日記SS | ナノ

コンビニ


「ゾロ、コンビニ寄らねぇ?」

「ア?」

「暑いからアイスかジュース買って帰ろうぜ」


真夏真っ盛り。
太陽が真上から少し斜めに傾き始めたと言うのにまだまだ気温は高く、蝉も休む事無くその鳴き声を上げていた。その蝉の声が更に暑さを煽っている気もする。
じっとりとアスファルトから登る熱気が身体を纏う感覚にサンジはうんざりした様子で太陽を睨み付けた。
そんな時ふと眼の端に入ったコンビニ。
まさに天の救いだとサンジとゾロは僅かな涼しさを求めて店内へと足を踏み入れた。

ウィンと機械音と共にゆっくり自動ドアが開き、中からはこれでもかと冷やされた空気が流れ出てくる。その流れ出る冷気さえも勿体無いと言う様に自動ドアはゾロとサンジの身体を向かい入れると音も無く閉まった。
外の暑さから逃げてきたのはどうやらサンジ達だけでは無いらしい、数人の客が雑誌コーナーで立ち読みをし、お菓子コーナーを買う気も無い奴がただぼんやりと歩いたりしてひんやりとした冷房を満喫して居る。
店員が愛想程度の挨拶をさらりと向けた。

外のうだる暑さがまるで別世界だったかの様に店の中は落ち着く程涼しい。買い物を終えて店を出てからの帰路を考えれば、再びあの灼熱の中に出るのかと思ってしまえば憂鬱になる。が、今は一旦その考えは無かった事にする。今はこの涼しさだけで良い。
外の暑さから解放されてサンジは安堵の息を吐き出した。この際機械が作り出す人工的な物でも何でも文句は言っていられない。
冷房に冷やされた身体からは自然と汗が引く。さて目当ての物は、と漸く此処に来てきょろきょろと辺りを見渡した。
入り口に重ね積まれた籠を手に取り、直ぐ横にある色採り取りのアイスが入る冷凍庫にちらりと眼をやり、やっぱりアイスより喉の潤いを満たしてくれるだろうそれを求めてペットボトルがずらりと並ぶ冷蔵庫に向かう。
新商品や売れ筋品の並ぶ中、何にしようかと扉を開ければもう数度温度が下がった気がする。その中から数点選び、自分が飲みたいのやゾロが好きそうなのを見繕い籠の中に放り込む。
ジュースだけでは何だか物足りなさも申し訳なさをも感じ、サンジはもう少し買い足す為にお菓子売場へも向かった。
此処でも棚から数点見繕い、遅いながらもそう言えば確かに一緒に店内に入ったゾロが近くに居ないとサンジが首を捻り掛けた其処に何処に行っていたのか「おい」と声が掛かる。
「何だ?」と言い掛けた其処にゾロが握り拳を差し出した。


「これも」


買え、と差し出された物はどうやら自分で買う気はないらしい。
カコンと小さく音を立てて籠に吸い込まれたそれを視線で追う。視線で追って、サンジは追った事を直ぐに後悔した。
冷房のお陰で熱量が引いた身体が今度は別の熱気を帯びる。
ギャ──と恥ずかしさを持つ声が1つ。
最近のコンビニはこんな物まで…
人の羞恥を誤魔化すかの様に派手に、でもその色取りは人の眼を引き付けるのには充分で、パッケージに書かれている文字はやっぱりソレその物だと主張している。


「な、テメェ…!これっ…!」

「もうねェだろ」

「だ、からって…テメェ、こんな…」


そんなにヤリてぇのかと、自惚れとも思える問いを小さく呟けば「やりてェ」なんてさらりと言われてしまえば、嗚呼…もう負けだ。
一体コイツはこの売場でどんな顔をしてこれを選んで手に取って来たのか。


「──…この暑さに欲情心でも壊れたか、このクソ獣野郎」


サンジは何だか外の熱気が移ってしまったかの様な籠を手にレジカウンターへと向かった。
今度は薬局で3箱がパックになったお徳用を買ってきて煽ってやろうと考えながら、今夜は暑い夜さえも待ち遠しく思う。



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はい。何だかお下品ネタ、こんどぉむ話。一応本文ではやんわりと物名を隠しております。
ゾロが積極的なら良いな、と爆走して書き上げました。
(20090818)




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