寒い、
と、サンジは布団の中の身体を小さくなる様に折り曲げた。
これがなんの意味をなすかは分からなかったが身体が自然とこの体勢を取っていたのだから仕方が無い。熱が逃げにくいとかそんな意図があるんだろう、反射的にしたものだ、悪くはならないはずだと思う。
何て言うか兎に角寒い。その一言でこの部屋は出来ている。
眠りに就いたのはほんのつい先刻。その時は紛れもなくうだる様な暑さだった。まさしく夏のそれ。
折角お風呂でさっぱりさせた身体は直ぐにじとりと汗を滲ませ、布団や服さえも着てるのが億劫な程だったと言うのに。
眠っていたこの僅かな数時間で一体何があったと言うのか、今は兎に角本当に寒い、それだけだ。
夏の気候から、冬島のその中でも極寒の気候の方に船が進んでいるのかも知れない。そう言えばナミさんが明日辺りに風の都合では何とかって港に寄れそうだと言っていた気がする。其処が冬島なのだろう、
独りごちた視線の先には、きっとサンジと同じ様にこの寒さで眼が醒めた誰か、(多分ウソップ辺り)が引っ張り出したんだろう、棚から乱雑に毛布が数枚落ちている。
今、あの毛布に包まっている奴はぬくぬくと夢の中を満喫しているんだろう。
その温もりを求めて伸ばしてみた手の、遥かまだ先に毛布はあって。どうやら布団から出ない事には届きそうにない。
あんなに暑かったのだ、服も着ていられない位に。だから布団の中のサンジの服装と言えば半袖にズボンの簡易なもの。
毛布の温もりは恋しいが一度感じてしまった布団の外の冷気に布団から出て毛布を取りに行くと言う選択肢には気が削れてしまった。
しかしもう完全に眼が醒めてしまった、クソ寒い、
やっぱり寒さを我慢して毛布を取りに行くか、取りに行く間の寒さを思えば何時も起きるその時間まで寒さに震えながらやり過ごす方が遥かに長い。
外に手を出した時に冷気でも入り込んで来ていたのか、サンジは小さくぶるりと身体を震えさせた。
よし、と気合いを作ったそんなサンジの視界の中で、酷く怠惰に黒い影が動いた。
外に出掛かっていた身体を元に、サンジはコイツもきっと自分と同じだろう序でに俺もと毛布を取って貰おうと半分以上冷えてしまった布団にその身体を納めた。
様子を窺うサンジの前で、しかしその影は毛布には向かず、
あれ?トイレかよ?この寒さで腹でもやられたか?
やっぱり自分で取りに行かないといけないかとサンジが諦めを含んだ白い息を黒い空間に吐き出せば、それを目印にしたのか、その影はそのままサンジの布団にぶつかった。ぶつかる?いや、突進、のが近いかも知れない。
凄い勢いと衝撃に、
ん?んん?
眼を凝らせばその影の正体はゾロ、の様で。
寝呆けているが故の無意識か、寒さに完全に冷えたその身体はぎゅうぎゅうとサンジの、ゾロのそれよりまだ温かみがある身体に押し付けられた。
冷てぇ、てか、えええええ──────!!?
何これ何これ、これどう言う状態!?
「 ─────、」
小さく聞こえてきた声に。
サンジの思考がふっと緩む。
自分の体温を奪いながらすうすうと規則正しく寝息を立てるそんなゾロの髪の毛にサンジは鼻先を埋めた。
仄かに残る風呂の名残にサンジは眼を閉じる。
確かに、
────あったけぇ
きっと其処で転がってる毛布よりも。いっとうに。
おやすみ、明日起きたらきっと顔を真っ赤に自分の行動に羞恥にかられるんだろうそのゾロの姿を想像してサンジは笑みを残しながら、ぎゅうぎゅうと次第に2人の体温が溶け合って混ざるその身体を抱き締める。
朝食を作り始める時間にはまだ余裕がある、サンジは重くなっていく瞼にその意識を手放した。
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次の日、サンちゃんは寝坊してたらいいよ
ある日のあたしの夜より。ホント寒くて眼が醒めたんです、毛布引っ張り出してスエットに着替えました真夜中ってか4時くらいに。
(20110923)