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はっぴーはっぴーNEWYEAR!


夜陰に黒く塗り潰されて耳を澄ませば聞こえてきそうな除夜の鐘(近くに寺院がある訳では無いので本当に聞こえたならばそれは幻聴に他ならないが)。
そんな静かな中聞こえるのはかちゃかちゃと自分が作る音で、俺は明日の為の御節料理を重箱に彩り見栄えを考えて詰めていく。
うん美味しそうだ、なんて満足して1つ息を吐き出せば視界の端に映る自分以外の存在。目配せをして。


「──‥寝ねぇの?」


テレビも点けず笑ってはいけないも紅白も行く年来る年さえも見ずに大きな音が出ない様に、電気さえも台所の僅かな小さなものでしているのは、大好きな同居人の睡眠の邪魔にならない為で。
腹でも空いたのかお酒が欲しいのか、時計の針は頂上間近に迫っていて後数十分で新年と言う所。
何時もなら早寝遅起きのこの男(不規律極まりない)は疾っくに眠りに就いている時間。今この部屋で起きているのは俺だけのはずで、思いもよらない相手の崛起に首を傾げる。


「眠たくねぇの?テメェ」

「あ?眠てェに決まってんだろ」


返される言葉は正直愛想なんてものは含まれておらず、腹に溜まった蟠りから眉間に寄る皺が3本。
それでもそんな俺の変化に気付かない相手はソファに身体全部を預けて凭れながら繰り返す大きな欠伸。なんとまぁ豪快だ
どうしてそうでまでして起きていたいのか。


「だったら寝ろ、クソ野郎。わざわざ眠いの我慢して起きてる意味が分からねぇ」

「────‥“てめェ”、それで充分だろうが」


え?なんて振り替える。
手に持つ箸が震えてるのなんか知った事じゃない。
だって嬉しすぎだろ、こんなの。サプライズ過ぎるこんな時間ぎりぎりに。


「こっちはわざわざ眠いの我慢して起きてんだ。早くそれ終わらせろ」


年変わるだろうが、なんて吐き捨てられる台詞は酷く冷たいもので、でもその冷たい言葉は心に届く頃には酷く熱い。
年が変わるだろうがって、言葉の受け取り方を間違っていなければつまりは変わる瞬間には一緒に居たいと言う事で。
どんな難しい勉学の問題よりも遥かに難問。それでも答えが間違っている気はしない。

眼は相手だけに向けられていて、それでも手は素早く御節を重箱に詰めている。
何だこれ、俺の新技か
顔を通り越した熱が耳まで到達して赤く染め上げているのが分かった。
“俺も傍に居たい”だなんて何だか格好良過ぎる奴の後に続くのはテメェに負けた様な気がして、むかつくから俺は思いっきり飛んで、抱き付いてやった。


「今年もクソお世話になりました!ゾロっ!!」


先に言うが勝ち、で。
見上げた顔は何処か不服そうに口を一文字に結んでいた。怒鳴ろうとした言葉が不発になれば、まあ‥当然とした反応だろう。
ザマーミロ
ニ──ッと勝ち誇った笑みを向けてやれば、くいっと近付いた顔。近くなった唇が互いに重なって。
凄いあつい……これは、今年最後のキス。




「明けたな、おめでとう」


ニッと笑い返されて赤くなった俺の顔に近付いたむかつくほど格好良くて精悍で澄ました顔。離れていた唇が再び触れ合って。
あつすぎる……これは、今年最初のキス。
そして……これ、は………、ぎしりと背中にスプリングが軋むのを感じて俺はゾロの首筋に両腕を延ばした。
辺りにゾロの匂いが広がって俺を覆う。ゾロだって俺の匂いに覆われる。
一緒に迎えられる終わりと始まりは甘ったるい新年を予感させて。
去年も今年も来年も春も夏も秋も冬が来てもずっとダイスキだっ!



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ゾロに年を跨ぐ瞬間に触れ合っていたいって…一緒に居たいって言わせたかったのです^^*
今年も甘ったるい砂吐く感じのゾロにサンちゃんなサイトですが沢山宜しくお願いします!
(2010.01.01)



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