日記SS | ナノ

めりーくりすます!


暮れの迫った師走と言うこの時季にイブとクリスマスなんて行事があるものだから忙しさも一入で、その前日から自分の時間は準備やらで拘束されてしまい実質3日間、何故高がキリストの誕生日とその前日と言う事で(そもそも前日なんてもっと関係ない)本人が存在しないその場所で赤の他人がわざわざケーキを食べる習慣になってしまったのか、昔の奴等の策略か恨むぜ某有名キャラクターお菓子会社の仕掛人に発案者なんて、サンタの砂糖細工にチョコの家赤い苺が辺りを引き締めてふわりとやわらかく綺麗な混じり気のない白い生クリームたっぷりの店オリジナルケーキを箱に入れていたら思わず溜息が零れてサンジの頭は隣に居たゼフに景気良く叩かれる事となった。
そんな相手にちらりと侮蔑の視線を向けて「やーん叩かれちゃったぁ、可愛い」何て一緒に来ていた友達と楽しそうに会話するお客ににっこりと最上級の笑顔で手渡せば、受け取った相手の頬はほんのりピンク色に染まる。

サンジ勤めるレストランはメインは食事でケーキショップではない。
それでもデザートに出すスイーツの味だとかの人気は嬉しい事に非常に良くお客さんからの要望もあって、このクリスマスの2日間はこうしてケーキの販売もする事となった。レストランとの併用となれば忙しさなんてきっと労働基準法を逸している(労働基準法に忙しさを量るものなんてあるのかは知らないが)。
そしてサンジはこの人の波が引く気配なんて絶対来ないであろうケーキ売場を任されていた。



「有難うございました!また来てねー」


ちらりと盗み見する時計は9時を少し過ぎた所で、若干ピーク時よりは落ち着いてきた店内を見渡す。
友達同士だったり恋人家族、皆が倖せそうで楽しそうで嬉しそうな表情を作って。
そんな情景に少しばかり暖ったかい気持ちになりながら、それでも従業員の気持ちを汲んでもう来ないでくれなんて願いつつ。あと店の営業時間は残すところ1時間。早く過ぎる事ばかりを思う。
皆が大切な奴等と過ごす日ならば従業員にだって大切な奴が居たりする訳で、色めき立っているこの空間でサンジにだって恋人と言う一緒に過ごしたいロロノア・ゾロって言う相手が居たりして、(休みが欲しかったけど休みのやの字を口に出しただけでゼフに蹴り飛ばされた)、1人は寒過ぎる。

テメェは?
なぁゾロはちゃんと寂しくなってる?

帰りたかったのはサンジだけでは無かった様で、閉店時間を迎えれば皆散々に目的地へ足早に散っていく。
それはサンジも例外で無く、取り置きしておいたケーキ片手に家へと帰る。



「ただいま!ゾロ!」


雪は降ってはいないものの冬の夜は凍える様に寒く、こんな日に1人ともなればその寒さは更に倍増して、サンジは明かりが灯った我が家へと駆け込んだ。
少しでも早く触れ合いたくて顔を見たくて声を聞きたくて堪らなかった。
スリッパを足に履くたったそれだけの時間も煩わしくて、ひやりとした廊下を靴下の向こうに感じながらサンジはリビングに走った。


「ゾロ!」


弾んだ声で覗くリビングには望む姿なんて無く、テーブルの上に乗った四角の箱は何処か見覚えがあって近付いて見れば中にあるのは生クリームたっぷりのケーキで。そうだこれはサンジの働く店から何軒か隣のケーキショップの物だと思い当たる。
その横に自分が持って帰ったケーキも並べて置いて。喋り続けているテレビに向かってサンジは首を傾げた。


「ケーキ、買ってきてくれたのか?」


テレビは何も返さない。収録したものをただ流すだけ。
サンジが話し掛けたのはテレビなんかでは無く、その手前に置かれたソファ‥でも無く。


「……違ェ」


其処に隠れる様に座っている恋人。


「てめェが仕事だって言うから、本当に仕事してんのかと思って…」

「見に来たのか?」

「そしたらその店のやつに捕まって買わされた」

「俺、信用ねぇ?ゾロを置いて他の奴と会ってるとかそん、なの…」


ある訳がない
何よりも大事なのはゾロで、ゾロを中心にすれば周りなんて霞んでしまうのに


「……我儘だ、単なる 優先する程のモンなのかと思っただけだ」

「ゾロ、より…」

「でもてめェが作ったケーキ買う奴は皆嬉しそうだった」


良かったな、なんて振り返ったゾロの表情にサンジは堪らなく抱き付きたくなって。ソファさえも飛び越えて伸ばした両腕でゾロの身体をソファに押し付けた。
スプリングが軋む音を向こうに、サンジは愛おしくて可愛くて仕方がない恋人に酷く甘いキスをした。


「……ケーキは、」

「んなもん後だ」



-----------
おれだって街歩けば眼に入るのはこの世の倖せを独り占めしたかの様に倖せそうな奴等ばっかりで…
ゾロだって寂しかったんだ、ってお話。
メリークリスマス\(^q^)/…で締め括ります駄目ですかねなんかふわっとした文章すぎる(…)
(2009.12.25)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -