日記SS | ナノ

その声は誰を呼んでその眼は誰を見る


!)ナミ視点




■□■



「…ナミさん、話があるんだ」



何時ものサンジ君とは随分と様子が違い過ぎて思い込んだ態度だとか重々しい声と表情に不安になったの言うまでも無くて、自然とつられた表情は固くなった。
嗚呼でも聞かなきゃ良かった、直ぐに後悔して。分かってた、うん、分かってたはず、なのに、どうしたの?なんて言った私の馬鹿。


「ゾロ、が…」


なんて前置きから始まった話はもうサンジ君が休む間もなく話し続けて数十分。暗く沈む声は偶に荒げられたりして、未だ続いてたりする。
何で、誰が好き好んで2人の恋愛話を…多少なりとも興味が無い訳でも無くて冷やかしがてら突付いて揶揄ったりもするけれど、自分発進と相手発進じゃモチベーションが違うのよねぇなんか。自分発進だと相手はおろおろ取り乱したり無駄な誤魔化しだったり真っ赤になったり聞き出すの愉しいのだけれど、相手発進でも愉しい時はあるけれど大抵はうんざりする痴話喧嘩的な惚気。聞き出す課程が愉しいのであって相手から話されたらそれも激減するのよね。



――――…ナミ、さん? 俺の話聞こえて、る…?」


申し訳なさそうな声がして、いけない現実逃避してた。と言うか考えてたのは2人の事なんだけれどこの場からって意味では逃避。
で、何だっけ?


「ゾ、…ロが見てるのって俺じゃ無いんだ ルフィと話してるのは俺だって言うのに先に見付けて声掛けるのは何時もルフィ、で 2人の付き合いが長いとかそれは俺にはどうにも出来無いけどそれでも… 何で俺じゃないんだろ?ナミさん!」


「それでも…恋人は俺なのに」なんて言葉はサンジ君の口の中で籠もって、真摯に向けられる眼。
にっこりと笑って見せた。眼の端に捕らえた姿、こっちに向かって来る。


「じゃあ賭けてみない?私とサンジ君。ゾロがどっちを先に見付けるか」


言い終われば丁度床が踏みしめられる音がして、サンジ君の表情は何時の間にか強張っていた。視線は頼りなく辺りを彷徨って。
サンジ君からの返事は無かったけどどうやらこの賭けに参加はするらしい、ゾロがもう少し来るの遅ければ何を賭けるか決めれたのに‥なんて結果見えてるのに賭けた所で面白くないんだけれど。勝つから楽しいのよね、こう言うのは。




――――‥ナミ、」


聞こえて来たのは何時もの不機嫌そうな声、顔もきっと眉間に皺が寄っているあの表情なのだろう。
途端にサンジ君は床に視線を落とした。


「……ゾロ、何?」

「ル、フィが島見付けたから上陸してェって騒いでる」

「! あの冒険バカ…もう、ルフィ!あんたねー」


ゾロに気付いて無かったなんてにこりと表情を作ればやっぱり向けられた眼は不機嫌たっぷりです、なんてそんなもので。ほらね、当たり。
はいはい分かってるわよ。目線で送って、船首から聞こえて来たルフィが騒ぐ声に思わず脱力。
1言も視線も合わなくなったサンジ君にちらりと眼を送って呟く言葉は「賭けは勝ちね?」。
跳ねる様にサンジ君の影った傷付いた様なマーブルの青い眼が向けられて小さく笑って。それから向かうはルフィの元。
きっと船首に居る奴等全員うっきうきの筈。
足早に去る背後、小さくゾロの声がした。



「おい、コック」

「……何、だ」

「何してた?ナミ、と」

「別、に…」


ホント結果が分かってる賭けなんて楽しくない。
サンジ君は気付いてるのかしら?気付いてない、だって下向いてたもの。だからって教えてあげる義理も無いけれど。大体何で私があのバカップルの為に…お金にもならないのに。
見上げた空は綺麗な青。
大きく息を1つそこに向かって吐き出した。



(ゾロが呼ぶのはナミの名前、それでも向けられている視線。サンジを捕らえて)
(きっと知らない、ゾロがナミに牽制掛けてる事“こいつに近付くな、おれの、だ”)



賭けは勝ちね?(サンジ君の)
ホラねやっぱり賭けるもんじゃないわ




「あーあ、やってらんないわよ。全く」



ゾロを見るサンジ君の横顔に綺麗な笑顔が綻んでいる。キラキラ輝いて。
そんなサンジ君を見詰めるゾロの顔も負けずに綺麗、で。
2人が本当にとっても綺麗。恋って奇麗だわ。



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凄いこの尻窄み感…、心に残ったもやもやは大声出して沈めて下さいスミマセン…!
(2012.11.01)



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