10月31日 ハロウィン
麦藁海賊船の船長,狙撃主,船医のお子様組はキッチンと甲板の行き来を繰り返していた。
「サンジ〜!!
トリックオアトリート!」
「てめェら早すぎだ!少しは味わって食え!!」
「サンジのおやつは美味いぞ♪」
「ちっ…次で最後だぞ」
船のコック サンジは、これで最後だと言いながら何度もその要望に応えていた。いつも以上に忙しなく動き回る姿を、船の剣士ゾロは苦笑しつつも微笑ましく見ていた。
夕食後、キッチンには仕込み中のサンジと晩酌中のゾロの2人だけだった。この沈黙はいつもと変わらない筈なのに、今日はやけに静かに感じられる。日中はお子様3人組がいつも以上に騒がしかったからだろうか…
「"trick or treat"」
「は?」
「意味、知ってるか?」
「"お菓子くれなきゃ悪戯するぞ"だろ‥?」
何が言いたいのか分からず、サンジは振り向き怪訝な顔をしている。ゾロはサンジを見る事なく晩酌を続けていた。
「"treat"には"待遇する"って意味があるんだよ」
「へぇ…、で?」
「トリックオアトリート」
やっと視線を合わせたかと思えばその瞳は熱を含み、サンジは深緑に吸い込まれた。
サンジはその熱に気付きながらも知らないフリをした。
「…菓子ならもうねぇよ」
「ああ‥だから待遇しろよ」
「酒とつまみで良いのか?」
「いや、来い…」
ゾロは体ごとサンジへ向き直り真っ直ぐ手を伸ばした。自分を捉えて放さない深緑にサンジは逃れられない事を悟った。元より逃げる気もなかったが…。
サンジが伸ばされた手を取るとゾロは手を引き自分の上に座らせた。
「御馳走だな」
「ん…残すなよ?」
ゾロがニヤリと笑えばサンジも挑発的な笑みを返した。
「喰らい尽してやるよ」
ゾロはサンジの頭を引き寄せ口唇に喰らい付いた。片手を後頭部に回し深く深く絡ませる。サンジの腕が首に巻き付いてくると腰を支えていた手を離し釦を外していく。
その白い肌に手を這わせ、チラリと覗く赤を引っ掻く。サンジの躰がビクンッ と跳ね腰が揺れ出した。
その夜、サンジは何度も達したがゾロを受け入れたのは一度だけだった。
翌朝ゾロの腕の中で目覚めたサンジの腰に然程痛みはなく、ゾロの優しさに顔が綻んだ。
サンジは眠るゾロにそっと触れるだけのキスをした。
END
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