「…お疲れ」
ぐったりとしたゾロをキッチンに迎え入れたサンジは心底そう言葉を告げた。
今日は節分。
つい20分前の事だっただろうか?
「はい。ゾロ!」
そう言って差し出されたナミの手には鬼のお面。
ヒクリとゾロの眉間に皺が寄る。
「こりァ…一体何の真似だ?」
「何の真似って 今日は節分でしょ?豆撒いて福を呼ぶの。だからハイ」
「だから何でこれをおれに渡す」
「だってアンタの顔からしてピッタリでしょ?お面無くてもいいかとも思ったんだけどゾロの顔だったら豆が投げにくいじゃない。アイツ等が」
ナミが“アイツ等が”と言って見た方にはルフィにウソップにチョッパー、そしてフランキーにブルック。
……だから何であいつ等2人まで混ざってるんだ
ゾロは呆れて溜息を吐いた。
5人の手には煎られた豆が入った枡。(少しずつ中の豆が減ってる気もしないでもないが、特に盗み食い常習3人組)
鬼の登場を今や未だかと待っている。
「だから、ハイ。」念を押す様な口調で再び言われ、ナミの圧力と怖い程の満面の笑みに断る事も出来ずゾロは渋々お面を付けた。
遠慮無しに豆を投げ付けられたゾロはもう心身共にボロボロ。
あいつ等には遠慮ってもんがねェ……
鬼は外とか言うがもう船に乗ってるじゃねェか、ナミの野郎
本人を眼の前にしては決して言う事は(もしかしたら思う事も出来ないかも知れないが)(ナミには他人の心を読み取る黒魔術的なもんが備わってる気がする)出来ないので、ゾロは心の中で目一杯毒付く。
「…お疲れ」
ぐったりとしたゾロをキッチンに迎え入れたサンジは心底そう言葉を告げた。
深い溜息を吐くゾロの背中を暫くじっと眺めていたサンジは吸いかけの煙草を灰皿で押し潰して、その哀愁漂わせる背中に無言のまま抱き付いた。
ゾロはそれ位の体力は未だ残っては居るが、サンジを引き離そうとしない。
ぐりぐりと擦り付けられるサンジの髪質の柔らかさや鼻先を背中に感じていた。
「桃太郎って…鬼退治した時、こんな気分だったのかな?」
「はあ?」
「鬼を征服した気分……」
サンジは更に力強くゾロのその身体を抱き締めた。
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節分で小話。
ふとした思い付きでつらつらと。ので文章の一貫性の流れとかそんな軸がな、い…… orz
(20090203)