。右肩には手が置かれ、すぐ側にサンジの温もりがある。左耳にかかる吐息もがゾロの体温を上げた。
耳元でのサンジの説明も自分の鼓動に掻き消され頭には入って来なかった。


「……ぃ、…ゾロ?‥おい!」


いつの間にか呼ばれていたらしい。サンジの声にハッとしと上げた顔はきっと赤くなっているだろう、ゾロは頬に熱を感じていた。何か言い訳をと思い考えを廻らせているとサンジに頭を叩かれた。


「お前最近ボ〜ッとしすぎ。悩みでもあんのか?」

「ぃ、いや。何でもねぇ…」


言える訳がない、その綺麗な横顔に見惚れていた等と。本気で惚れている等と…。

ゾロはサンジの目を見れずにいた。色々なものを誤魔化すためにも視線を机へと落とし頭を勉強へと切り替える。ゾロの精神力は常人の比ではない、集中し始めたゾロはスポンジの如くサンジの教えを吸収していった。





―――――…‥



「寝ないの?」
「ああ?」
「珍しいじゃない、あんたが学校で寝てないなんて」


ボ〜ッとしていたゾロに話し掛けて来たのは腐れ縁のナミ。同時に幼馴染みのルフィや友達のウソップも周りに集まって来た。


「何か悩み事か?」

「恋でもしてたりして」


ナミがからかう様に言えばゾロは一瞬だが僅かに動揺した。そんな珍しい反応を見逃す彼女ではない。


「相手はどんな人?」


先程までとは打って変った優しい笑みで問う。よくよく見ればゾロの目尻も赤く染まっていた。


「いるんでしょ?」


視線を避けていたゾロだが、ナミを一瞥し諦めた様に息を吐いた。
相手を思い浮かべているのか、目を瞑り微かに微笑んでいる。伏し目がちに瞼を上げると想い人の特徴を挙げていく。


「金髪,碧眼,グル眉、長身で細身、顔は美人‥だと思う」
「(‥グル眉?)どこで知り合ったの?」
「俺の家庭教師だ」
「あぁ、それでか!」
「ん?何だ?」
「中間も期末も、ゾロの成績がかなり上がってるのよ」
「そうなのか?」
「今回は半年も続いてるみたいだしな。初めてじゃねぇか?」


ウソップの言葉にナミが相槌を打つ。
今までゾロに付いた家庭教師は何人もいたが、3ヶ月以上続いたのはサンジだけだ。ナミの記憶によれば、ゾロに"美人"とまで言わせたのま初めてだろう。


「ね、今度見に行って良い?」
「あ゛あ゛?!」
「あっ、おれも行きてぇ!」
「次の授業の日っていつだっけ?」
「月水金だから明日だろ」


3人はゾロを余所に勝手に話を進めていく。何とか反対しようとしていたゾロだったが、ノリノリのナミに諦めざるを得なかった。






ゾロが部活を終え家に帰った時、部屋には既にナミがいた。人の部屋で寛ぐ姿に呆れて物も言えない。
呆然としているとナミが此方に気付き笑顔を見せた。


「おかえり」
「…本当に来たのか」
「何よ、何か不味い事でもあるの?」
「いや‥、ルフィとウソップは?」
「今日は用事があってムリだって」


ナミの言葉を聞きながらゾロは鞄を置き部屋から出ようとした。


「オレンジジュースね♪」
「自分でやれ」
「下行くんでしょ?」
「風呂入んだよ」
「今から?」
「後10分は来ねぇ」


今度は何か言われる前に扉を閉めた。

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