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ゾロ誕


「ゾロ、何か欲しいものあるか?」


うとうとと昼寝を始めていたゾロの元に、ひょっこりとサンジが顔を見せた。
ゾロはぼんやりと眼を開ける。
眠たいらしい
眉間の皺が何時もより深かった。


「…酒」


そんな状況でもサンジの問い掛けに答えてくれるゾロを、(大好きだなぁ)とサンジは思う。


「ゾロの好きな酒だぜ」


ゾロの答えを既に先読みしてたのか、サンジは直ぐに酒の入った瓶をゾロに手渡してきた。
酒ならまだしもその中でも特に“好きな”酒を渡され、ゾロは訝しげに眉を寄せる。
が、そこはゾロ。訝しげにしながらも眼の前に出された酒を飲まない訳にはいかない。


「他にはねぇか?」


ゾロが口を付けたのを見計らって、サンジが再び声を掛けた。
コックの様子が気味悪ィ
サンジの雰囲気が何時もと何処か違う。
ゾロの眠気は何処にいったのか。ゾロは感じなくなっていた。
それよりもサンジの事が気になり出したのだ。


「…おつまみ」

「待ってろ〜」


やっぱり気味悪ィ
サンジが弾むような声と共に、今にもスキップしそうな足取りで行ってしまった。
あいつが文句言わねェ…
ますますゾロにはサンジの行動が理解不能に陥る。
何か嬉しい事でもあったのか。
ナミやロビンと?


「枝豆だ!」

「あ、ああ…」


短時間でサンジは戻ってきた。
そして今度はゾロの横に座る。
サンジの様子を窺い知ろうとするゾロ。
そんなゾロの視線に気付いたサンジが首を傾げる。


「邪魔か?」

「ん?ああ。違ェ」


急に眼が合ってゾロは照れる。誤魔化す様に枝豆を口一杯に含み、酒を流し込んだ。
サンジはゾロの答えにほっと胸を撫で下ろしていた。


その後のサンジも変わり無くその場所に居て、何かとゾロに「何して欲しい?」「欲しいものあるか?」とこまめに聞いてきた。
昼寝をし始めたゾロには嫌味の一つも言わず、横に並んでぼんやり青空を眺める。
晩ご飯もゾロのリクエストメニュー。
ご飯を作り初めてから後片付けまでの僅かな時間だけゾロの元を離れ、それ以外サンジはずっとゾロの横に居た。



「有難う、ゾロ」


もうすぐ日付が12日に変わる頃、サンジがそう笑顔で告げた。
「何が」ゾロは首を傾げる。
やっぱりコックがおかしい
何か変なものでも食ったのか



「今日は何の日か知ってるか?」


知らねェとゾロは首を傾げる。
サンジは笑顔になる。


「誕生日。ゾロの」

「ああ。それはそうだな」

「だろ?そんな特別な日にゾロの傍に居させてくれて“有難う”だ」


これで今までの何でも言う事を聞き、機嫌が悪くなる所か逆にアホみたいに良かったのも頷ける。
ナミやロビンじゃ無かったのか
それはそれで面白くないのだ。今度はゾロがホッと胸を撫で下ろしていた。
自分の事で、しかも誕生日を一緒に過ごせてコックが喜ぶのか
単純だな、と思いつつ、悪くない



「最後にプレゼント渡してぇんだが貰ってくれるか?残すのは禁止だぜ?」

「いらねェ」

「え……」


途端、サンジは切なそうな顔になる。


「それより“プレゼントは俺だ”みてェなのはねェのか?」

「え…あ、あ。ど‥うぞ?」

「遠慮はしねェぞ」

「好きにしていいから、ゾロ…」


ゾロの掌の体温を、左頬に感じつつサンジは眼を閉じた。


ーーーーーーーーーーー
実は最後にサンちゃんが渡したかったプレゼントと言うのも、自分だったりします。だから微妙な反応だったり。考える事は同じです。
が、ゾロはケーキとかそんなんだと思い、そして何より気が焦ったので、却下。
次の日にナミさんに嫌味の1つでも言われてればいい。「誰かさんの特別な日か知らないけど、サンジ君が1日中浮かれてて大変だったわ〜」とか何とか。で、2人揃ってテレていればいい。
(2008.11.11)




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