日記SS | ナノ

未来編捏造


見遣る窓の外は10年後のそれではない、何時もの‥今まで通りの並盛中の校庭。登校してくる生徒は朝練か。
室内は風紀委員(主にほぼ雲雀)が独占しているその応接室。
何も変わらない、本当にあの数日間が夢だったようなそんな錯覚。それでも“アレ”は本当で、がつんと雲雀の頭に残る。


帰ってきて早々、疲れててくたくたで、草食動物なんかと群れたりなんかしたから。
鳴る携帯無視しようとしたけどディスプレイに写し出される名前は無視出来る訳がない笹川了平で。
出てみれば煩すぎる程の音量、携帯を少し耳から離す。「ヒバリ!今直ぐ会えんか?」「……無理」「そうか!10分後待ってるぞ!」僕の話聞いてる?そう言う前に切られてしまった。
ホントむかつく、それでもそんな切れてしまった携帯をズボンのポケットに突っ込んでバイクの鍵に手を伸ばしてる自分にもむかつく。


やっぱり未だバイクで風を切るのは肌寒い、なんて着けば笹川はもう其処に居て。
暗い中でもそのたった1人の人物を見付けられる僕に感服するよ、全く。

「………何?」

至極不機嫌そうに口を開く。

「うむ、実はヒバリに言っておきたい事があるのだ」
「何?」

何だか笹川の声が重い。
何時ものあの快活とした感じがないのが、苦虫を噛み潰した様な顔が‥一体何なの?

「実はな…未来の俺の部屋でだな、見たんだ」
「何を?」

何回「何」って僕に言わせる気なんだ、そろそろ飽きてきたんだけど。

「未来の俺、が、女と肩を組んで一緒に写ってる写真、を」
「そう、それで?」
「ずっと極限に考えていた。そいつに、俺は、その事を伝えたい」

ざわざわと騒ぎ立てる樹が煩かった。
歯切れが悪いのは少し悪いと思う所があるからなんだろう。
シュッと風の音。手に感じる冷たい感覚。地面に倒れる音、呻き声。
僕は、未来から帰って来て直ぐに会いたかったのだ!向こうではゆっくり喋れなかったからな!、なんて期待していたのに。笹川は違う事を考えていた。
のこのこ来た僕が馬鹿みたいじゃないか。何をしに来たんだろう。恥ずかしいだけの間抜けな奴じゃないか。

「勝手に、すれば?僕は、止めない、から」

嗚呼、絞り出す声が震えていませんように。



ガラガラガラ!!!響く音。現実に戻される。
ゆっくり浸る事も出来無いの?雲雀は顔を上げてその煩い根源であるドアを睨む。今は凄く機嫌が悪い場合によっては噛み殺すのもありだ。

「ヒバリ!やっぱり此処に居たのか!極限におはよう!だ!」

頬に大きい絆創膏。痛々しいそれは昨日付けた傷。
それはやっぱり嘘では無かったと否応なしに伝えてくる。
走ってきたのか、息が切れて肩が上下していた。
何してるの?朝練じゃないの?

「朝一で言ってきた!やっぱり云いたい事を言うのは極限にすっきりするな」

知らない、よ。そんなの。だって僕は言わない。言えない。
そんな笑顔を見せる為にやって来たと言うのだろうか。雲雀には見たくないもので、未だ何も音を発せていない。
背中に太陽を受けた雲雀は黒く影になっていて表情なんてもの分からない。

「どうした?ヒバリ?極限元気が無いぞ!」
「別に。それで何の用なの?」
「会いに来たんでは無いか!」
「……別れでも言いに?」
「何なのだ、それは?」

了平は眉宇を顰める。どうしたと言うのか、今日のヒバリは。
いきなり入っても何時もみたいに“ノック位してよ”なんて怒りもしない。“朝から煩いよ”と何時もの少し携えたその笑顔もない。
何処か具合でも悪いのか、いよいよ本気で心配になってくる。

「…写真に、一緒に写ってた人に会いに行ったんじゃないの?」
「そうだが、でもそれが何故別れ話と繋がるのだ?」
「その人に言ったんでしょ、10年後自分達は付き合ってるって」
「おお!言ってきたぞ!どうやらそうみたいだったからな!“俺はヒバリが好きだから付き合えん!悪いが他をあたってくれ!”とな。やっぱりこう言う事ははっきりしとかないとな」
「…言いたい事、って、それだったの?」
「当然だ!他に何があると言うのだ?」

嗚呼もう本当に、笹川。君って僕の想像を越えてるよ。
フワッと風の音。手に感じる暖かい感覚。床に倒れる音、呻き声。

「本当にいいの?そんな事云って。上手くいったら10年後付き合えるんでしょ、その人と」
「俺が好きなのは極限にヒバリだけだからな!問題ない!」

馬鹿じゃないの、言葉は音にならずに消えた。その代わりに小さく唇が触れ合う音がする。

「俺も極限に好きだぞ!ヒバリ!」
「“も”って何なの?何も言ってないよ」
「そうか?ヒバリの頬がピンクになって小さく笑っていたからな、そう聞こえたのかも知れん!」

………ホント君には適わないよ、エスパーなんじゃない?僕の、心を読めるなんてさ。



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未来編から帰ってきての了ヒバ。こんなやり取りがあれば良いな、倖せ過ぎる、な捏造話。
写真を見付けた時の了平さんのテンションは某了ヒバサイト様で読ませて貰った小説(これは、俺はヒバリと別れたのか?そんなの極限に嫌だ!この未来を変える為に頑張って過去に帰るぞ!うおー!ってお話で)、だからこんな甘いので良いのです^^*!
(2010.03.31)




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