グランドラインを突き進むGM号の上、この船の剣士ゾロはクルーの輪の中心にいた。それもその筈、今日はゾロの誕生日だった。
ゾロは声を掛けられる度いつもの仏頂面はどこへやら、はにかんだ笑みを返していた。



「「「ゾロ!おめでとう!!」」」


船長,狙撃主,船医からは肉,酒,強壮剤を。


「おめでとう、剣士さん」


考古学者からはカジュアルな服の一式を。


「はいコレ。おめでとう、ゾロ」


航海士からは小さな瓶を。


「これは?」
「獣化の実v」
「は?」


訝し気なゾロを余所にナミは説明を続けた。そして最後に


「明日の事は気にしなくて良いわよ」


と付け足しゾロの側を離れた。

料理人は開始前から忙しなく動き回っている。ゾロはまだ彼からあの言葉を聞いていない。だが不満はなかった。
腕に縒をかけて作られた御馳走が、時偶交される視線が全てを物語っているから。




―――――…‥




「剣士さん、航海士さんから伝言よ」


ゾロは目線だけで先を促した。
ロビンは妖美に笑うと言葉を続ける。


「後は任せてどうぞごゆっくり」
「……昼まで立入禁止、な」
「伝えておくわ」


ロビンが立ち去るとゾロはサンジのもとへ行った、潰れたお子様共を男部屋に運び終えたサンジがゾロに気付きふわりと笑った。


「もう良いのか?」
「ん。後は任せろとよ」
「いや、でも…」
「俺へのプレゼントだろ」
「もう少しくらい待てねぇ?」
「ああ、無理だな」
「お前ね…ったく、仕方ねぇな///」


サンジはナミとロビンに一言断りに行き、ゾロは先に格納庫へ向かった。酒を手にサンジが格納庫へ入れば、毛布の上に座ったゾロが何かを眺めていた。


「ゾロ…」


名を呼ばれ振り向けば、愛しいその姿に自然と目が細くなる。


「ソレ、何?」
「…ナミに貰った。お前に食わせろって」
「オレに?」
「ああ。食うか?」
「何の薬?」
「ただの実だ」
「…知らねぇな、こんな実」
「怪しいか?」
「ああ、怪しいな」


サンジが酒を掲げるとゾロが目で返す。


「嫌か?」
「そんなに飲ませてぇのかよ」


クスクス笑いながら2人はグラスを重ねた。

「おめでと」
「ん…」


ゾロは静かにグラスを傾け、サンジはゾロに寄りかかり目を閉じた。


「来年も祝ってやるよ」
「来年だけか?」
「再来年もその先も、ずっと…」


視線を合わせ、2人はどちらともなく口付けた。最初は軽く触れるだけ。触れては離れ、離れては触れ、啄むものになりそれは次第に深く絡まるものになった。

夜が明けた頃、サンジは何度目かの絶頂と共に意識を手放した。
軽く後始末すると、ゾロは眠る彼を抱き目を閉じた。


彼等が目覚めるのは日が高く昇った頃。それまでは安らかな眠りを……


END

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