日記SS | ナノ

お菓子は誘う口実


今日の空は朝から少し調子が悪いらしい。
起きた時には見えていた太陽も青空も学校に向かっている途中には早々と鈍い灰色の雲が広がって。
雨でも降るのかと見上げた空は、しかし暫くすればまた太陽と青空を頭上に見せた。そしてまた直ぐに分厚い雲が覆う。
今は薄い雲はあるもののその色は白く、橙に申し訳なさ程度に黄色が混じった空の色、秋のそれらしい。

だからと言ってその調子の悪さが流川に直結するかと言えばそれは全く関係の無い話で。
練習中も練習後の自主練だって何時も通り。
そもそも流川に天気を賞翫するそんなものも持ち合わせてはいない。
それよりもボロボロの自分の自転車、そこに座った愛おしいどあほうが無防備に預けてくれるその背中の暖かい体温を楽しむ方が重要だと流川は思うのだ。



「あ、ルカワ トリック・オア・トリート!」


吐き出す息の序でみたいに花道が言葉を群青色の空に向けた。ちらちらと小さく白く星が輝いて、
花道の美味しそうな飴色の眼に映り込んでいるんだろうか、流川はそれを見てみたいと思う。
自転車で切る流れる風にもう冬の厳しい寒さを思い知らされて。ひんやりと冷たい。


「…なに?」

「ぬ?知らねぇの、ハロウィン」

「知ってっけど…」


興味ねぇと、小さく眼線も一緒にして流川は返す。
それに鼻の先を赤くした花道が笑った。


「キツネ、お菓子寄越せよ」

「…持ってねぇ」

「あー喰いてぇなー、なんかあったかいやつ」

「コンビニ、行くか?」


おごっけど、
ぽつりと流川が白い息を浮かべれば。
暖っかく見えそうな白い塊が流れ行くのを花道が眺める。


「んーイラねぇ、そのかわりイタズラさせろよ ルカワ」


にやんと花道が笑う。なんでも分かったかの様な笑顔で。
途端に心臓が痛くなったの急に強い風が吹いたからではない。


「───…いくらでも、」


してくれたって構わない。寧ろ望むトコロだ。どあほうに悪戯されるならそれは最高で、嬉しい。
流川はペダルの上の脚にぐんと力を押し入れる。
天才的にやってヤル!花道の声が高く上がった。





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はっぴーはろうぃん!
花道はきっと流川がお菓子を持ってない事を分かり切っていてこの話を振ったんだと思います。
なんたって天才だもの!
(2011.10.31)



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