「何で報酬のおまけが遊園地のフリーパスな訳?どうせなら甘味とかじゃね?万事屋の社長は俺なんだから普通その趣味に合わせるよね?コレ常識じゃね?」
「銀さん、少しは糖尿って事自覚して下さいよ、もう! 何でもあの家の主人がこの遊園地で働いてるとか何とか言ってましたよ?」
ひらひらと。
入場ゲートに設置されている機械(カラクリ)に差し込んだ掌サイズの小さな紙を軽く振って見せれば。新八が分かり易すぎる程の溜息を吐くのに。
銀時は糖尿じゃねぇよ!と軽くツッコミを入れた。
まだ予備軍だからね、発症してねーから。そこんトコ間違わないで欲しいわけよ。全然違うから、天と地ほど違うからね
今日は珍しく依頼が入って、広い庭の草むしりなんてものだったけれど、報酬は割と思っていたよりもしっかりと貰えたりなんかして。
その色付けとして貰った遊園地のフリーパス。
神楽が行きたい!と騒いだ事と。運良く依頼が入ってなかった(いや、まあ大体入ってないけど)事もあって。
次の日に早速。
皆で仲良く直行。
「そうネ!銀ちゃん。私と新八はこっちの方が嬉しいアル! それに糖尿が進むと勃起不全になるヨ」
「ちょっ!?神楽ァァァ!!? お前何言ってんの!?何処のガッテン会員!?女の子がそんな事言うんじゃありまっせーんっ!!! それに銀さんは新八さえ居れば無敵だから!勃起不全なんて有り得ねーから!怖いものなしだから!死ぬ直前までおっ勃てて布団宙に浮かせて────…!」
「アンタが何言ってんだァァァァァ!!!このクソ天パァァァァァ!!!!!」
「…ぶっはあ!!?」
「神楽ちゃん行こっ!早くしないと一杯乗り物乗れないよ」
「新八ィー、私アレ乗りたいネ!」
見事に綺麗に決まった鼻フックデストロイヤーと。重ねる様にして神楽からは冷ややかな眼が向けられた。
足速に歩いて行く2人にはもう。銀時なんて居ないみたいに。
神楽は楽しそうに新八の手を引いた。
あー嫁と娘が仲良しなのは悪くないよね、何あの微笑ましいの。休日の倖せ家族図ですかコノヤロー
涙が出そうなのは決して鼻が痛いからだとか蔑む眼だとかそんなのでは断じてな‥ない!
■□■
「銀ちゃーん 顔色悪いアルヨ?どーしたネ?」
「あっ、もしかして怖いんですか?でも大丈夫ですよ、見て下さい、あんな小さい子供だって乗れるんですから」
「そうヨ!ただギュヨーンって走ってヒュルルルーって落ちるだけアル!」
「ちょ、何言ってんの?怖くないからね!銀さん寧ろこーゆーの大好きだからね!」
取り繕うみたいにして言って見せる銀時に。
ふーん、と向けてくる新八と神楽の眼は可愛くない。
何?え?何?コイツ等、銀さんの言葉コレ確実に信じてないよね?
怖くないって言ってんじゃん!大好きだって‥‥
「何名様ですかー?」
「あっ、3人です」
「では5番ゲートと6番ゲートへお進み下さい」
「待てェェ!何お前等、2人で一緒のとこ行ってんのォォォ!?何で俺1人なんだよ!おかしいだろーがっ」
イヤイヤイヤ違うから!怖いとかじゃないから!
ただのけ者にされたのが嫌だっただけだから!
だからそんな眼で見るんじゃない!
見てみなさい、パークのお姉さんを!こんな優しい眼しなさい!可愛い顔が台無しだから!
「……銀ちゃんカッコ悪いネ」
「怖いんだったら素直にそう言ってくれた方がまだマシですよ」
「だっ、違ぇーって!ホラ見てみろ!“小さいお子様は大人と一緒に同乗…”って書いてあるだろうが!神楽!お前は俺と一緒に乗りなさい!」
「私はもう立派なレディネ!1人で乗って良いアル!」
「良くねーの!ホラ!こっち来なさい!」
ひそりと視線を互いに投げた新八と神楽の2人は。
次に、何処か満足そうにしている面差しの銀時を見た。
「 神楽ちゃん、」
新八が優しく声を落とす。
「仕方ないアルなー!銀ちゃん一緒に乗ってあげるネ」
「違うから!俺が一緒に乗ってやるんだからな、そこんとこ間違えんじゃねーよ?」
「もう今更無理アル」
「分かりましたから」
大袈裟に肩を竦めて見せる2人の背後で。
がたんと重低音を作りながら眼の前に滑り込んできたその乗り物は。楕円形を半分に切った様な形をしている、その先端が鋭角になっているのは速さを出す為なんだろう。
乗っていた集団は反対側に「楽しかったー」「もう1回乗りたいよねー」それぞれ友達と話をしながら降りて。
手前で待っていた数人の集団は吸い寄せられる様にして開いた自分の前のゲートから乗り込む。
「ホントだって!銀さん安全バーなんて要らないくらいだから!余裕だから!」
「いや、それはして下さいよ」
「ドキドキするアル!キャッホーゥ!!!」
神楽が嬉々として発する言葉と同時に身体を弾ませた。
グンッとスピードを持つその機械(カラクリ)は更に直進以外にも左右に揺れると言うオプションを付けて、
「神っ楽ちゅあーん!お願いだから止めてっ!怖くないけど!銀さんは怖くないけど!身体揺するの止めなさーい! ───ッッギャー!新八ィィィーどうせ死ぬなら新八と繋がったまま殺せェェェェー!」
発進する。
「銀さんアンタ本当にもう死んでくれェェェェ!!!」
「新八ィィィ!!!銀さん死んじゃう!冗談じゃなく!新八の大好きな銀さん死にそうだから!怖くないけど!死にそうだから!」
「もっとスピード出すアル!こんなんじゃ私を満足させられないネ」
「神楽ァァァ!頼むから動くんじゃねェェェ!柔和しく乗ってなさぁぁぁぁい!!」
「神楽ちゃァァァん!ちょっと横の天パ殴っちゃってェェェ!」
「胃がヒュホーってなるアル!いい感じになってきたヨ!」
同乗している他の人の声なんてもの、全て打ち消して響くのは3人の叫び声。
煩く。
どこまでも賑やかに。
「もっともっとネ!揺らすアルゥゥゥゥ!!!」
「新八ィィィィー!子供作ろう!銀さんと新八の遺伝子後世に残そう!!!」
「いい加減にしろおォォォォ!!!」
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神楽ちゃん寝ちゃいましたね
騒ぎすぎなんだよコイツは、あー重てぇ
落とさないで下さいよっ、でもまさか銀さんが絶叫系駄目だったなんて意外だなぁ
お前いったい何聞いてたの?怖くないって言ってんじゃん
銀さんて怖いもの無しだと思ってましたから、怪我するのも自分生命を張るのも自分、で
ねえ?銀さんの話聞いてる、新八くん?
だから嬉しいんですよ、僕にだって銀さん護れるのかなーって。まあ絶叫系の乗り物の話なんですけどね。また、行きましょう?次は隣に乗って手握ってあげますから、ね?
あーもうお前って何なの、その上目遣いとかはにかむ顔とか。可愛いすぎんですけど。襲いますよーコンニャロー
ランドに行った時の友達との会話から。真選組がこうなら銀さん達はこうじゃね?的な話に盛り上がりまして、忘れない内にしたためてみました。
あっ、その時は銀新感は皆無でしたけど。私が足しました、えへへっ
あとガッテンでは勃起不全なんて言わないと思う←
(2011.12.12)