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さよならと言うけれど


「別れたい」そう切り出したのはおれ。
何時もの様にあいつがおれの部屋で晩飯を作ってくれた夜。後片付けをしている背中に言った。
おれはあいつの背中なんて見ちゃいない。テレビを見ていた。
内容なんて入ってきていないし、理解していたとしても大して面白くない内容なんだろうと思う。
それよりもあいつの顔を見たくなかった。







冬でもないのに冷たく感じる空気が静かに動いて「分かった」そう背後で声がする。
そうその酷く落ち着いた声と言葉で、あいつは笑った。
おれは眼を見開く。でも意地でも振り向けなくて見ているのはテレビ。
“笑っている”そんな気がしたのだ。
無意味にパチパチとチャンネルを変える。
……言葉は出なかった。何をしているんだろう。こう言う時にだって素直になれない自分。



そのままおれ達は終わった。



おれは何処かで思っていた。
おれが「別れたい」なんて言い出したらあいつの事だ「嫌だ、俺はゾロが好きだから別れたくない」そう言って取り乱すだろう、と。
そして少なからずおれはそう言ってくれる事を期待していた。
何で分かったなんて言うんだ?
自分で言い出した事、望んだ結末。それでも拒否される事を期待していた。


おれは実際の話あいつを嫌いな訳が無い。
ただ不安や焦り、あいつを必要と思い過ぎてる自分に恐怖した。だから別れたいと思った。
思ってしまえば後は逃げれば楽になれる。「別れたい」そう言って楽になれない事を悟る。直ぐ傍にあったのは楽なんかでは無く後悔。
別れたその後は…、もうあいつはおれの元に来る事は2度と無いと言う事なのだ。今迄通りの生活を望めない。もう本当に終わったのだ。
おれは自分が傷付くのを怖れて逃げた。後にならないと気付かない莫迦野郎。



数日前、偶然街であいつを見かけた。
オレンジ髪の女と肩を並べて楽しそうに歩いていた。
向こうもおれに気付いて、そして気まずそうな顔を見せる。オレンジ髪の女もおれとあいつの空気に気付き、にっこりと笑顔を見せてきた。
笑顔の意図は分からない。
馬鹿馬鹿しいけどおれは1人泣くのを堪える事に必死だった。


酷く冷めた白い頭の中理解する事は、嗚呼、そうか。あいつは最初からおれと別れたがっていたのか。次の相手が居たから…
ただおれとアイツとの関係を言い出したのはあいつ、で、自分から言い寄った手前自分からの別れは切り出しにくかったのか。
其処におれからの別れ話。願ってもないよな。
だからすんなり受け入れた、そう言う事か。
自分の考えに穴が見付からない。


その内「寄りを戻そう」あいつからの連絡が来るんじゃないかと期待していた自分に嘲笑う。
携帯が鳴る度、メールが届く度におれは何を願っていたのか。情けない。



おれ達は終わった。
運命の線は間違い無く交差していて、それが今離れて重なり合う事は無い、2本の糸は平行に進み出したのだ。



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切ない話を書いてみたかったのですが出来上がったのは乙女ゾロ。何で私の描くのはこんな… orz
月日は流れて5年。別々で来ていた2人が居酒屋でばったり遭遇。酔いも手伝って切り出すのはゾロで、別れ話のそこにはサンジなりに考えてる事もあって、オレンジ髪の(ナミさんな訳ですけども)笑顔の意味も分かるまで考えていたのですが目指したものは切ない話だったのでここで終わらせてみました。
(20090914)




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