「これ喰え」
微睡みの中に居たゾロの意識を浮上させたのはそんな、抑揚のない変に堅い声。良く、聞いたことのある、感情なんて見せないみたいな。
まあるい白いお皿の上には小さい濃いブラウンの、
「 チョコレート…?」
「良いから喰いやがれ」
ぐいっとひとつゾロとの距離を無くす。
眉間に皺が寄せられたのは。甘いものが苦手だと言いたいからなのか、ついさっきおやつは喰べ終えたばっかりだからか。分からないけれど。
その皺は、まあ至極当然だろうな、とサンジは思う。
喧嘩と喧嘩と喧嘩の毎日で。
それでも料理中も煙草の一服中も洗濯中も目ざとく捕えて。
そう言うの。
認めたくはねえけど、認めてしまえば簡単で。
――― どう仕様も無く、ゾロが好きだ。
「これ喰ったら俺の事好きになるぜ、めちゃくちゃクソ大好きに。離れられねぇくらい」
‥‥‥‥‥‥‥
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、って
「な、なんとか言えよ、恥ずかしいだろーがっっ クソマリモン!」
ちらりと視線が絡んだその先の、きれいなみどりいろ。
其処に。
少しだけてんごうを含ませて言ってみた言葉端の、けれど馬鹿みたいに真剣な顔をした不細工な自分が見えて。
ココアパウダーと粉糖とアーモンドをまぶした、3種類のガナッシュ。小さくハートの形になってるなんてゾロは気付きもしないのだろう。
そんなもの分かってる、こんな事言われたら多分困るの分かっているから。
ぶはあっと息吐く様にサンジは、自分の、綯い交ぜの想いを「ただの冗談だろーが。笑い飛ばせよ。洒落のわからねえ奴だな、マリモは」そう言って押し込む事を選んでいた。
なんかつってもな、小さく息を吐くゾロが。
「だいたい、」そう続けるのに。
「元から好きだったらどーなんだ?そりゃ効くのか?」
「は?」
モトカラスキ?もとからすき、って…どう言う…?
サンジが一瞬逡巡するのをゾロが剣呑な顔をして見遣った。
「 も、もっと好きになるんじゃねーの?」
サンジの頭の中は綺麗に真っ白、で
「もう爆発しそうなくらいだったらどうすんだ?」
「そ、れは… 触れてみる、か?キス、とか優しく致してみろよ」
「キスだけじゃ終われる気がしねェ。抱き締めてェし、おれァ、ヤりてェ。挿れさせろ、くそコック」
甘い告白には程遠い爆弾がゾロから投下されるのに、
心臓は痛いくらいきつく縮んだ。
「ホラ見ろ。 分かったら冗談で勝手に踏み込んで来んな」
サンジが黙ったのをどう取ったのか、ゾロのかすかに怒りなんてものを含んだ声が耳を通る。
なんて質が悪いんだろう、コイツは。仕掛けたのはサンジで、けれどもう完敗で。
言葉をじっくり噛み砕いたサンジの顔は、途端にぶわあ!と真っ赤一色に色付いた。
「冗談で誰がヤローなんかに愛を囁く日にチョコ手作りするんだよ!仕方ねえだろーが!テメェがそんな素振り見せねえから…! クソッ…!好きだ、クソスゲー好きだよ、ゾロが。俺だって」
だからテメェも俺を我慢すんじゃねえよ!言って。
サンジは押し倒したゾロの身体の上、馬乗り状態でその先を強請る、キスをした。
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襲い受w←
はっぴーばれんたいん!
(20130214)