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口内炎


「晩飯のメインはお好み焼きだ」


ソースが鉄板で焼ける匂いと共に、鰹節と青海苔が踊るお好み焼きがテーブルの上に並べられた。
どうしてこうもソースの焼ける香ばしい匂いは空腹感を更に煽るのだろうか。
船長を初め、奇声にも似た声を上げながらウソップやチョッパー、ブルック達がお好み焼きに手を伸ばした。
サンジはやはり紳士で、ナミやロビンの物はその男共と別に作られてある。たっぷりソースの掛かった上にサンジ特製のマヨネーズでハートマークとそれぞれの名前が書かれているのがそれに当たる。
「どうぞ」の声と共にそのお好み焼きを手渡した。


「─────痛っ」


ふとそんな声がして、ナミは横から自分のお好み焼きを狙うルフィを退けながら眼を向けた。
お好み焼きを思い切り頬張ったのであろう頬が膨らむゾロを見てみれば、その表情がくしゃっと歪んでいる。


「何?どうしたの?」

「口の中が… ?」


ナミが不思議そうに聞けば、声を上げた当の本人も不思議そうに顔を顰めた。
一体どうしたと言うのだろう、お好み焼きを普段通り頬張っただけだと言うのに口腔内にピリリと痛みが走ったのだ。


「見せてみろ」


ナミとそんなゾロのやり取りを見ていたルフィがおもむろに手を伸ばす。
無遠慮にゾロの口許に手を当てると口の中をぐいっと表向けた。
ゴムゴムでも何でも無いゾロにとれば中々痛いもので、他人に口を(しかも中を)引っ張られるのは妙に変な気分だったりもする。
口腔のピンク色をした頬部分よりも更に赤い膨らみがある。中央は心做しか白く、それが更に痛みの原因を引き起こしていた。


「口内炎、ね。しかも痛そうね。大きいし刺激が少ないような物のがまだマシなんじゃない?」


「サンジ君───」と声を掛ければ、ニッコリとした笑顔と共にどすんどすんとテーブルに物が置かれる音がした。
皆が一斉にサンジが置いた物に目線を向ける。
麻婆豆腐、カレーライス、キムチ…喰べ合わせやジャンルそんなものを全て無視した(普段のサンジならしないであろう)そんな刺激の強い料理がテーブルを占拠した。
「さぁどんどん喰え」なんて言うサンジの表情も声質も穏やかで優しいものだと言うのにどうしてか背後に見えるオーラはどす黒く濁って見える気がする。

従順なのか無垢なのか修業の一環とでも思っているのか、はたまた馬鹿なのか、それを特に気にする訳でも無いゾロが口に運べば、やはり口内炎への刺激を受けて顔を顰める。
それをサンジは真っ直ぐ見詰めては締まりの無くなった表情を更にピンクに線を入れ眺めている。キュンと胸の絞まる音さえ聞こえてきそうだ。
それを更に見ているナミを初めとする他の皆が眺めて、ゾロが気の毒だと憐憫の眼差しを向け、サンジには非難のそれを向けるしかなかった。


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ゾロのそんな顔滅多に見れねぇんだぞ、貴重なんだぜ。可愛いんだ!
ふとあたしの口腔に出来た口内炎から広がった世界。
(2009.09.01)




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