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誕生日プレゼントは広告の裏が白いやつ


「え?新ちゃん?誕生日プレゼントって言ったよね? え?誕生日プレゼント、て…コレ?え?」


マジで言ってんの?なんて気持ちを込めて銀時はつい先刻、新八が自分に向けて告げたその言葉を繰り返した。

 パチンコだったりスーパーの特売が書かれた色とりどりの広告の、更に裏が白いやつ、それは四角形のちょうど掌に収まる大きさに切り揃えられていて。
“いちご牛乳1杯”“みたらし団子1本”“チョコレート5粒”なんて文字が並ぶ。


「はい、誕生日プレゼントです。嬉しいでしょう?」

「いやいやいや…! 何コレ?何なのコレ!銀さん意味分かんないんだけど!父の日の肩叩き券みたいなアレだよね、そーゆーアレで間違いないよね?」

「そうです、糖尿のアンタに糖分を摂取させてあげるって言ってんじゃないですか。それ渡してくれたら文句言わずに与えてあげますよ」


何その上からな感じ!それに俺まだ糖尿じゃないからね!予備軍だからね!てか糖分くらい自分の好きな時に好きなだけで良くね?ちょっとおかしくね?普段からそりゃ人がせっせと隠しといたもん見付けては神楽に勝手に喰わせるわ説教してくるわでうるせーけど?そんなん無しで貰えるのありがてーけど?でもな!そーゆーのがあってこその糖分だろーが!銀さんを心配する新八があってこそ更に甘くなるんだろーが!
銀時は掌の数枚綴りにされた広告を見遣った。
簡単に見てもいちご牛乳の券が3枚程度、甘味(みたらし、三色団子、チョコレート、クッキーがあるらしい)については各1枚ずつ。
こんなもん1週間も持たねーんじゃね?てか、


「新八ィ、これパフェとケーキ忘れてね?」

「ごめんなさい。買ってあげるお金がないんです、天パが仕事探して来ない所為で」

「あ、そーね」


にっこりと降ってくるのは姉に似たあの笑顔で。
思わず口を噤む銀時のその横。
お昼のワイドショーに見入っていた神楽が切り出した、その鼻には指。普段銀時がしてるあのやる気ないってポーズの。


「銀ちゃん、これあげるから糖分は諦めるヨロシ」

「何だあ?神楽もおんなじの作ってたのかよ?どーせコレもろくなもんじゃねーんだろーが」

「歌舞伎町女王からのプレゼントをそんなセコいダメガネな嫁と一緒にしないで欲しいアル」

「ちょ、神楽ちゃん!セコく無いからね!だいたい、なっ!なんだよ!嫁、って…よめ―――

「かっ神楽ァァァァ!!!!」


神楽に渡された広告の綴りを見ていた銀時が崩れ落ちるのに。
驚いたのは1人慌てふためいていた新八だけで、


「銀さん!?ちょっとどうしたんですか!って何泣いてんですか!神楽ちゃん一体何書いたの!?」


両手を腰にソファに仁王立ちして高笑いする神楽をただただ崇めて。「これからは神楽様って呼ぶネ」、言えば直ぐに「神楽様ァァァァ!!!!」なんて銀時が叫ぶ。

何なんだよ、この変な宗教みたいなの



「“定春と散歩に行って来る券”“アネゴの所にお泊りに行って来る券”をあげたアル」

――― え?それだけ?」

「あと“神楽様に酢こんぶを買ってあげる券”が1枚だけあるネ」

「いや…それ誕生日プレゼントじゃないよね?神楽ちゃんへのプレゼントだよね?」

「でも絶対銀ちゃんは使うヨ、賭けても良いアル」

「  ―――――― 新八ィィィィ!!!!」

「は、はいっ!って、銀さん?」


神楽様ァァァァ!!!!、と叫んだのと同じ音で銀時が呼ぶ。
思わずと言った風に新八は返事をして、それからあれ?と思う。
つい今まで神楽を崇めていた銀髪が今度は自分の足元に有った。


「俺、糖分諦める!諦めるから誕生日プレゼント書き直せェェェ!頼むからお願いィィィ」

「はあ!?書き直すって何ですか?」


まあ、糖分いらないって言うなら別に文句は無いけど
1番喜ぶのあげたい事もない事もないし…、


「“銀さんにピーする券”“銀さんにピーされる券”“銀さんとピーする券”あと“銀さんとピーでピーしてみちゃう?券”も作ってみねーか?」

「なっ、な…?!」

「これで神楽のプレゼントの券を発動すれば銀さんやりたい放題じゃねぇか!」

「銀ちゃんほとんど放送コード引っ掛かってるネ。ピーしか言ってないアル」

「マジか? いや、だからね、新八くんが銀さんのアナログスティックを初☆ペロペ…」

「このクソ天パァァァ!アンタほんと1回死んで下さい!完膚なきまでに死んで来て下さい!」


……鼻もげた。銀さんの鼻完璧もげたよね?これ
何だよ、ちょっとした銀さんのカワイイ願望じゃねーか、てかいつかきっとやってもらうけどね!

 それでもこの騒がしさが心地いいと思うのは、こいつ等が急に居なくなりでもしたら自分はきっと困った事になるのだろう。
今更、こいつ等の存在がなかった頃にはどうしたって戻れないし、戻りたいとも思わない。
誕生日が特別で、大事な日である事を知ったのはこいつ等のおかげで。こいつ等の存在があったから。プレゼントを強請る事も強請られる事も、祝われてーし、まあ祝ってやりてーとも思う。


「銀さん!」
「銀ちゃん!」

「「誕生日おめでとう」」

「ございます」
「ネ」

「ワンワン」


そんな事言ってやらねーが。
だって調子乗るし?こいつ等。根が単純だからね。
別に恥ずかしいからとかじゃねーからね。


「 あ〜… あんがと、な」



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銀さんの誕生日=金木犀の甘い香り、なイメージ。なんか銀さんっぽくていいと思う。
アニ銀てかアニ金では今銀さん大変だから。大変な誕生日の迎え方してるから。乗っ取られてるから。ちょっとでも倖せな話を…とにもかくにも銀さん誕生日おめでとォォォォ!!!!
(2012.10.10)



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