日記SS | ナノ

Halloween


「ゾロ、ゾロっ!」


眠気を纏うゾロに聞こえる声はやたらと弾んでいる。
こう言う時のこの声はあまり良い気がしない(悪い気もしないが今は伏せておく)。嫌な予感がするのだ。
眼を開けるのを思案していると太陽とゾロとの間に割って入る影。光が遮られ夜が訪れたかの様になる。


「ゾロ!」


いい加減眼を醒まさないゾロに苛付きを覚えたのか、その声に怒りを滲ませる。
このまま寝たフリでも良いが脳天に蹴りを落とされるのも何だか憤然に思えて漸くゾロは眼を開けた。
太陽との間にサンジが立ったお陰で眼を開けてもそれ程、眩しさを感じる事は無かった。


「……何だ?」


へっへーと笑うサンジの笑顔は遮られた太陽と同じに遜色無く、そんなにゾロが眼を開けた事が嬉しいのかと伺えた。
(あー、眩しいな)なんて眼を細める様にして見たら、手が差し伸ばされる。


「ゾロ」


弾む声に眉間を寄せた。眩しさからでは無い。


「トリック・オア・トリート!」

「…………」

「トリック・オア・トリート!…お菓子をくれなきゃ悪戯するぜ?」


ふうっと溜息。
成る程と、サンジが変に機嫌が良く声が弾んでる理由を理解する。


「ホラ、ホラ、ゾロ! お菓子をくれなきゃ悪戯するぜ?」

「………ン。」

「へっ?…え?」


ころん、差し出した手に僅かな重み。見てみればピンクの包み紙に苺の模様。仄かに洩れる甘酸っぱい薫りは、苺飴。
当然「持ってねェ」と言う言葉を期待していたサンジの表情は見るからに力の抜けたそのもので、言われた通りにお菓子を渡したゾロは悪戯される謂われも無く、してやったり、なんて2度寝に入る為に体勢を整える。


「なっ…いらねぇ!返す!!」

「ああ゙!?」

「だから悪戯させやがれ!」

「飴やっただろーがっ」


ぐいっと突っ返される掌と苺の飴に、その頬に1発鉄拳を食らわせば、気を抜いてたのだろうかその身体は甲板に俯した。大げさに床に倒れ込む姿にそこまでしてねェだろどれだけ打たれ弱いんだと、些か面白さも感じる。
違うと必死に訴えても、お菓子が欲しかった訳じゃない欲しいのはゾロ、だ、なんて叫んでも、掌に感じるころころと丸い固さのピンクと赤のそれ、は。
折角ゾロから貰ったとなれば押し返すには余りに忍びない小さな甘さ。

ピリリと紙解けば淡いピンクから少し濃くなったその色がその丸い姿を見せて、苺の甘い薫りを届けてくるものだから、サンジは口に放り込んだ。
甘酸っぱいそれは今の気持ちそのものの様にも、僅かにサンジの頬を倖せで染め上げて心を満たす。
クソぅ…敗け、た。と思う。今日はこの苺飴とピンクに免じて敗けてやろう、とサンジは眼の端にゾロの姿を捕らえ、眼を閉じる。
苺の匂いが何処までも甘く広がった。



(チョッパーがくれたの返さねェで良かった、な)
チョッパーが「ハロウィンにはお菓子が貰えるってナミに聞いたんだ!ゾロにも分けてやるよ」なんて置いていったのは数分前の出来事。



----------
はい、ゾロがお菓子を持っててサンちゃんの悪戯失敗、とかそんなのが書いてみたかったのです。
着地地点は見失いました。───…誰か助けて下さいorz
Happy Halloween\(^O^)/
(2009.10.31)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -